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ハリー王子婚約で英国の人種問題は変わるのか? [The New York Times]

The New York Times

ハリー王子婚約で英国の人種問題は変わるのか? [The New York Times]

あり得なかった婚約者! 英国が平等な社会になった?

ハリー王子が婚約した。相手は離婚歴がありミックスド・レース(混血)のメーガン・マークルだ。英国のマスコミによれば、このことは英国の平等主義化を映している。

「カソリックスクールで学んだ、バツイチ、混血のハリウッド女優が、次期英国王の息子の結婚相手」これは、保守的新聞デイリー・テレグラフ紙の社説冒頭文だ。「こんな文を書くことは、一世代前にはあり得なかった」

この思いは政治的、人種的な立場でも共通しているが、それを戒める声もある。

ミックスド・レースのアフア・ハーシュは、英国における人種的アイデンティティを記した本『Brit(ish)』を上梓した。英国人としての自分を、白人の血統を守る「社会の頂点にいる王室の一族」と重ねるのは難しかったという。「でもそれが本当に変わったように感じています。自分と共通点のある人が現れたのですから」

だからと言って人種差別が変わるわけじゃない

王室は、非白人は言うに及ばず一般人、カソリック、離婚経験者を締め出してきた。そこにマークルが入ることを囃し立てても、英国内の構造的人種差別の撤廃にはプラスにならないと、ハーシュを含む専門家たちは釘を刺す。

英国の制度的人種差別に関する本『Why I'm No Longer Talking to White People about Race』の著者、レニ・エッド=ロッジは、「マークルをアメリカ初の黒人大統領、オバマのように扱うべきではない」とツイートした。

王室の発表によれば、マークルは英国教会に入信し、5月に王室の伝統に慣いウィンザー城のセント・ジョージ教会でハリー王子と挙式後、英国市民権を申請する。

この発表に応じてThe Independent紙のコラムニストが、一般の非白人移民と比べれば、マークルがどんなに簡単に市民権がとれるかを指摘した。現状は、非白人申請者は白人申請者に比べて、申請を却下される確率がずっと高いのである。

英国政府が設立した独立監視機関Equqlity and Human Rights Commission(平等・人権委員会)が2016年にまとめた調査によると、英国社会全体を見た場合、黒人の大卒者は平均的な白人労働者よりも1/4も収入が低い。黒人の失業率は、白人の2倍だ。黒人がトップ大学で学び管理職に就く可能性は、白人よりも大幅に低い。

また、アメリカは黒人の受刑率が偏って高いことで知られているが、英国の黒人はそれよりも刑務所に入る率が高い

このレポートを9月に発表した議員、デヴィッド・ラミーはマークルの婚約についてこう述べる。「現代の英国にとって素晴らしい出来事であり、英国の少数民族にとって感動的なことです。2017年に英国で黒人として生きるということに、多大な影響を与えます」

しかしながら英国の不平等について、こう付け加えた。「この象徴的な出来事と、差別や不平等撤廃のための制度改善は全くの別物であることをわきまえなければなりません」

外国人嫌いがはびこっているのに喜んでいる場合か

また、EU離脱の国民投票結果やヘイトクライムの上昇を考えた時に、王子の婚約で喜んでいる場合ではないという人もいる。

「EU離脱に投票した英国は、ますます外国人嫌いで人種差別的な社会になっています」とEメールで回答したのは、ケンブリッジ大学でポストコロニアル(植民地独立後)文学を教え、最近人種差別にあったというプリヤンバダ・ゴパルだ。

「英国で黒人であるということは、教育や雇用の機会において極めて不利だということです。英国の有名大学やメディア企業は、圧倒的に白人で占められています。学生たちはこの数か月、カリキュラムにおいて英国帝国主義の過去を認めるよう求めています。英国はこれを怠ってきました。帝国主義の遺産を誇るような不誠実なことしかやってこなかったと言えます」

そしてこう付け加えた。「英国の王子と結婚する特権階級の女性が有色人種だったからといって、こうした現実の問題がどう変わるのでしょう?」

エリートは肌の色がちょっとだけ黒い女性を好む?

黒人のイギリス人の多くは、婚約のニュースを歓迎していると語るのは、有色人種の女性向けのウェブサイト『Gal-Dem』の編集者、チャーリー・ブリンクハースト=カフだ。

が、その一方で、婚約の大げさな扱いにもうんざりしていると言う。なぜならマークルのような混血は、すでに「許容範囲内」と見られているからだ。ブリンクハースト=カフはBBCのインタビューに答えて、「私たち(のような混血)は、エリートの間で、嗜好の対象となっているきらいがあるのです」。マークルの「肌がもっと黒かったら、ハリー王子との結婚はなかったでしょう」と彼女は述べた。

退位してまで恋を貫いたエドワード8世

36歳のマークルは英国市民権を取得し、英国教会の洗礼を受ける。これは明らかに慣行を打ち破るものだ。

アメリカ人が英国王室に嫁ぐのは、ウォリス・シンプソン以来だ。ウォリスは離婚歴のある社交界の花だったが、彼女のエドワード8世との関係は、立憲君主制の危機を引き起こした。エドワード8世は1936年に退位し、二人は翌1937年に結婚した。

英国王室のメンバーが皇位継承の立場を失うことなく、カソリック教徒と結婚できるよう法律が改正されたのは、2013年になってからのことだ。マークルはプロテスタント教徒だが幼少時に洗礼は受けておらず、出身地のロスアンゼルスで、カソリックスクールに通った。

マークルが米国市民権を放棄するかどうかは定かでない。米国帰化市民は宣誓時に、「外国の君主、権力者、国家、君主に対し、いかなる忠誠もあまねく捨てる」ことを求められる。

マークルのようなアメリカ先住民が外国の王子と結婚する場合にどうなるかについては、連邦法には記述がない。

© 2017 New York Times New Service[原文:Royal Engagement Seen as Symbol of Tolerance, with Asterisks/Patrick Kingsley] (翻訳:スマキ ミカ)

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