1. Home
  2. ライフスタイル
  3. うつ、癌、HIV......自分の病気を周りの人にうまく伝える方法 [The New York Times]

うつ、癌、HIV......自分の病気を周りの人にうまく伝える方法 [The New York Times]

The New York Times

うつ、癌、HIV......自分の病気を周りの人にうまく伝える方法 [The New York Times]

去年、人生の節目となる年齢を迎えた母は、誕生日の数週間前になって大手術が必要と知った。命に関わる状況ではなく、短期の入院ですむという。それでも、回復までには時間がかかり、パーキンソン病を患う父の介護は今まで通りにはいかなくなるとのことだった。

遠方に暮らす僕たち兄弟3人がすぐ対応に乗り出したので、心配はなかった。まず、手術に付き添えるよう帰省し、人手も確保することにした。さらに、母の友人数名に電話し、見舞いや差し入れ、緊急時の待機を依頼することにした。抜かりない計画ができたことに僕たちは満足した。ただ、一つだけ問題があった。

母が病気のことを誰にも言うなというのだ。

「友達に迷惑をかけたくないの。同情してもらいたくないし、病気の経験談をうんざりするほど聞かされるのも絶対にいや」

病気を公にするかどうかの決断は、デリケートでとても個人的な問題として常に存在してきた。手足の骨折や、化学療法を伴う癌などは、隠すことは事実上不可能だ。一方、HIVや精神疾患なら、少なくとも一時期は、伏せておきやすい。個人的な経験から言うと、年配の人ほど秘密にして、若者ほどオープンにする傾向にある。

では、病気を公表するメリットとデメリットはどのように評価すべきだろうか?

九死に一生を得るチャンスが掴めるかもしれない

神経科学者であり筋萎縮側索硬化症(ALS)の専門家であるポール・ウィックス博士は、ペイシェンツ・ライク・ミー(Patients Like Me)というオンライン支援サービスの幹部を務めている。博士の研究によると、患者が病気を公表するかどうかは、相手との関係性にも左右される。最も隠し立てしないのは家族や今も付き合いがある友人で、最も隠しがちなのは近所の人や幼なじみだという。同僚はその中間だ。公表する病気のトップに上がるのは多発性硬化症、ALS、てんかんで、逆に公表しない病気のトップは線維筋痛症、気分障害、HIVだ。

「HIVなどは、社会的な反応や感染リスクといった明らかな問題がある。臓器移植はその反対だ。適合するドナーを見つけるのは不可能に近い。だからこそ、腎臓移植が必要になれば、皆に知らせなければならない」と勘案しながらも、ウィックス博士は病気の公表を強く支持する。命拾いにつながる情報がどこから手に入るかはわからないというのが理由だ。

「医師として患者に助言したこともある。ただ一人の医師が全ての患者を診ることはできない」。似た症状を持つ仲間の知恵を借りることで、患者は知識を格段に増やすことができる。「(そうすることで)よりたくさん情報を収集できるようになり、そこまで運に頼らなくてもよくなる」とウィックス博士は言う。

SNSは発言せずに読むだけでもいい

社会学者のステファニア・ヴィキャリ博士は英国のレスター大学で医療分野におけるソーシャルメディアの影響を研究している。博士によれば、病気を公表することで得られる一番のメリットは、仲間とつながることによる安心感だという。

「患者がソーシャルメディアでまず得られるものは心の支え。でも専門サイトにアクセスし始め、治療や治験などについて精通してくると、すぐに医療情報が重要になる」

フェイスブックでグループに参加すると、友達に知られてしまうが、ほとんどの人は特定の病気のグループに実名で参加することに抵抗を感じていない。そういったグループのやりとりは貴重な情報源になるので、名前を出したくないのであれば、別名を名乗ってでも参加するべきだ。ウィックス博士はこれをリードオンリーメンバー的活用といい、「閲覧するだけでも十分に得られるものはある」と勧める。

ツイートは控えめに

より広く情報共有することを選ぶ人は、慎重にすべき理由があることを忘れてはいけない。元小児癌患者のハイディ・アダムズさんは、今では若い癌患者の支援をライフワークとしており、患者擁護団体のRx4goodで患者の声を代弁する活動をしている。アダムズさんによると、年配者が口をつぐみがちなのに対し、若者は黙っている方が難しいという。

「どちらかというと、若者は過剰に情報共有する傾向にある。ずっと私生活をオープンにしてきたのに、突然、人には言いたくない事が出てくる。でも、それに触れずに、食べたばかりのアイスの感想といった投稿をするのも馬鹿らしい。プレッシャーをすごく感じてしまう」

アダムズさんは、控えめな情報共有から始めることを勧める。最も個人的な情報を公にする場合には、閲覧者が最も限定的なメディアを利用する。プライバシー設定がいつでも変更可能であるブログや(症状や治療の進行に応じた情報交換を行うウェブ・プラットフォームの)CaringBridgeを利用するなどだ。

「フェイスブックやツイッターで情報を流すと、ずっと残ってしまう。今は情報を共有したいと思うかもしれない。でも、しばらく経った時点で、傷も露わな自分の写真を公開し続けたいと思う?」

アダムズさんの場合、治療中は情報を公開したいと思っていたが、時間の経過とともに考えが変わったという。

代理人を立てて情報を統制する

記者も9年前に癌と診断された。当初は病気を公表する上で重大なミスを犯していた。皆に生検の日を教えてしまったのだ。そのため、検査日には対応しきれないほど電話がかかってきた。

その日以来、情報発信を役目とする最高情報責任者を任命することにした。僕の場合、弟だ。そのような代理人の存在は便利ではあるものの、このご時世、それだけでは不十分だとアダムズさんはいう。代理人が公表・共有・投稿してもよい内容の範囲を患者が明確に設定しなくてはならない。

「『まだそこまで公にしたくないから、あの写真は削除して』と遠慮なく代理人に言っていい」。さらに、絶対譲れないポイントとして、「手術室で撮った写真は投稿させてはダメ」とアダムズさんはいう。

もはや憐れな犠牲者ではない

取材するなかで最も意外だったのは、病気公表には思いがけない副作用があるという発見だった。病気という、往往にして強烈な無力感に襲われるような状況にあっても、公表することで患者は「自分にもコントロールできるものがある」と思えるようになる。

「自分の病状を公にすると、外部から情報が入るようになるだけでなく、情報を他者と共有することにもなる。ときに、それが誰かの役に立つこともある。人助けできれば、大きな満足感が得られる」とウィックス博士は言う。

© 2017 The New York Times News Service[原文:Whom Do You Tell When You're Sick? Maybe Everyone You Know/執筆:Bruce Feiler](翻訳:Ikuyo. W)

  • facebook
  • twitter
  • hatena

    Ranking

    1. もう痛み止めはいらないかも?耳栓と頭痛の意外な関係性

    2. 【緊急座談会】他人事じゃない! 働く女性のリアルな「更年期」事情

    3. 人生早めに身につけておくと得をする12のライフスキル

    4. あなたの「怒りタイプ」がわかる。アンガーマネジメント診断

    5. 女医さんに聞く、 誰にも聞けないデリケートゾーンのトラブル解決法

    6. 外見は一番外側の中身。仕事中、おしゃれ賢者・佐藤悦子さんは何着てる?

    7. わたしは何を勉強すればいい?「大人の学び」の見つけ方

    8. 憂鬱なときがあってもいい。シャーリーズ・セロンの前を向く力

    9. 「働きたい」をあきらめない。女性活躍を応援する「Empowered Woman JAPAN 2018」

    10. 部下がいる人、いない人。決定的な違いは毎日のアレ

    1. 人生早めに身につけておくと得をする12のライフスキル

    2. 【緊急座談会】他人事じゃない! 働く女性のリアルな「更年期」事情

    3. スニーカー通勤? アリです! ニューヨーカーたちはどうしてる?

    4. もう痛み止めはいらないかも?耳栓と頭痛の意外な関係性

    5. 大人の歯磨き、基本のき。歯垢をしっかり取り除く方法

    6. 部下がいる人、いない人。決定的な違いは毎日のアレ

    7. わたしは何を勉強すればいい?「大人の学び」の見つけ方

    8. あなたの「怒りタイプ」がわかる。アンガーマネジメント診断

    9. 「働きたい」をあきらめない。女性活躍を応援する「Empowered Woman JAPAN 2018」

    10. 女医さんに聞く、 誰にも聞けないデリケートゾーンのトラブル解決法

    1. 寝る前に食べないほうがいいフード&ドリンクワースト7

    2. スマホはケースなしで使いたい。落としても割れにくくする秘策

    3. 糖尿病を引き起こす、実はキケンな6つの習慣

    4. 【緊急座談会】他人事じゃない! 働く女性のリアルな「更年期」事情

    5. 「豆皿」はこう使う。これだけは押さえたい3つの基本

    6. これ、実はヘルシーです。美味しくがっつり食べられるバーガーが上陸!

    7. 人生早めに身につけておくと得をする12のライフスキル

    8. ビジネスシーンの3大密室で問われる女のスキル

    9. あなたの「怒りタイプ」がわかる。アンガーマネジメント診断

    10. ゴールデンウィークにやっておきたい、普段できない3つのこと/まとめ

    うつ、癌、HIV......自分の病気を周りの人にうまく伝える方法 [The New York Times]

    FBからも最新情報をお届けします。