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女性に多いのは不安からの怒り。タイプ別の傾向と対策

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女性に多いのは不安からの怒り。タイプ別の傾向と対策

脳と心理学の視点から、「怒り」のメカニズムをひも解く脳科学者・中野信子さんの「怒り」論。キレやすさと脳の関係や、キレない脳を育てる方法をうかがった前編につづき、後編では対人関係の基盤となる「愛着スタイル」を分析。女性に多いと言われる「不安型」や男性に多い「回避型」から、あげまんの正体まで飛び出しました。

* * *

愛着スタイルを分析。女性に多いのは「不安型」

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子ども時代に養育者と安定的な関係を築き、「愛着(情緒的な結びつき)」の形成がうまくいくと、「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンが豊富に分泌されます。それが脳の前頭前皮質を発達させ、キレにくい脳を育ててくれることを前編でお話ししてきました。

大人になり、他人とより深いつながりを持つようになると、この愛着形成の影響が別のかたちで表れてきます。対人関係において、不安型、回避型、両価型、安定型と呼ばれるスタイルを示すようになるのです。

不安型は比較的女性に多く、恋愛体質だったり相手に依存しすぎたりするタイプ。子どものころの愛着形成が不十分だったことが原因となります。たとえば、いい子にしていれば褒められる、成績がよければ可愛がってもらえる......という条件つきの愛情です。ある枠組みがあり、そこから外れると愛してもらえない。そんな制限のなかで愛着スタイルが不完全に形成されてしまうと、大人になってからその埋め合わせをするかのように、愛着の対象にしがみついてしまう場合があるのです。

そんな不安型の「怒り」は、パートナーに向けられることがもっとも多い。自分が求めていることをやってもらえなかったときに激しく怒る。あるいは、自分が期待している反応がかえってこないことに対して不安が生じて、それが怒りという表現になる。そういった行動パターンになることがよく知られています。

男性に多いのは、頼られると怒る「回避型」

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いっぽう、比較的男性に多いとされるのが回避型。ひと言でいうと愛着形成が薄いタイプです。たとえば誰かに頼られたとき、ふつうの人は自分を信頼してくれたことに喜びを感じ、良好な人間関係を築くベースにします。でも回避型の人は、頼られると怒りを感じる。「俺に面倒を持ちこむな」というわけです。

回避型の人は、自分の領域に入ってこられると怒りを感じます。いつか裏切られるかもしれないから、誰とも愛着を築きたくないのですね。それくらいならいっそ絆を作らないでおこうというのが、回避型の心的構造です。

回避型になりやすいのは、子ども時代に養育者との関係が断絶しがちだった人。お母さんとおばあちゃんの間を行ったり来たりするような生活をしていると、回避型の傾向が強くなるようです。「早く大人になりすぎる」という感じでしょうか。

また、不安型と回避型を併せ持つタイプを両価型といいます。養育者の態度が変わりやすかったり、過干渉であったりする場合によく見られるようです。両価型の子どもは、ひとりにしておくと寂しがって泣くけれど、誰かが近づくと嫌がってもっと泣く。またいつ愛情が得られなくなるか、わからないからです。

リカバリー力が高い「安定型」

ここまで、不安型、回避型、両価型と、愛着形成に問題があるタイプを見てきました。では、養育者と安定した関係を築いた人がどうなるかというと、その名のとおりの「安定型」になります。

安定型は多少のことでは動じない、安定した情緒を保てるタイプ。たとえ「怒り」を感じても、ゆうゆうとした自分を保持できる能力を持っています。たとえば相手が不機嫌だと、不安型は「自分のせいかもしれない」と感じますが、安定型は「なにか理由があるのだろう」と客観視できる。ぶつかることがあっても、それで相手が離れていくわけではないという自信があるんですね。これは、相手を信頼しつづける能力と言ってもいいでしょう。

安定型は人と人との絆を築きやすく、収入や社会的地位も高いという報告があります。さらに、オキシトシンが十分に分泌されるため、心身のリカバリー力、つまり立ち直りが早いのも特徴。オキシトシンには修復機能があり、ストレスはもちろん、実際の傷すら回復を早めてくれるのです。

あげまんの正体は安定型?

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対人関係において不安型・回避型のスタイルを持つ人は意外に多く、両親とも健在で経済的に問題がなくても、約3分の1はどちらかの傾向を示すといわれます。

このあいだ知人と、「あげまん・さげまん」とは何なのか? という話になって。あげまんは自分が安定型であり、その思考モデルを男性に与えられる女性さげまんは自分が不安・回避型であり、その思考モデルを男性に植え付けてしまう女性ではないか、という結論になりました。

美しさや容姿は衰えるけれど、富や成功、幸せをもたらす内的モデルは一生もの。人として持っておきたいのは、そういった目に見えない財産なのかもしれません。

安定型の人と「認知の交流」を

もしかしたら、自分には不安型、あるいは回避型の傾向があるかもしれない。そう感じたら、ぜひ身の回りで安定型の人を見つけて、その思考パターンを真似してみてください。一番いいのは安定型のパートナーを得ることですが、友人や上司、後輩でもかまいません。安定型の人の考え方や振る舞い、つらいことがあったときにどう対処するか。それをコピーするようなかたちで、認知の交流を持つといいと思います。

そのうえで、適切に怒る、その意思表示のしかたを学ぶこと。けっして「怒りに任せて」はいけません。暴言を吐いたり、声を荒げたり......激しい怒りは心身に負担をかけます。血圧と血糖値が上がりやすくなるので、心疾患や脳血管障害につながる危険性もあります。

本当は、キレなくても十分伝わる

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キレやすい人は、伝わったという体験が少ないことが多いんです。泣き叫んだり、激しい行動に訴えたりすることで、ようやく望みを果たすことができた。そのコミュニケーション不全感が、大人になっても残っているんですね。

ですから、もし自分にそういう傾向を感じたら、安定型の人の不満や不安の伝え方を学んで、「この程度で十分伝わるんだ」という体験を重ねていきましょう。いつかきっと、上手に伝えられるようになっていくはず。

幸いなことに私たちは、かなり可塑性の高い、学習能力の高い脳を持っています。ていねいに学習しなおせば、子どものころの不全感を癒し、「怒り」に負けない脳を育てていくことができますよ。

前編 「脳が怒りを生み出すメカニズム」脳科学者・中野信子さん

nobukonakano_profile.jpg中野信子(なかの・のぶこ)さん

1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学工学部応用化学科卒業。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所にて、ニューロスピン博士研究員として勤務後、帰国。現在、東日本国際大学教授。著書に『ヒトは「いじめ」をやめられない』(小学館新書)、『サイコパス』(文藝春秋)など多数。テレビコメンテーターとしても活躍中。

撮影/柳原久子 取材・文/田邉愛理 photo by Shutterstock

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