大きな社会問題のひとつでもある「いじめ」。いじめに関する深刻なニュースに、心を痛めることも少なくありません。また、職場内の派閥争いやパワハラなど、「大人のいじめ」も蔓延しているのが現実です。

さまざまな取り組みが行われているにもかかわらず、なぜいじめはなくならないのでしょうか。脳科学者の中野信子さんは、著書『ヒトは「いじめ」をやめられない』のなかで、こう述べています。

社会的排除は、人間という生物種が、生存率を高めるために、進化の過程で身につけた「機能」なのではないかということです。

13ページより引用

中野さんによると、人類が生き残った大きな理由のひとつが、脳の前頭前皮質という部分が大きく発達していること。前頭前皮質は「社会脳」と呼ばれ、他人に共感したり、集団で協力して行動するなどの、「人間らしい社会的活動」を促す働きをしています。

集団を守るために、集団にとって危険になりそうな人を排除することも、もともと脳に組み込まれた機能。つまり、いじめは人間の本能である可能性が非常に高いため、どんなに対策をとってもなくならないというのです。

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いじめという本能をコントロールする

それではどのようにいじめに対処すればよいのでしょうか。

その最善策は、「本能をコントロール」し、いじめを「回避する」こと。

"いじめ"という行為は、種を保存するための本能に組み込まれている。そう捉えれば、この本能をどうコントロールするのかという方向に、解決へのベクトルが向かっていきます。

184ページより引用

本能をコントロールするためには様々な方法がありますが、いじめの男女差を知ることもそのひとつです。

女性同士のいじめの場合は、まず「同性である」ことから、「妬み」と「嫉妬」の両方を買いやすい状況があると考えられます。

124ページより引用

女性は愛情ホルモンとも呼ばれる「オキシトシン」の分泌量が多く、その特徴である「仲間を作る」ことが過剰になると、妬みなどの負の感情を引き起こしてしまうのだとか。

できるだけ負の感情を抱かせないようにするには、「一人だけ得をしているように見える」のを避けること。たとえば、服装や言動で「若さ」や「女性らしさ」を前面に出さないように気をつけるのも、そのひとつの方法だそうです。

男性の場合、支配欲や攻撃性を強める「テストステロン」というホルモンが多く分泌されるため、上下関係をつけたがる傾向にあります。

派閥を作るだけではなく、組織の中で自分がいかに有能であるか、自分の所属するグループがいかに優れているかということに重きを置くため、派閥争いやパワハラに発展してしまうことも多いのです。

人間関係を改善するには、「メタ認知」が役立つ

性別の違いに加え、自分の理解を深めることも、職場などでの人間関係を改善するために有効です。

メタ認知とは、自分自身を客観視する能力のこと。簡単に言うと、自分を「斜め上から目線」で観察し、自分の行動を考えたり、制御したりすることです。

130ページより引用

自分はどういう類いの人間なのか、周りからどう思われているのか、などを考えながら行動することで、必要以上に攻撃されるのを防ぐことができるのです。

そして、「コミュニケーション能力」を磨くことも大切。それは、ますます多様化するこれからの社会を生き抜くために必要な力でもあります。

言葉を使って上手に相手を納得させる、自分の正当性を主張する、そして、相手に言葉で攻撃されたときに、うまく流したり、喧嘩にならないように爽やかに言い返す力を身につけられれば、いじめにも上手に対応できるようになるでしょう。

139〜140ページ引用

脳科学的視点からいじめを紐解くことで明らかになった、いじめを回避するための様々な方法は、より幸せな毎日を過ごすための知恵なのかもしれません。

ヒトは「いじめ」をやめられない

著者:中野 信子
発行:小学館
定価:780円(税別)

photo by Shutterstock

文/小口梨乃