アメリカの一流のがん専門医が集まる米国臨床腫瘍学会(ASCO)が、飲酒とがんの関係について注意を促している。一般的な食道がんや女性の乳がんは少量の飲酒でもややリスクが高まると、2017年11月7日付の学会誌で指摘している。

飲酒によるがんリスク、「減らしたければ、飲む量を控えて」

たばこと違って「『飲酒をするな』というわけではない。だが、『がんのリスクを減らしたければ、飲む量を控える。もしも飲酒をしない人ならば、これからも飲まないこと』」。ASCOの声明を書いた米ウィスコンシン大学のノエル・ル・ロコンテ准教授はこう述べている。

成人約4,000人を対象にしたASCOの調査によると、たばこや日焼けががんの危険因子になることは大多数の人が知っていたが、飲酒とがんの関係について意識している人は少なく、がんのリスクとして考えている人は3分の1以下だった。

ASCOの専門家らは今回、過去の研究をまとめ直し、飲酒とがんの関係について次のように警告している。

全世界で新たにがんと診断された人の5.5%、がんによる死亡例の5.8%は、飲酒に起因している可能性がある。

今回の論文が飲酒との因果関係を明確に指摘しているがんの種類は、首や喉まわりのがん(咽喉がん、頸部がん、喉頭がん)、肝がん、結腸がん、食道扁平上皮がん、女性の乳がん

女性では、1日1杯の飲酒でも乳がんリスクを高める可能性がある(アメリカがん研究協会と世界がん研究基金の報告)。

今年5月に発表されたこの報告は119の研究を分析したもので、その中には女性1,200万人のデータや、25万件以上の乳がんの症例データなどが含まれている。分析の結果、閉経前・閉経後の両方で、飲酒ががんリスクを高める強力な証拠があるという結論に達している。

小さなグラス1杯のワインやビール(アルコール約10グラム相当)でも毎日飲めば、乳がんリスクは閉経前で5%、閉経後で9%上昇する

米疾病対策センターが定義する「控えめな飲酒」は、女性で毎日1杯、男性で毎日2杯だが、それでも全く飲まない人に比べると、口腔がん・咽喉がんのリスクは2倍、食道扁平上皮がんのリスクは2倍以上高い。

ヘビードリンカー(女性で週8杯以上、男性で週15杯以上)のリスクはさらに数倍高い。

全く飲まない人に比べたヘビードリンカーのがんリスクは、口腔がん・咽喉がん・食道扁平上皮がんが5倍、喉頭がんが3倍近く、肝がんが2倍高い他、大腸がんや女性の乳がんのリスクも上昇する。

アメリカがん協会の副会長、スーザン・ギャプストゥール氏によると、世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)が、がんを引き起こす要因として飲酒を初めて分類したのは1987年。以降、がんと飲酒を結びつけるさまざまな証拠が蓄積されている。「アルコール飲料とがんの関係については極めて一貫性がある。タマネギの皮をはがすように、時間をかけて徐々に明らかにされている。そのメカニズムについて研究が続いている」。

アセトアルデヒドが関係してる?

同氏によると、飲酒ががんにつながる可能性がある理由の一つは、アルコールが代謝によって、DNAの変化や変異を引き起こすアセトアルデヒド(動悸や吐き気、頭痛、二日酔いなどの原因)に変換されるためだ。アセトアルデヒドの生成は、アルコールが口の中のバクテリアと接触したときから始まる。このことからも、飲酒と喉まわりのがんとの関係が説明できるという。

飲酒と乳がんに関する報告書の執筆歴がある米フレッド・ハッチンソンがん研究センターのアン・マクティアナン博士は「たとえ少量でも、飲酒はいくつかのがんのリスクをわずかに上昇させる」と述べ、専門医たちが飲酒に注目し始めたことを歓迎している。

ASCOは公衆衛生政策としても、アルコール摂取を減らすための取り組みを呼び掛けている。たとえばニューヨーク市は2017年1月から、地下鉄やバス車内でのアルコール飲料の広告掲示を禁止する。一方、アルコール飲料の売り上げを伸ばすために、乳がん啓発キャンペーンの象徴であるピンクリボンを絡めた販促活動を行う飲料メーカーがあるが、「アルコール飲料と乳がんリスク上昇の関連を示す一貫した証拠がある以上」、そうしたPRには反対するとしている。

© 2017 The New York Times News Service
[原文:Cancer Doctors Cite Risks of Drinking Alcohol/執筆:Roni Caryn Rabin]
(抄訳:Tomoko.A)