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トライベッカの地下にレアハーブのファーム。狙うはインスタ映え [The New York Times]

The New York Times

トライベッカの地下にレアハーブのファーム。狙うはインスタ映え [The New York Times]

かつては閑散とした倉庫街だったが、今やマンハッタン屈指のラグジュアリーなエリアになった、ロウアー・マンハッタンのトライベッカ。最先端のギャラリーやブティック、レストラン、バーなどが集まるこの街に、2017年11月にできたのは、なんと農園。ペットクリニックや犬用プール、ミシュラン2つ星レストランの入居するビルの地下で、常時数百種類のレアなハーブと食用花が栽培されている。

以前は、自転車トレーニング・スタジオ

Farm.One(ファーム・ドット・ワン)は、土を使わずに屋内で植物を栽培する、水耕栽培ファームである。人工照明を使用し、コントロールされた環境の下で植物を栽培している。

このわずか111平米の窓のない地下スペースは、その前は、マウンテンバイクのトレーニング・スタジオ兼倉庫だった。外気も、自然光もない。それでも、約580種類ものレアもののハーブと食用花の栽培が可能だという(同時に栽培できるのは約200種類)。

「路面物件の高額な賃料を払う気はもともとありませんでした」とファームのCEO兼創業者のロバート・レイン。「物件探しの条件は、床排水、水と電気、温度をコントロールできること。それと、虫が入ってこないよう密閉できることだけでした」。テントウムシなど、植物の生育に有益な虫を選んで放っている。それは「アマゾン」で買っているそうだ。

種を蒔いた次の週にはもう収穫

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配達用に収穫中のハーブ、レッドソレル(別名:ルメックス)。2017年12月5日ニューヨークにて撮影。(Sarah Blesener/The New York Times)

種はココナッツ殻などに蒔いてから、トレイに置き、その下を水と肥料を循環するようにする。上部のLED照明は太陽光を再現して調光する。生育スピードはかなり速く、マイクログリーンなど多くの植物が1週間もあれば収穫できるようになる

ビルの地下で育った野菜、食べても大丈夫? 「心配には及びませんよ」と請け負うのは、温室スペシャリストであるコーネル大学准教授、ニール・マットソン。「太陽からであろうと、人工照明であろうと光は光。植物は気にしません」

高級フレンチからピッツェリアまで

顧客のピッツァ・レストラン、Pizza Loves Emilyのオーナー・シェフ、マシュー・ハイランドも水耕栽培の野菜を好んで使う。「水耕栽培ガーデンというアイデア自体が、アメージング! 照明、匂い、温度、すべてが上手く調整されて、素晴らしい発想です」

Farm.One の顧客リストにはほかにも、Le TurtleやLe Coucou、Mission Chinese Food、The Poolなど、ニューヨーク市内の有名レストランの名がズラリ。このうち何店かは、週に数回配達する契約を結んでいる。

狭い通路に縦横に伸びる栽培空間

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午前の配達に向け、収穫する従業員のキャサリン・チェスター。トライベッカの地下から、トップシェフのキッチンに年間を通して安定供給する。2017年12月5日ニューヨークにて撮影。(Sarah Blesener/The New York Times)

ファームの内部は、拡大・縮小可能な自在棚を用いて、図書館の書架のように、ハーブが上下に積まれた棚が効率的にレイアウトされている。

1段目にはラベンダーの可愛らしい小花を咲かせ、リコリスとミントの強い香りがするハーブ、アニスヒソップ、別の段には、スパイシーなホースラディッシュに似た味わいのマスタードグリーン(芥子菜)。

レインCEOは、栽培中のハーブの名称と、納品予定の顧客名を「全部言える」と得意げだ。「これは、私のお気に入りです」と、引っこ抜いたのはパパオ(別名キルキーニャ)の葉っぱ。「まず、指先で潰してみてください。いい香りがします」「あれは、シアントロ(別名コリアンダー)。超フレッシュで草のように元気です」

「ソフトウエア販売にはもう戻れない」

Farm.One創業者の、英国系オーストラリア人のレインCEOには、日本で翻訳ソフトウエアの会社を起業した過去がある。しかし、8年後、本当にやりたかった「食」の道へと軸足を180度変えた。料理学校に通い、世界中のファーマーズマーケットを食べ歩き、それまで名前を聞いたこともなかったレア・ハーブを次々に発見した。

「自分には食に関する十分な知識がある」と自信を持った彼は、次に、どうやってこれらのハーブをシェフのキッチンに届けたらいいか、リサーチを開始した。そのリサーチから生まれたのが、Farm.Oneである。

2016年4月、料理学校、インスティテュート・オブ・キュリナリー・エジュケーション内にFarm.Oneがオープンした。8月には、著名シェフ、ダニエル・ブールーが顧客第1号となり、夏が終わる頃にはハーブが売り切れになった。そして11月に、同じくロウアー・マンハッタンのビルの地下にこの第2号店を開いた。

レインによれば、このファームが成功した要因は2つあるという。つまり、製品の希少性とランニングコストが低いこと。「普通のバジルは1ポンド(500グラム弱)あたり10から15ドルですが、プルート・バジルは40ドルでも売れます」。LED照明の電気代は、スペースが狭いので最小限に抑えられている。シカゴのFarmedHereといった、大規模な温水循環式ファームは採算が取れず、やむなく閉鎖した。

「インスタ映え」需要の取り込み

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同じビルにある2つ星レストランAteraでは、シェフが地下菜園で摘んだばかりのハーブを使い、テーブルサイドで盛り付けるデザートが好評。2017年12月5日ニューヨークにて撮影。(Sarah Blesener/The New York Times)

最近、Farm.Oneが狙っているのは、フード業界で注目される「インスタ映え」需要の取り込みである。シェフは、珍しいハーブや食用花など、値段が多少高くても見た目の良いアイテムを求めている。例えば、Pizza Loves Emilyのシェフ、ハイランドは、プルート・バジルに夢中だ。「小さい葉っぱを散らしたピッツァが好評です。お客様は特別に作らせた食材だと思うようです」

同じビルの上階に入居するミシュラン2つ星レストランのAteraは、希望する客にファーム訪問ツアーを提供している。また、地下で摘んだばかりのハーブを使って、シェフが、テーブルサイドで盛り付けてくれる、コース料理も人気だ。「盛り上がるんですよ、これが」とレストラン支配人のマシュー・アビックは言う。

ほぼ市内全域に30分以内でデリバリー

もちろん、食用ハーブや花は、カリフォルニアやオハイオのシェフ農園や問屋からも調達することができる。でも、ニューヨークのシェフ達がFarm.Oneを気に入っている理由は、それが地元産であり、食材が、倉庫やトラックの荷台で何日も積まれたままになることはないという点だ。

Le Turtleのヴィクター・アマリラ料理長は、「朝摘んだハーブが午後届きます。週2回配達に来てくれます」と言う。Farm.Oneのウェブサイトによれば、ニューヨーク市内の9割に30分以内のバイク配達が可能。

食の都市回帰の起爆剤に?

水は再生処理し、再利用し、排水を3週間ごとにして、廃棄物を最小化している。ただし、環境面ではデメリットもある。屋内ファームの場合、どうしても照明と暖房経費がかさむため、カリフォルニアの天日の下で栽培した野菜を全米各地に配送するコストよりも高額になる。「この問題を解決しようと、LED照明のさらなる省エネ化などの対策を検討中」と前出のマットソン准教授は言う。

気候変動による天候不順による農業への悪影響が、全世界的に懸念される中、水耕栽培は不可欠であると主張する人たちも多い。Farm.Oneでは、都市型農業に関心を持つ人に向け、水耕栽培のセミナーも開催した。マンハッタンのビル地下のこの小さなファームから、人類全体の問題を解決する糸口が見つかるかもしれない。

© 2017 The New York Times News Service[原文:Herbs From the Underground/執筆:Alyson Krueger](翻訳:Ikuko.T)

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