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スマホなしで旅はどこまで行けるのか? [The New York Times]

The New York Times

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スマホなしで旅はどこまで行けるのか? [The New York Times]

秋に休暇を取り、ヨーロッパ行きの便に乗ろうとしたときに、スマートフォンの電源が切れた。機内でバッテリーをチャージしたが、7時間たってもスマホは復活しなかった。ホテルに着いてからもう一度別の充電器で試したが、そのままスマホは死んでしまった。

ノートパソコンは持って来なかったので、インターネットにもメールにもアクセスできない。カメラもガイドブックも地図もなかった。

さいわい私はスマホ中毒からは程遠く、ソーシャルメディアもほとんど見ない。携帯電話が登場する前にも、何の問題もなくヨーロッパを旅していた。俳優のエディ・レッドメインは、「今この瞬間」を生きるためにスマホをやめたと言っていた。よし、せっかくの機会を活かして、彼にあやかってみよう。

こうして私は、携帯電話やデジタル世界にアクセスしない10日間の旅を過ごした。スマホがないことを埋め合わせてくれる色々なことがあった。一方で、何かあったらどうしようという漠然とした不安を振り払うのには苦労した(帰りのフライトの予約確認をどうしようか、とか)。

インターネット企業は昨今、さまざまな批判の的となっている。プライバシーを侵害しているとか、フェイクニュースをまん延させているとか、ヘイトメッセージを広めているとか、アメリカの民主主義を破壊しているとか......。けれど今回の経験で決定的に分かったことは、良かれ悪しかれ、インターネットなしの生活なんて修道院でもなければ送れないほど、インターネットが世界を変えてしまったということだ。

グーグルマップのない世界へようこそ

携帯電話が登場する前にヨーロッパを旅したときには、道路地図が命綱だった。しかし今回、道路地図はどこにも置かれていなかったし、本屋で売ってさえもいなかった。ミラノのレンタカーショップには空港からの出方の案内だけはあったけれど、そこまでだった。みんな、誰もがグーグルマップにアクセスできると思っているのだ。

イタリアの道路は幹線道路をいったん離れると、ラウンドアバウト(環状交差点)でつながるクモの巣のようだ。小さな村を示す標識はたくさん立っているが、道路に番号はない。

仕方なく人に道を聞くと、地元の人たちとの交流が生まれ、一緒に旅をしていた友人はイタリア語を練習することもできた。だが、おかげで人間はけっこう頼りにならない、ということを思い出すはめにもなった。ミラノのレンタカーショップで聞いた、ジェノバを経由してシエナへ行く道順は、2時間も余計にかかるルートだったことを後で知った。

トスカーナで道行く人たちに宿の場所を聞くのは、まったく無駄だった。イタリアの田舎では誰も住所を使っていないようだ。つまり、今いる道を客観的に表す方法がとにかくないということだ。

道に迷っているとき、「今この瞬間を生きる」ことは、あまり素晴らしい体験ではない。結局は携帯を持っている周りの人たちに頼り、宿に3度も電話して道順を聞くことになった。その後も誰かに携帯を借りてはグーグルマップを使ってしまった。

今回、一緒に旅をしたのは、ニューヨーク大学経営大学院の准教授、アダム・アルター氏。『Irresistible: the Rise of Addictive Technology and the Business of Keeping Us Hooked.(われわれを中毒にさせるテクノロジービジネスの台頭)』という本の著者だ。彼はこう言った。「『携帯電話を持たない』と決心した場合に困るのは、もはや誰もが携帯を持っているという前提が社会にあり、その前提でインフラが作られていることだ。いくら自分が持ちたくないと思っても、携帯なしでは基本的なことさえできないほどだ」

記録しないで旅そのものを楽しむ

どんなに重要なメールやメッセージが届いても、スマホがなければ、見ることも返信することもできない。3日間で耐えきれなくなり、再び人に携帯を借りてメールをチェックしようとした。けれど、いつものスマホと違う機器から自分のアカウントにアクセスするには、パスコードを送らなければならなかった......なんと、壊れている携帯に!

それでメールチェックをあきらめると、もうすっきりした。スマホが壊れたのは私のせいじゃないし、そのせいでメールをチェックできなくても仕方がない。アルター氏の本によると、メールチェック中毒も広まっているようだから、そうは思えない人もいるだろう。

スマホが使えなくてまず残念に思ったのは、カメラ機能だ。せっかく美しい国に休暇に来たのに......。でも数日すると、旅を記録することは考えなくなり、素直に旅そのものを楽しむことに専念するようになった

インターネットがないと、「トリップアドバイザー」や「オープンテーブル」のような旅行情報サイトにもアクセスできなくなる。だが、私たちが泊まった家には古いガイドブックが何冊かあった。イタリアのような場所では史跡や観光名所はもちろん、レストランでさえ、それほど変わっていない。

ネット上で読者が書き込むレストラン評に頼らなくても、自分好みの店を見つけるのはさほど難しくなかった。素晴らしいレストランを何軒も見つけた。しかも、食事の後にレビューをせがんでくるメールを受け取ることもない。

アルター氏いわく「何かを探しているときに偶然、別の何かが見つかる体験こそが新鮮だし、旅の醍醐味だ。スマホによって僕たちの生活はスケジュールが管理され過ぎていて、そういうエキサイティングな機会が奪われているんだ」。

ニュースや株価情報、天気予報などをまったくチェックしない状態に私はすぐに慣れた。永遠にそうした情報なしで暮らしたいとは思わないが、10日間だけでも、そうしたものに触れずに過ごすことで癒されると思った。

トランプ大統領がどうしたこうしたという話も何も読まずに済んだ。ただし宿の管理人から、ハーヴェイ・ワインスタインについて聞かれたときには、このスマホ絶ちを破ってしまった。大物映画プロデューサーのセクハラ疑惑が持ち上がったのは、私がアメリカから旅だった後だった。すでにイタリアのメディアもこのニュースでもちきりだったが、私は何も知らなかった。そこで携帯を借りて、ニューヨーク・タイムズやニューヨーカーの記事を読んだ。ものすごく興味をひかれるニュースだったが、おかげでそれまでの安らかな眠りは妨げられてしまった。

ネットアクセスがないことの解放感

レンタカーをミラノで返してから、スマホがないということは、配車アプリの「ウーバー」も使えないということに再び気付いた。よってたくさん歩くことになったが、素晴らしく魅力的な街歩きを堪能した。帰りのフライトの予約確認も心配は要らなかった。空港ではチェックインの機械を素通りして直接カウンターへ行き、手間もかからず昔風の紙の搭乗券を受け取った。

スマホなしでまた出かけたいとは思わない。けれど、インターネットにアクセスできなかった間に何冊か本を読む時間が持てた。一緒にいる人たちとの交流をもっと楽しみ、自分がいる場所の美しさにもっと目を向けた。計画していなかった体験に対して、もっとオープンになれた。自分を振り返る時間を持てた。今後の旅行では、本当に必要なときしかスマホを使わないようにしようと思う。

スマホをなるべく使わないようにするためのアプリ「モーメント」(Moment)を設計したケビン・ホレッシュ氏からも最近、携帯電話が使えない場所で2週間ほど過ごしたという話を聞いた。「地図がないのは本当に不便だったけど、常に何が起きているのか気にせずに済む状態というのが、すごくいいリフレッシュになったね」

©2017 The New York Times News Service[原文:A Trip Minus A Smartphone (It Can Work)/執筆:James B. Stewart](抄訳:Tomoko.A)

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