シドニー・ワイズマンが、彼女の親族で経営する玩具メーカーWowWee(ワウウィー)の開発担当エンジニアに、ある商品のサンプル制作を頼んだのは、およそ2年前のこと。南米に生息する小さなサル、ピグミーマーモセットをイメージしたミニロボットのアイデアを持ちかけた。これが、2017年最大級のヒットを記録した「フィンガリングス」の始まりだった。
オナラもする指人形型ベイビーモンキーロボ
フィンガリングスは高さ13センチほど、指に抱きつくデザインで、首を振ったり、目をパチパチしたり、チュッと投げキッスをしたりするインタラクティブなベイビーモンキーロボ。手のひらに包んであやしてやると、すやすや眠りに落ちたり、頭を押すとオナラをしたり、ユーモラスで愛らしい動きが子供たちに大きな熱狂を呼び、今年のホリデーシーズン一番の「プレゼントにもらいたいおもちゃ」になった。
突然、何百万人もの子供たちが、そのおもちゃなしではいられなくなる、玩具メーカーにとっては夢のような状況、小売価格15ドル(約1,600円)のオナラをするベイビーモンキーが大ヒットした背景には、希少性をコントロールする流通、量販店の値付け戦略、ソーシャルメディアによる拡散など、いくつかの理由があった。

在庫切れになるほどの人気と供給のジレンマ
8400億円規模とされる世界のおもちゃ産業は今、スマートフォンやタブレットに向いている子供たちの興味を引き戻そうと必死である。世界的にみれば、おもちゃの売上高は毎年伸びてはいるものの、ビデオゲームの売上げペースはそれを上回っているからだ。
おもちゃ業界の専門家によると、平均的なおもちゃのライフサイクルは約8か月。それ以降は忘れられて商品棚から消えていくのだが、フィンガリングスは通常よりも長いスパンで人気を保っているという。
しかし、大ブレイクはリスクも伴う。供給が追いつかないという問題だ。12月初旬、ウォルマートのオンラインショップではフィンガリングスが在庫切れになり、親たちはアマゾンなど他のサイトに駆け込んだ。フィンガリングス・シリーズの主力はベイビーモンキーだが、メーカーのWowWeeはユニコーンタイプなど違うモデルも出している。その一部にはeBayで5000ドル(約56万円)の値段がついたものも。
品薄感が消費者の渇望をあおりたてるのも事実だが、あまりにも手に入らないと諦めてしまうことになりかねない。とくに、クリスマス前に十分な商品を供給できなければ、せっかくの商機を逃すだけではなく、我が子のためにフィンガリングスを探しまわった両親を敵にまわす可能性も高い。
この秋、WowWeeは中国にあるフィンガリングスの生産工場を2つから3つに増やし、輸送を空輸に切り替えた。コンテナ船では時間がかかりすぎるからだ。
魔法の数字15ドルという価格設定
WowWeeがフィンガリングスをウォルマートに売り込みに行ったのは2016年の6月だった。担当者は指に抱きつくベイビーモンキーをひとめ見て、大きなポテンシャルを感じたという。顔のすぐ前で愛らしい動きをする姿に、子供たちが感情的なつながりを抱くだろうことは容易に想像できた。
しかし、一つ問題があった。価格である。
WowWeeは当初20ドル(約2,200円)でフィンガリングスを販売することを考えていた。だが、歯ブラシからアボカドまで、大量に売るための価格引き下げに努めてきた大量販店ウォルマートは、15ドルにするように強く主張。5ドル値下げするなら、10倍のフィンガリングスを買い付ける結果になるだろうと宣言したのである。
WowWeeは受け入れた。フィンガリングスの小売希望価格は15ドルに決定した。

7歳の少女の動画がブレイクのきっかけ
7月、ウォルマートはあるコンベンションセンターを会場に、数百人の子供たちを招いて、新商品おもちゃの発表会を催した。その後、フェィスブックなどのフィードバックをもとにウォルマートが策定した、このクリスマス商戦の推しおもちゃトップ25にフィンガリングスはランクイン。案の定、8月に全米のおもちゃ店にフィンガリングスが並んだとき、子供たちはすぐに飛びついた。
デトロイト郊外に住む、7歳のマヤ・ヴァリー=ワーグナーもそのひとり。「フィンガリングスだわ。あった! あたし、とってもうれしい」。地元のおもちゃ屋でフィンガリングスを見つけたマヤが喜びのあまり涙ぐむ、父親が撮った動画がWowWeeに送られてきたとき、ワイズマンは「これだ!」と確信。WowWeeのフェイスブックに投稿した途端、またたくまに拡散し、再生回数の上昇とともにフィンガリングスの認知度もうなぎのぼりとなった。
ソーシャルメディアを利用した宣伝の成功は、玩具メーカーが日曜日の朝のアニメ番組にCMを打っていた時代の終わりを意味する。WowWeeはYouTubeを宣伝活動の中心に位置づけ、人気の高いユーチューバーたちにフィンガリングスをプレゼントして、自由に遊んでもらう方法を取った。
170万人超のフォロワーを持つマッケンジー・ジグラーは友人と2人で、指にいくつもベイビーモンキーを抱きつかせ、カメラに向かって愛嬌を振りまく様子を撮影して「すごくカワイイよね」とフォロワーに語りかけた。
もくろみは当たった。こうしたソーシャルメディアでのプッシュが始まってまもなく、フィンガリングスはあちこちで品切れが続出するようになったのだ。
WowWeeはフィンガリングスの人気はクリスマスの後もまだ続くとみている。だが同時に、2018年の大ヒットを生み出すための仕込みもすでに始まっている。
「私たちの商売は、5歳から9歳までの子供たちの気まぐれに左右されるんだ」と話すマイケル・ヤノフスキー副社長。「クレージーだよね」
©2017 The New York Times News Service [原文:How the Fingerling Caught On (Robot Grip and All) as 2017's Hot Toy/執筆: Michael Corkery] (抄訳:十河亜矢子)
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