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タラブックスの女性経営陣が実践する「クリエイティビティを引き出す仕事」

タラブックスの女性経営陣が実践する「クリエイティビティを引き出す仕事」

ため息が出るほど美しいハンドメイドの絵本で知られるインドの出版社、タラブックス。その見事な本造りはもちろんながら、同社を率いる女性二人の経営哲学にも世界中から注目が集まっています。(タラブックスの活動と作品については、こちらの記事へ

女性の社会進出が進んでいないインドでは女性の起業が多いとは言えず、さらに社員の多くを女性が占めるタラブックスは珍しいどころか革新的な存在。同社の世界的な成功はインド国内だけでなく、多くの国の女性を勇気づけています。

板橋区立美術館で開催されている展覧会のために来日した同社の経営者、ギータ・ウォルフさんとV・ギータさんが、タラブックスが大事にしている「働き方」についてcafeglobeに語ってくれました。

会社を大きくしないという決意

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タラブックスでは、国内外でデザインなどを専門的に学んできた社員から、農村部の出身でまだ英語の会話もままならないスタッフまで、様々なバックグラウンドを持った人が働いています。とはいえ、社員数はたった15人。

「ええ、私たちは会社を大きくしないことに決めているんです」(V・ギータ)

世界中にファンをもつ同社の本は、各国の出版社から常に大量の注文が寄せられています。いくらでも事業を拡大することができるはずですが、二人の決意にはブレがありません。

なぜなら、本を造る職人をむやみに増やしてはタラブックスの絵本の真髄である美しさが保てなくなるから。そしてもう一つの理由が、会社が大きくなると、働いている人は自分の仕事が会社にとって不可欠なほど重要なものだと思えなくなり、自分と仕事の間につながりを見いだせなくなるから、とのこと。

「だから、際限なく会社を拡大するのは会社にとっても働いている人にとっても、そして地球環境にとっても良くないことだと思うの」(V・ギータ)

「どんな仕事も同じように重要」と伝え続ける

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タラブックスには印刷・製本工房があり、ハンドメイドの絵本はすべてここで作られています。働いている職人の数はおよそ30人。独身の人は工房に隣接した社宅で寝食を共にし、既婚の人はタラブックスが近隣に借りた住宅から通うことができます。

タラブックスの創業と同時にこの工房を立ち上げたアルムガムさんは、職人たちから「ミスターA」と呼ばれ、父のように慕われています。みな、まるでひとつの家族のように暮らし、仕事をしているのです。

実はインドでは全般的に職人の地位が低く、どんなに高い技術を持っていても弱い立場に立たされがちです。しかしギータさんとV・ギータさんはこうした風潮に与することなく、工房の職人の仕事に対し、ほかの仕事とまったく変わらない敬意を払っています。

アルムガムさんは、タラブックスでは誰かに言われた仕事をただこなすのではなく、自分で考えながら仕事ができる、と語っています。誰もが「自分の仕事が尊重されている」と感じているからでしょう。ギータさんはこう言います。

「編集者の仕事も本を梱包し発送する仕事も、読者に良いものを届けるという会社の目的において重要性はまったく同じ。いつもみんなにこう言い続けています」

社員に「仕事をさせる」のではなく、あなたの仕事は会社にとって非常に重要な仕事なのだと伝えること。それが社員のクリエイティビティを十分に引き出し、ひいては社員自身の幸せにもつながると考えているのです。

自分の仕事と他の人の仕事がつながっていると意識してもらうことも大事にしています。何か失敗やトラブルがあったら隠さずに他の人に伝えてほしい。この仕事を長くやってきて思うのは、大切なのは決して間違えないことではなく、同じ間違いを繰り返さないことですね」(ギータ)

「そう、失敗を収穫に変えてほしい。そして、若い時には難しくても歳を重ねたら、自意識にとらわれすぎず、自分の失敗や成功を客観的に評価できるようになってほしいと思います」(V・ギータ)

「世の中には過ちを認めるのが苦手な男性が多いけれど」とギータさんが笑って付け加えました。

対話を通じて良いものを作りたい

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「世界が注目する女性起業家」という冠には似つかわしくないほど穏やかな空気をまとった二人。何を大事にして経営していくかを二人でじっくり話し合い、インドの常識、ビジネス界の常識、出版業界の常識にとらわれないタラブックス独自のスタイルを築き上げてきたのだろうと思わせる調和がありました。ギータさんが言います。

「私たちが大切にしていることはたくさんあるけれど、一番大事にしているのは『対話』。だって、一人で考えるよりみんなで話し合ったほうが良いものができるでしょう?」

経営スタイルをすりあわせる時だけでなく、本作りに際しても二人が最優先するのは対話。インド各地に暮らす少数民族の画家とともに絵本を作ることが多いタラブックスでは、どうしたら彼らのもつ物語や絵の魅力を最大限に引き出した本が作れるか、ギータさんとV・ギータさんが彼らとじっくりと対話を重ねてコンセプトを練り上げていきます。

また、社内の人に対しては「耳を傾けること」にとりわけ重きを置いています。誰かが何か問題を抱えていないか、皆が自分の仕事に誇りと責任を持って働けているかどうか。そのためにも小さな会社であり続けることが必要なのです。

タラブックスが人の心を強くつかんで離さない本を生み出し続けてこられたのはきっと、アーティストや会社で働く人が十分に力を発揮できる環境、発揮したいと思える環境を二人が醸成し、注意深く守っているからこそ。人の手の温もりが残っているかのようなタラブックスの絵本には、たしかに作り手の心持ちが現れています。

ギータさんとV・ギータさんが出会わなければ、この素敵な出版社は生まれませんでした。13億を超える人々が行き交うインドという国で二人が出会えたことは奇跡のようにも思えますが、V・ギータさんは言います。「同じ目的や方向を向いていれば、人はマグネットのように結びつくんじゃないかと思うの」。

20171207_tarabook_2.jpgギータ・ウォルフ(Gita Wolf)さん

タラブックスの創業者であり、経営者兼編集者。インド、コルカタ生まれ。大学の修士課程でドイツに留学し、比較文学を学ぶ。帰国後の1994年、チェンナイで独立系児童書出版社としてタラブックスを創業。2008年に出版された『夜の木』はボローニャ・ラガッツィ賞優秀賞を受賞。

20171207_tarabook_1.jpgV・ギータ(V. Geetha)さん

タラブックスの経営者兼編集者。インド、チェンナイ生まれ。作家、歴史家、翻訳家でもあり、教育や労働、ジェンダーなど社会的な問題にも取り組んできた。フェミニスト・グループで出会ったギータに誘われ、タラブックスを共に経営するパートナーに。

展覧会「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」

場所:板橋区立美術館期間:11月25日(土)〜2018年1月8日(月)開館時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)休館日:月曜(但し1月8日は祝日のため開館)、12月29日〜1月3日観覧料:一般650円、高校大学生450円、小中学生200円 ※土曜日は小中高校生が無料巡回展:刈谷市美術館(2018年4月21日〜6月3日)など予定

図録「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」

編集:ブルーシープ、板橋区立美術館定価:2,592円(税込)書店にて好評発売中

撮影/野澤朋代 取材・文/江口絵理 提供/ブルーシープ

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