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新しい年のはじまりに。働く女性たちへの提言/禅僧・南直哉さん

新しい年のはじまりに。働く女性たちへの提言/禅僧・南直哉さん

40代になれば生きる方向性が定まり、何の迷いもなくなっているはず......と思っていませんでしたか? しかし現実には、心の中は悩みでいっぱい。上司と部下の間に挟まれて身動きが取れなくなったり、仕事に対するやる気がなかなか出なかったり。また、もっと仕事をしたいのに家庭の事情で諦めざるを得ないなど、私生活での変化を抱えながら働く女性にとって、仕事に関する悩みは複雑です。

新年を迎え、「今年こそ、この状況をなんとかしたい」と思う方に向けて、恐山菩提寺院代の南直哉(みなみ じきさい)さんに、40代女性が抱えやすい悩みと心のあり方についてお話を伺いました。南さんは、お寺の生まれではなく一般家庭にて育ち、百貨店に就職。サラリーマン生活を送ったのちに「人生に生きづらさ」を感じて、20代半ばで出家されたという異色の経歴の持ち主です。

2017年に上梓された『禅僧が教える 心がラクになる生き方』(アスコム)では、「不安・怒り・執着・嫉妬は手放せます」と説いている南さん。私たちが今年すべきことはなんでしょうか。

「不惑」ではなく「惑惑」の状態だということを知る

仕事に対する悩みは人それぞれですが、まず知っていただきたいのは、40 代は極めて不安定で未完成な「惑惑」世代である、ということです。

40歳は「不惑」(物の考え方などに迷いのないこと)とも言われますが、実際はその反対で、迷ったり、悩んだりして毎日を過ごしている人がほとんどでしょう。

しかし、多くの40代が、自分が「惑惑」な状態であるにもかかわらず、それに気づかないまま、自分はもっとちゃんとしなければ、と考えているようです。

40代なのだから、自分の行くべき道が定まっていて、それがまわりの人からも評価されていて、迷いや戸惑いがない状態でないといけない、と思い込んでいるのではないでしょうか。

しかし、そのように完璧な人は世の中にはいません。

今、迷いや悩みが尽きなくても、それは当たり前のこと。まず、自分は「惑惑」の状態であることを理解し、その上で物事を考え、自分が何を成すべきかをはっきりさせることが大切です。そうすれば、仕事にまつわる悩みも自ずと解決していくでしょう。

「人の役に立つこと」と「生活費を稼ぐこと」を土台に考える

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たとえば、「仕事にはモチベーションが必要だ」、「何事もポジティブに取り組まなくてはならない」ということをよく聞きますが、はたしてモチベーションを持つことやポジティブでいることはそんなに大事なことでしょうか。

仕事というのは、「人の役に立つこと」と「生活費を稼ぐ」のがすべてです。

仕事へのモチベーションを問うより、自分の仕事が誰かの役に立っているかどうか、生活できるだけのお金を得ているかどうか、ということをまず考えてみましょう。

この2点に対して確信を持てれば、それが自分の土台となり、仕事にプライドを持つことができるようになるはずです。プライドを持つことが必ずしもよいことだとは思いませんが、気持ちを安定させることは間違いありません。

大切なのは、自分が成すべき仕事ができているかどうか、ということです。

自分の問題は、自分にも他人にも伝わる言葉でとらえる

もうひとつ大切なのが、自分が抱えている問題と向き合うことです。

自分の問題を直視することは面倒ですし、手間も時間もかかるため、日々の仕事に追われていると遮断してしまいがちです。しかし、ないがしろにしてきた問題は、うつや心の病気などの引き金になるなど、必ず反乱を起こします。

自分のことを考え、問題を知るためには、テクニックが必要です。それは、読むこと、聴くこと、話すこと、何でもよいですが、問題を言葉でとらえること。つまり、言葉で自分が置かれている状況の輪郭をはっきりさせるようにするのです。

そしてその言葉が、他人が聞いて分かる言葉になっているかどうかも大切です。自分の話を聞いて、きちんと批評してくれる人であれば、その人と対話をすることで、自分の問題がよりクリアになるはずです。

誰に話してよいかわからないという場合は、少し距離があって、信頼できる人を選ぶとよいでしょう。仲が良すぎると、関係を維持するために迎合することもあるので、適任ではありません。もし心あたりがなければ、これから探してみるようにしてください。

そのためには、普段のペースを落とし、あまり急がないように生活してみましょう。話ができるような信頼できる人と出会うには、仕事の文脈から離れた場所や時間を作ることを心がけることも、ひとつの方法です。

無駄だと思っていることにこそ、問題の本質が隠れている

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力を抜いて、仕事から離れた時間を作るということが苦手、という人も多いかもしれません。

それは、損得勘定という市場の原理が感情に染み付いてしまっているから。休みを取っているのに、手持ち無沙汰でなんだかソワソワしてしまうのも、その間に誰かが得をしているのでは、と考えてしまっているからなのです。

また、一生懸命であることにこそ価値があると考えていると、怠惰な時間は作れません。もちろんある目標に向かって頑張っている場合はよいですが、一生懸命でなければ人から評価されないという強迫観念がある場合は、やみくもに頑張ってしまい、心も体も疲弊してしまいます。

自分の問題は、無駄だと思っているところにたいがい隠れているものです。光があたっているのは、影があるから。影をすべて切ってしまったら、自分が今どのような状況にいるのか、わからなくなってしまいます。

「惑惑」世代の人たちには、心の中がモヤモヤしていたら考える時間を作り、それがどのような問題なのかをしっかり把握してほしいと思います。そうすれば、問題解決のためのアプローチの方法は、自分で見つけられるはずですから。

* * *

いつも悩みを抱えていて心が晴れないなら、いったん立ち止まって考える時間を持ち、心の整理をしてみては。新しい年のはじまりに、自分とじっくり向き合ってみるのもよいかもしれません。

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著者:南 直哉 発行:アスコム 定価:1,100円(税別)

南 直哉(みなみ じきさい)さん

1958年、長野県生まれ。禅僧。青森県恐山菩提寺院代(住職代理)、福井県霊泉寺住職。早稲田大学第一文学部卒業後、大手百貨店勤務を経て、1984年に曹洞宗で出家得度。同年から曹洞宗・永平寺で約二十年の修行生活をおくる。『老師と少年』『恐山 死者のいる場所』(新潮社)、『「正法眼蔵」を読む』『善の根拠』(講談社)など、著書多数。

取材・執筆/小口梨乃、撮影/野澤朋代

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