1. Home
  2. ライフスタイル
  3. アメリカで銃乱射事件が多いのはなぜ? [The New York Times]

アメリカで銃乱射事件が多いのはなぜ? [The New York Times]

The New York Times

アメリカで銃乱射事件が多いのはなぜ? [The New York Times]

世界からすると、アメリカは特殊な国に見える。喧々囂々としながら民主主義を貫き、世界外交では旗振り役を務め、人気音楽や映画を世界に輸出する国。

しかし、親米派、反米派のどちらもが首をひねる問題がある。なぜ銃乱射事件がこれほど多く発生するのか、という問題だ。

異常に暴力的な社会だから、と考える人もいるだろう。もしかしたら、人種の対立のせいで社会の絆がほころんでしまっているのかもしれない。または、お粗末な保健制度のせいで、精神疾患を患っても、ちゃんとしたケアが受けられないのかもしれない。

どれももっともらしい。ただし、アメリカ以外で起きた銃乱射事件の調査データによって、全て反証されてしまっている。データは増える一方だが、どれも一貫して同じ結論を示している。

銃乱射事件が多発する理由として唯一説得力のある要因は、アメリカに存在する、とてつもない銃の数だ。

1. 世界の4割の銃を持っているから

統計で示される相関関係は、詳しく調べれば調べるほど、はっきりしてくる。

世界人口に占めるアメリカ人の割合はわずか4.4%に過ぎない。それにもかかわらず、アメリカ人は世界の銃の42%を所有している。アラバマ大学のアダム・ランクフォード教授の2015年の研究によると、1966年から2012年までに世界で起きた銃乱射事件のうち、銃撃犯の31%はアメリカ人だった。

人口規模が1000万人以上の国を抽出して、銃乱射事件の発生件数を国際比較した場合、アメリカを上回るのはイエメンだけだ。(異常値を避けるため、人口規模で調整した上で比較することをランクフォード教授は勧める。) イエメンはアメリカに次いで銃所有率が高く、世界第2位だ。

世界的な現象として、銃の所有率と銃乱射事件の発生率には相関関係があることをランクフォード教授は発見した。アメリカを除いた場合でも、この関係は成立した。つまり、アメリカ固有の別の要因によって、銃乱射事件が多く引き起こされているわけではことを示している。さらに、殺人発生率で調整して比較した場合も、この相関関係は成り立った。社会の暴力性よりも銃の入手しやすさの方が事件発生の要因として説得力があることを示唆している。

2. 犯罪や人種問題、精神障害は原因ではない

もし銃乱射事件の発生に精神障害が関わっていたとしたら、アメリカでは精神疾患件数が他国よりも多いというデータが得られるはずだ。しかし、精神疾患関連の医療費、国民1人当たりの精神医療従事者の数、重度の精神障害の罹患率のどれをとっても、アメリカは他の先進国並みだ。

ある2015年の研究では、銃による死亡のうち、精神障害が原因と考えられるのは全体のわずか4%という推定値が出ている。さらに、ランクフォード教授のメールによれば、自殺率が高い国では銃乱射事件の発生率が低い傾向にあるという。もし銃乱射事件と精神障害の問題に相関関係があれば、逆を予想するだろう。

3. 致命的な犯罪が多いから

アメリカの銃による殺人発生率は、2009年時点で人口100万人あたり33と、先進諸国の平均をはるかに上回った。カナダとイギリスは、それぞれ人口100万人あたり5と0.7だった。殺人発生率の差は各国の銃所有率の差とも合致している。

殺人発生率の高さはアメリカ社会における犯罪問題の深刻さを反映している−−そんな世論が時折、浮上する。この見方は、1990年代初頭の都市部における犯罪組織暴力を描いた一連の映画によって固定されてしまった面がある。しかし、カリフォルニア大学バークレー校のフランクリン・E・ジムリングとゴードン・ホーキンズによる1999年の画期的な研究によれば、実のところ、アメリカの犯罪発生率は他の先進国より高いわけではない

ただし、アメリカの犯罪は他国よりも致命的だということが同研究でわかっている。(研究データは、繰り返し裏付けられている。)例えば、ニューヨークとロンドンでは、強盗に襲われる可能性は同じ程度だが、襲われた場合に命を落とす可能性はニューヨークの方が54倍も高い。

アメリカの暴力には多くの特異点が見られるが、それらと同様、この死亡率の高さには銃の使用が関係していると研究者は結論づけた。

4. 大量殺人につながりやすいから

銃規制の懐疑派は、2016年の研究を論拠に挙げることがある。同研究によれば、2000年から2014年までに発生した銃乱射事件による死亡率は、アメリカでは人口100万人あたり1.5だった。一方、スイスでは1.7、フィンランドでは3.4だった。このデータを見れば、アメリカで銃乱射事件はそう頻繁に起きていないように思える。

しかし、同研究によると、銃乱射事件はアメリカでは133件あった一方、フィンランドでは2件(合計で18人が死亡)、スイスでは1件(14人が死亡)のみだった。つまり、フィンランドもスイスも、単発的な出来事だった。世界のどこでも銃乱射事件は起こり得るが、アメリカの場合、日常的な出来事になってしまっている

どんな犯罪もそうだが、潜在リスクを完全に取り除くことは不可能だ。誰でも自制心を失ったり、暴力的思想に心酔したりする可能性はある。ただ、アメリカの場合、それが大量殺人につながりやすいという点が他国とは異なる。

5. 銃規制がゆるいから

2013年にアメリカで銃によって死亡した人のうち、自殺は2万1175件、他殺は1万1208件、暴発事故による死亡は505件だった。人口規模がアメリカの3分の1である日本では、同年の銃による死亡は13件に過ぎなかった。

アメリカ人が銃による殺人または事故で死亡する可能性は、日本人より300倍も高い。一方、アメリカの銃の所有率は日本の150倍だ。この数字の乖離を見れば、銃の所有率だけがアメリカを特別な存在にしているわけではないことがわかる。

アメリカは、銃の購入者や所有できる銃の種類を制限する規制が最もゆるい国の一つでもある。

先進国の中で二番目に銃の所有率が高いのはスイスだが、その数はアメリカの約半分だ。2004年には、銃による殺人発生率は人口100万人あたり7.7だった。銃所有率と殺人発生率の関係を反映して、非常に高い水準にあるが、それでもアメリカの数分の一でしかない。

スイスの銃規制法はアメリカよりも厳しい。販売のための免許の取得や維持、所有可能な銃の種類をめぐっては、より厳格な条件が設けられている。スイスの法律は、厳しい制限を設けているだけでなく、アメリカとは異なる銃に対する考え方を反映している。すなわち、銃を所有する権利を取得するためには積極的な努力が必要、という考え方だ。

6. 銃所有に関する文化が違うから

逆に、「銃の所有は国民の固有の権利」という考え方を基本としている国は、世界でもアメリカ、メキシコ、グアテマラの3か国しかない。

アメリカの銃規制がここまでゆるい大きな理由は、銃所有を容認することによる代償の捉え方が他国とは違うからかもしれない。

1987年にイギリスで銃乱射事件が起きた後、同国はより厳格な銃規制法を制定した。オーストラリアも1996年の事件後に同様の措置を取った。しかし、アメリカは何度も同様の議論に直面しておきながら、「比較的自由な銃所有のあり方は、社会的な犠牲を払っても価値がある」という結論を出してきた。

どんな統計や規制内容よりも、その選択こそが、アメリカを特殊な存在にしている。

「今にして思えば、銃規制をめぐる議論の終わりを告げたのは(2012年にコネチカット州の小学校で20人の児童が犠牲になった)サンディフック銃乱射事件だった。子供の犠牲者を出すのは許容範囲と国が決めた途端、議論は終わってしまった」と、イギリス人ジャーナリストのダン・ホッジスさんは2年前のツイッターの投稿でコメントした。

© 2017 The New York Times News Service [原文:What Explains U.S. Mass Shootings? International Comparisons Suggest an Answer/執筆:Max Fisher and Josh Keller] (翻訳:Ikuyo.W)

  • facebook
  • twitter
  • hatena

    Ranking

    1. 好かれるとはちょっと違う! 職場で尊敬される人になるには

    2. 部屋を片付けられないのは、意思決定力が弱いから

    3. 「味わう」を意識すると人生は豊かになる。ソムリエ・佐藤陽一さんの哲学

    4. リーダー不在の時代に求められる「真のリーダー力」

    5. 若きジョブズが採用で重視した、たった一つのスキルとは?

    6. あなたの「怒りタイプ」がわかる。アンガーマネジメント診断

    7. ポイントは割り下の黄金比率。究極の「すき焼き」レシピ

    8. チョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ 2018」いよいよ開幕!

    9. 40代こそ、家をIoT化するべき理由

    10. 女医さんに聞く、 誰にも聞けないデリケートゾーンのトラブル解決法

    1. 若きジョブズが採用で重視した、たった一つのスキルとは?

    2. 職場のめんどくさい同僚と距離をおく方法

    3. 「味わう」を意識すると人生は豊かになる。ソムリエ・佐藤陽一さんの哲学

    4. インフルエンザで倒れたくない今、摂るべき栄養素は

    5. 部屋を片付けられないのは、意思決定力が弱いから

    6. 好かれるとはちょっと違う! 職場で尊敬される人になるには

    7. あなたの「怒りタイプ」がわかる。アンガーマネジメント診断

    8. リーダー不在の時代に求められる「真のリーダー力」

    9. 40代こそ、家をIoT化するべき理由

    10. 女医さんに聞く、 誰にも聞けないデリケートゾーンのトラブル解決法

    1. 若きジョブズが採用で重視した、たった一つのスキルとは?

    2. 「味わう」を意識すると人生は豊かになる。ソムリエ・佐藤陽一さんの哲学

    3. 人気ホテル評論家が指南する、失敗しないホテル選びのポイント

    4. ファンデ変えた? と言われる印象アップ。似合う髪色がわかるカウンセリング

    5. インフルエンザで倒れたくない今、摂るべき栄養素は

    6. あなたの「怒りタイプ」がわかる。アンガーマネジメント診断

    7. 車を買うときに必ずチェックすべきこと

    8. 職場のめんどくさい同僚と距離をおく方法

    9. 女医さんに聞く、 誰にも聞けないデリケートゾーンのトラブル解決法

    10. 視界がぼやける、いつも眠い......に共通する原因

    アメリカで銃乱射事件が多いのはなぜ? [The New York Times]

    FBからも最新情報をお届けします。