イギリスの実業家でヴァージン・グループ創始者・会長のリチャード・ブランソンが、ビジネスパーソンや起業家の質問に応えます。

Q:あなたの本の一読者です。自分が母・妻であること、44歳という年齢を考えた時に、起業するにはどんなステップを踏んだらよいでしょうか。アイデアは豊富にあるのですが、自分のスキルを活かし、情熱を持って起業したいのです。(キャティア・G. アルホーナ/パナマ)

母親であることを起業に活かす

A:成功する起業家に欠かせないのは、意志と情熱、そして学習能力です。いずれも年齢、学歴、肩書を問わないもので、つまり誰でも起業家になれるわけです。

あなたはお母さんなのですね、おめでとう、素晴らしいことです! 母親であるということは、ビジネスに活かすことのできるアドバンテージなのです。

自分が購入する製品の陰にどんな物語があるのか。そういうことに人々がこれほど興味があった時代は、かつてなかったと思います。人々は、顔の見えない巨大企業よりも、自分が信頼する企業のバックグラウンドを知りたいのです。ですから事業をマーケティングする時がきたら、ありのままの自分を知ってもらってください。つまり、あなたが自分がいいと思う製品やサービスがあるから事業を始め、頑張っているお母さんだということを知ってもらうのです。

顧客はブランドの陰にいる人を信頼する

ヴァージンは常にチャレンジするブランドです。昔は新しい業界に参入するにあたり、大手と競争する予算がありませんでした。そのため、僕自らがマーケティングキャンペーンの中心に立つことが多かったのです。ヴァージンアトランティック航空の宣伝のために大西洋を気球で横断したり、ヴァージンアメリカの新路線就航を祝うためにラスベガスのパームズ・カジノ・リゾートの屋上からラペリングしたり(高所からロープを垂らし、降下する)と、いろいろ派手なことをやりました。

僕が表に出たことで、顧客はヴァージンというブランドの陰にどんな人がいるか、つまり普通の人がいることを知って、好意的に反応してくれました。彼らが僕らのことを信頼できると感じてくれたので、僕らはその信頼に応える必要がありました。今日もそれは変わらず、ヴァージンはそのために努力しています。

顧客は、その組織が自分たちの理想につながっているかどうかを知りたがります。多くのブランドが思っているよりもずっと、消費者は社会的意識が高いのです。

何をやるか決める「イヌとテニスボール」メソッド

あなたには複数のビジネスのアイデアがあるそうですが、真に成功するためには、自分が一番情熱を持てるアイデアを選ぶ必要があります。事業の経営は9時5時の仕事ではありません。それは生き方です。長時間を費やしても苦にならないことに集中するようにしてください。音楽にとことん入れ込んでいた20代に、僕がヴァージンレコードを起業したのは、決して偶然ではないのです。歳をとって健康でありたいと思うようになってから、ヴァージンアクティブを起業したのも同様です。

どのアイデアを追うべきかを決めるひとつの方法として、テニスボールを追いかけているイヌを思い浮かべてみてください。僕が知っている限り、イヌはテニスボールを追いかけるのが好きです(うちのイヌは大好きです!)。テニスボールを投げれば、やろうとしていたことも周りのこともそっちのけで、イヌはボールを追いかけますよね。そこで考えてみてください。自分のテニスボールは何なのか? あらゆるビジネスのアイデアの中で、どんな時でも自分の注意を引きつけるものはどれか? それこそが、追求すべきアイデアです。

ビジネスプランを書こう!

どのアイデアにするか決めたら、次にすべきはそのアイデアが良い製品やサービスになると証明することです。これができるまで、そのアイデアに時間やお金を費やすべきではありません。そのひとつの方法が、紙にビジネスプランを書き出すことです。起業家を支援する僕らのNPO、VirginStartUpのサイトから、テンプレートをダウンロードして使ってもいいでしょう。

僕らのプランは、市場調査をすること、そして最初は小さく始めることを重視しています。自分のビジネスに市場があるとして、ひとつテストをするとしたら何をするのかを考えてください。手始めにFacebookのグループやオンライン調査をするのもいいかもしれません。

たくさんのアイデアがあり、家族の応援に恵まれているあなたは、ビジネスチャンスを探るのに絶好の立場にあるといっていい。あとは自分のテニスボールを追いかけて、顧客との間に信頼を築き、飛び込む前にそのアイデアが良い製品やサービスになることを証明すればいいのです。Good luck!

リチャード・ブランソン

イギリスの実業家で、ヴァージン・グループの創設者・会長。ヴァージン・レコードを筆頭に、航空産業、携帯電話、出版、金融から、飲料水、宇宙旅行まで幅広い分野で事業を展開。気球で太平洋横断に挑戦するなど冒険家としても有名である。鋭い洞察力、ユーモアに富んだ発言と自由な生き方で世界中に根強いファンを持つ。

© 2017 Richard Branson, Distributed by The New York Times Syndicate
[原文:Settling on One Idea/執筆:Richard Branson]
(翻訳:スマキ ミカ)
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