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スパングリッシュにも進化。スペイン語化するアメリカ [The New York Times]

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スパングリッシュにも進化。スペイン語化するアメリカ [The New York Times]

米ニューメキシコ州、アルバカーキーにある「エル・スーペル」という食品スーパー。この店が立つ場所に約4世紀前、富を探し求める人々が馬に乗って現れ、ここは自分たちの土地だと主張した。彼らがもたらした言葉がこの店の名前に残っているのだ。

プエルトリコ生まれの音楽、「レゲトン」がスピーカーから大音量で鳴り響く。買い物客は北メキシコ訛りのアクセントで、値引きを交渉している。食肉コーナーは「カルニセリア」、パン売り場は「パナデリア」、ハムをカットしているコーナーは「サルチチョネリア」だ。「トルティージャ」売り場もある。文豪セルバンテスの言葉を学んだことがない多くの人も、何語かは察しがつくだろう。かつて、ここはスペインの最も遠い領土の一つだった。

「必要なものは、何でもスペイン語で書かれているわ」と話すのはバネッサ・ケサダさん(23)。メキシコ北部チワワ州出身の移民だ。そう言って指差した先にある銀行の支店では、窓口の係がスペイン語で「ブエナス・タルデス」とあいさつしている。

アメリカは今、場所が変わっても生き続けるスペイン語のタフさを示す大きな実験室と化している。

アメリカのスペイン語人口は、5000万人を超えた。なんと、スペインの人口よりも多い。ABCやCBSといった大手TVネットワークと並んで、スペイン語テレビ「ウニビジョン」が視聴率を競っている。今年の夏にヒットした全米No.1ソングのタイトルは、スペイン語の「デスパシート」だった。

ラテン系移民に吹く逆風

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スペイン語と英語の表示があるコインランドリーの入り口。2017年8月4日、ニューメキシコ州アルバーカーキー、サンホセで(Adria Malcolm/The New York Times)

一方で、アメリカの20以上の州では英語を公用語とする法律が制定され、メキシコ国境への壁の建設を公約したドナルド・トランプ氏が昨年、米大統領選に勝利した。トランプ大統領は移民の流入を制限し、永住権(グリーンカード)の発給は英語を話すことを優先条件にしようとしている

アイオワ州デモインのスペイン語ラジオ局「ラ・レイナ」のオーナー、フアン・ロドリゲスさん(44)は、コロンビア移民だ。トランプ政権になってスペイン語圏からの移民、特に正式な書類をそろえていない移民にとっては「全く先が見えない時代」になったという。そうした移民についてトランプ大統領は強制送還を方針としているため、彼らは身を潜めるようにしていると話す。

だが、「そういう恐れがあるからといって、僕たちはスペイン語で生活するのをやめるわけではない」とロドリゲスさん。「アイオワは英語だけを使えという州かもしれないけれど、僕たちの州でもあるんだ」

世界への拡散はスペイン語が断トツ

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コインランドリーの洗濯機の使い方も、スペイン語と英語で表示。2017年8月4日、ニューメキシコ州アルバーカーキー、サンホセで(Adria Malcolm/The New York Times)

世界を見渡せば、主要言語としての英語の位置は揺るぎないように見える。アメリカは英語を通じて金融、文化、科学、軍事などの分野で、その影響力をいかんなく発揮している。

だが、言語研究サイト「エスノローグ」によれば現在、世界で最も話されているのは標準中国語で8億9800万人。2位がスペイン語で4億3700万人、3位が英語で3億7200万人となっている。

スペイン語人口が多い理由の一つは、1492年にスペインが「新世界」の植民地化に着手するずっと前までたどれると言語学者たちは言う。

メキシコ人作家カルロス・フエンテ氏によると13世紀、イベリア半島でラテン語とアラビア語が権威のある言葉とみなされていた時代、当時のスペイン王アルフォンソ10世が、ユダヤ人の有識者やアラビア語の翻訳家、キリスト教徒の詩人などを集めて国際色豊かなブレーン集団を作り、スペイン語を知的な言語として広めようとした。彼らはスペイン語を非常によく系統化し、発音を標準化したため、比較的習得しやすい言語になった。

今日でもアルゼンチンのパタゴニアの大草原から西アフリカの赤道ギニアまで、世界のスペイン語圏の話者は互いによく話が通じ合う。

世界各地への広がりを見ても、スペイン語は群を抜いている。言語の地理的な拡散状況について、カナダ人作家2人が2013年にまとめた書籍によると、ネイティブスピーカーが最も多い標準中国語は大半の話者が中国国内で暮らしていて、広がりという点ではランクが低い。英語は中国語よりも使用地域が広いが、スペイン語は20カ国以上で多数派言語となっており、アラビア語を抜いてトップだ。

アメリカのスペイン語は進化形

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スペイン語で書かれた子どものためのキックボクシング教室の入り口。2017年8月4日、ニューメキシコ州アルバーカーキーで(Adria Malcolm/The New York Times)

スペイン語圏をまたぐ人の動きが、どのようにスペイン語自体を進化させるか。これを示す例としてアメリカは、スペインや中南米と肩を並べている。

たとえばロサンゼルスのスペイン語人口は400万人を超えていて、スペイン語を公用語としているウルグアイの人口を上回っている。この大都会では違うタイプのスペイン語が出会い、融合することで、ロサンゼルス独特の新しいスペイン語が生まれている

あるいは、メキシコや中米からの移民が多いニューメキシコ州では、16世紀から生き残っていたスペイン語が現代語によってリフレッシュされ、新しい方言が生まれている。

ある日曜日、同州アルバカーキーのスポーツバー「オホス・ロコス」。サッカーのメキシコ代表戦を放送していたので、店内で使われている言葉は圧倒的にメキシコ風のスペイン語だろうと思った。だが、異なる人種同士のカップルを交えて、英語だけで話しているグループもいた。他のテーブルでは英語とスペイン語のミックスで自然に話していた。特に親と一緒に子どもたちがいるテーブルだった。

家族の食卓での会話も、アメリカでのスペイン語の進化が分かる例だ。例えば、20年前にメキシコからニューメキシコ州へ移住してきたナバさん一家。祖父母の世代は地元のアメフトチーム、ダラス・カウボーイズについてスペイン語で熱く語っている。だが、彼らの子どもの世代は互いに、スペイン語と英語が混じった「スパングリッシュ」で話す。さらに孫の世代は、スペイン語の単語を散りばめながらも英語がメインだ。

文法学者にとっては頭痛の種かもしれないが、テレビドラマの登場人物が話す台詞からレゲトンの歌詞、ハンバーガーショップのCMにいたるまで、スパングリッシュはますます勢いを増している。

『ドンキホーテ』や『星の王子様』といった小説をスパングリッシュに訳しているアマースト大学のイラン・スターバンス教授は、「まったく新しい、メスティーソ(白人と先住民の混血住民)の言葉」が出現しているという。

英語を公用語とするような政治的な動きがなくても、スペイン語がこれからもアメリカで広がるとは限らない。ラテン系移民の若い世代は、他の移民と同様、英語にシフトしているという研究結果もある。

だが、歴史を見れば、スペイン語はアメリカで今後も進化し、生き延びていくだろう。スペイン語を話すドミニカ人の主人公を通し、アメリカの移民たちの体験を小説で描いたジュノー・ディアスさんはこう語る。「アメリカの多くの場所で、英語とスペイン語が共存している。二つの言葉の出会いは創造的で、エキサイティングだ」

© 2017 The New York Times News Service[原文:Spanish Thrives in the U.S. Despite an English-Only Drive/執筆:Simon Romero] (抄訳:Tomoko.A)

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