怒りの感情は、身近な相手にほど強くなる。なかなか制御できない「怒り」の本質を、日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介さんに伺った前編。実践編となる中編では、怒りをコントロールする3つの基本怒るときのNGフレーズをレクチャーします。

* * *

実践、アンガーマネジメント

20171004_anger_management_2.jpg

アンガーマネジメントは、基本的に3つの柱から組み立てられます。衝動のコントロール、思考のコントロール、行動のコントロールです。

1.衝動のコントロール

衝動的な怒りの感情はずっと続くものではなく、ピークは6秒程度と言われています。カッとなって言わなくてもいいことを言ったり、手が出そうになったりするのを防ぐには、怒りを感じたその場で行う「その場セラピー」が有効です。「その場セラピー」で魔の6秒をやり過ごせば、あとで後悔することがグッと減るはず。

「その場セラピー」のやり方

・6秒だけ、思考停止。頭の中を真っ白にするイメージで。

・6秒だけ、口角アップ。フリでも笑顔を作ると寛容な気分に。

・6秒で魔法の言葉。気持ちを落ち着かせるフレーズを用意しておき、怒りを感じたときに6秒唱える。「大丈夫」「ネタにしよう」など。

2.思考のコントロール

人は「~すべき」という自分の信条が裏切られたときに怒りを感じます。「待ち合わせより早めに来るべき」「嘘はつかず正直であるべき」など。その境界線は、「許せない・許容範囲・許せる」という三重丸の構造で視覚化することができます。

無駄に怒らない人は「許容範囲」のゾーンが広い人。ここを広げることで、ささいなことでイラッとしなくなります。

また、お互いの三重丸を共有することも有効。会社なら仕事の進め方、家庭なら帰宅時間の伝え方など、三重丸を使って言語化していきます。「こうしてくれるとベスト」「最低限〇〇はしてほしい」というリクエストとして伝えると、気持ちがスムーズに伝わります。

3.行動のコントロール

アンガーマネジメントでは、怒ることは「リクエスト」だと捉えています。怒り上手は、リクエスト上手。そして上手に怒るには、ポイントが2つあります。

ひとつは、前述の三重丸のようにわかりやすく具体的にリクエストすること。例えば部下が締切を守れず揉めたなら、「なぜ締切を守れないのか」と怒るのではなく、「どうしたら締切を守れるか、一緒に考えてみよう」とリクエストしてみましょう。

もうひとつは気分で怒らず、怒り方にブレがないこと。気分で三重丸の境界線を変えると、「いまは機嫌が悪いから怒っているだけだ」とスルーされるようになります。

怒るときのNGフレーズ

20171004_anger_management_3.jpg

逆に、怒っているときに言ってはいけないフレーズがこちら。相手が無用な怒りを感じ、リクエストを受け付けなくなってしまいます。

NGフレーズその1:「前から言おうと思ってたんだけど」

自分がどれだけ怒っているかを強調したいだけのフレーズ。過去にさかのぼってしまうと三重丸の境界線を明らかにしにくくなる。怒るときは「今その場で起きていることだけを言う」のが大前提。

NGフレーズその2:「なぜ」「どうして」

原因を解明しようとしているようで、じつは相手の過去を責めているだけのフレーズ。「どうしたらできる?」に変換してみましょう。

NGフレーズその3:「いつも」「絶対」「必ず」

100%を表す強い言葉であるがゆえに、言われた相手は「いつもじゃない」と反発します。これらは、正確に伝えることが面倒くさいから使ってしまうフレーズ。言いたくなったときは、「5回のうち4回は〇〇だった」など、もっと正確に言わないと伝わりません。

NGフレーズその4:「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」

程度を表す言葉ですが、そのあんばいは本人にしかわからないもの。「リクエストは具体的に」の前提にのっとって、もっとわかりやすく伝えましょう。

誤解しないでほしいのは、「怒り」自体は、けっして悪者ではないということです。物語の主人公やイノベーションを起こした起業家、研究者のように、人を魅了する大きなパワーになることもあります。それだけに、怒りをコントロールできずに人生がうまくいかなくなるのはもったいない。怒ったときにどう行動するか、どう表現するか。怒りと上手につきあえれば、考え方も生き方ももっとポジティブになるはずです。

* * *

安藤俊介さんに聞く「アンガーマネジメント」、後編では対上司・対部下など、ケース別のお怒りパターン対処法をレクチャー。3つの基本を身につけたことで変わった受講者のエピソードもご紹介します。

201710_anger_profile.jpg安藤俊介(あんどう・しゅんすけ)さん

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。日本における「アンガーマネジメント」の第一人者。日本人としてはじめてのナショナルアンガーマネジメント協会、アンダーソン&アンダーソン、MFTNY公認のアンガーマネジメントファシリテーター。ナショナルアンガーマネジメント協会では、1500名以上在籍するアンガーマネジメントファシリテーターの中で15名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルに、アメリカ人以外では唯一として登録されている。『はじめての「アンガーマネジメント」実践ブック』など著書多数。

イラスト/古荘風穂 取材・文/田邉愛理 photo by Getty Images