スペイン旅行で大人気の街、バルセロナ。去年は泊まりがけで訪れた観光客が800万人を超えた。このバルセロナを州都とするスペインのカタルーニャ自治州で10月1日、独立の是非を問う住民投票が行われた。

中央政府は投票は憲法違反だと宣言。しかし政府や裁判所の猛烈な反対を押し切り、独立賛成派が中心となって投票は実施された。カタルーニャの独立投票とは何なのか、Q&Aでまとめた。

Q:カタルーニャとは?

スペインにある17の自治州の一つ、カタルーニャ自治州は同国北東部に位置する。人口750万人。産業革命時代からスペインの経済の先頭に立ってきた。経済規模はポルトガル1国と同程度で、スペインのGDP(国内総生産)の約5分の1を占める。州都バルセロナは、1992年のバルセロナ五輪以来、スペイン観光の一大拠点。

Q. カタルーニャ独立派と中央政府の対立にはどんな歴史が?

スペインの他の地方もそうだが、カタルーニャは独自の歴史、文化、言語を持つ。「カタルーニャの日」とされている9月11日は、1714年にスペイン・ブルボン朝フェリペ5世の軍隊にバルセロナが占領された日。カタルーニャはそれまで持っていた自治権を失った。19世紀になると産業の中心地として栄えていたカタルーニャでは、ヨーロッパにロマン主義運動が広がる中で民族意識が強まった。

1930年代のスペイン内戦の一因には、カタルーニャがマドリードの中央政府から独立した政治的自治を求めたことがある。内戦の結果、フランコ将軍による独裁政権が誕生。カタルーニャでは、カタルーニャ語が禁止されるなど多くの自由が弾圧された

1975年にフランコが死去すると、民主制がスペインに復活。新憲法では自治州制が採用され、地方分権化が進んだが、正式な連邦国家にはなっていない。カタルーニャの自治権も大きく拡大されたが、現在の州政府は十分ではないと主張している。

近年は国会でカタルーニャ州に特別な自治権を認める動きもあったが、2010年に憲法裁判所が州憲章の一部に違憲判決を下して以来、緊張が前面化した。

Q. 独立投票は初めてではない?

2014年11月にも民意調査として住民投票が行われた。有権者540万人中220万人が投票し、その80%が独立に賛成した。このときも憲法裁は違憲と判断したが、中央政府や警察による阻止はなかった。ただし翌年、カタルーニャの政治家たちは裁判所に呼び出され、当時のアルトゥール・マス州首相は2年間の公職追放処分を受けた。

20171005_nyt_catalunya_2.jpg
10月3日国民投票後、独立派による大規模なデモが行われ、市内各所の交通が封鎖された (Photo by David Ramos/Getty Images)

Q. 今回の投票は?

独立をめぐる今回のカタルーニャ住民投票は、2015年に誕生した独立派の州政権による公約。だが、ラホイ首相率いる中央政府は憲法違反だと宣言し、あらゆる手段を使って投票を阻止すると警告した。

そうした中、9月にはカタルーニャ州議会が住民投票の実施法案を可決。憲法裁はすぐに差し止めを命じたが、州政府は投票を決行した。その間、中央政府はカタルーニャ州閣僚を拘束するなど徹底阻止に乗り出し、投票当日は大量の警官隊を動員した。

Q. カタルーニャ人の多くは独立に賛成?

2012年の世論調査では、回答者の51.1%が独立に賛成だった。その後、2015年の州選挙では独立派が勝ったが、最近の調査では独立賛成が減少傾向だった。ただしカタルーニャ住民の大半は、賛否に関係なく、住民投票の実施自体は支持している。

Q. 投票後に何が起きる?

スペインが深刻な経済危機だった5年前には、州政府と中央政府の対立の焦点は自治権拡大の要求よりも、経済的に潤っているカタルーニャが貧しい地方の税を肩代わりしているという不満だった。だが、独立派が率いる現在のカタルーニャ州政府は、経済問題だけの交渉には戻らないと明言している。

中央政府の状況も以前より複雑だ。2014年の独立投票の際には、ラホイ首相の国民党は国会で安定多数だった。しかし昨年末からラホイ政権は少数与党となっており、地方での危機が深まれば退陣を迫られる可能性がある。

だが、ラホイ政権にとって最大の圧力をかけるのは、バルセロナの街角かもしれない。2012年以降、カタルーニャ独立派がバルセロナで行ってきた平和的なデモは欧州で一、二を争う規模。投票当日、大量の警官隊を送り込まれた現地の緊張は、沸騰点に達している。中央政府が命じた弾圧に対し、カタルーニャの人々はどう反応するだろうか。

Q. カタルーニャだけで経済的にやっていける?

欧州有数の都市バルセロナが州都のカタルーニャは、独立すればヨーロッパで中程度の経済規模の国となるだろう。独立によってカタルーニャ経済が打撃を受けるのか、スペインの他の地域が弱体化するのか、経済専門家らの意見は分かれている。だが、どちらにも短期的な損失は出るというのが共通の見方だ。

カタルーニャが一方的に独立すれば、中央政府が経済制裁を科す可能性もある。以前、緊張が高まった際にはスペイン国内の消費者が、スパークリングワインの「カバ」などカタルーニャ地方の産品をボイコットしたこともある。

また独立したカタルーニャが欧州連合(EU)への加盟を認められるか、そして通貨として引き続きユーロを使用できるかという、さらに大きな問題もある。

© 2017 The New York Times News Service
[原文:Catalonia's Independence Referendum: What's at Stake?/執筆:Raphael Minder]
(翻訳:Tomoko.A)