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肌理にみる生の証/横浜美術館「石内 都:肌理(きめ)と写真」展

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《金沢八景 #8》1975-76年 ©Ishiuchi Miyako

2014年にハッセルブラッド国際写真賞をアジア女性で初めて受賞者した写真家の石内都(いしうちみやこ、1947−)。現在、横浜美術館で「石内 都:肌理(きめ)と写真」展が好評開催中です。国内で8年ぶりとなる大規模個展では、1970年代から現在までの40年間の制作活動を240点の写真で一挙公開しています。

キーワードは肌理(きめ)

タイトルにある肌理(きめ)は、辞書をひくと「(皮膚などの)表面に現れている網の目のようなもの」なのだそう。ここでは、堆積した時間や歴史、記憶が石内の写真をとおしてそのようすがあらわになります。

石内は多摩美術大学在学中に織りを学び、染織に対する鋭い感覚を磨きました。つちかわれた感覚は、のちに独学で始めた写真において、撮影に選んだ近代建築、傷を負った身体、そして衣服などの遺品が発するいのちの痕跡を捉えるように。肌理の探求は、横浜の自宅兼暗室で布を染めるように、一枚一枚手作業で現像した初期のモノクローム写真からもよみとることができます。複雑な思いを抱えて思春期を過ごした横須賀や横浜にのこる戦後の爪痕が、粗い粒子の表現と共鳴します。

モノクロームがひろがる「横浜」と色鮮やかな「絹」

展覧会は4つの章に分けられており、最初の部屋では、横浜の近代建築や風景、同市を拠点に活動していた舞踏家の故大野一雄の身体の写真など、石内がとらえた地元「横浜」をとりあげています。次の「絹」では、モノクロームの世界がひろがる部屋とうってかわり、色彩豊かな空間。故郷の群馬県桐生市でつくられる斬新なデザインの絹織物の銘仙(めいせん)を題材に、日本の近代生糸産業の盛衰を展示でダイナミックにときほぐします。

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《yokohama 互楽荘 #2》1986-87年 ©Ishiuchi Miyako

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《絹の夢 #50 併用絣銘仙 桐生》2011年、アーツ前橋蔵 ©Ishiuchi Miyako

静けさ漂う「無垢」とよみがえる「遺されたもの」

身体にのこる病や事故の傷跡の連作写真がつどう「無垢」。これまでの情念漂う黒々とした粒子や絹の艶やかな色調にたいして、りんとした静けさが伝わってきます。同時に傷を負った彼らの心に寄り添うような優しさが感じられ、個々が辿った人生に想いをはせずにはいられません。小説『苦海浄土 わが水俣病』でしられる作家、石牟礼道子の手足を接写した「不知火(しらぬい)の指」も展示。

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《不知火の指 #1》2014年 ©Ishiuchi Miyako

「遺されたもの」では、実母の死をきっかけに制作した「Mother’s」をはじめとする広島の被爆者やメキシコの画家フリーダ・カーロらの遺品が、写真のなかで息を吹き返します。従来の「母親」、「被爆者」、「痛みや悲しみを背負った画家」のイメージをくつがえすような写真からは、有名無名の人たちの日常が遺品をとおして色味を帯びてたちあらわれます。

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《Mother's #35》2002年 ©Ishiuchi Miyako

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《Frida by Ishiuchi #107》2012年 ©Ishiuchi Miyako

「記憶の織物」とも呼ばれる石内の写真。人はさまざまな痕跡をのこしながら人生を歩み、その生きた証は一生を終えてもすべてが消えるわけではないことに気づかせてくれる味わい深い展覧会です。

石内 都 肌理(きめ)と写真

会期:2017年12月9日(土)〜3月4日(日)木曜休館 (3月1日を除く)/場所:横浜美術館 神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目4番1号/時間:10:00~18:00(入館は閉館時刻の30分前まで、3月1日(木)〜16:00、3月3日(土)〜20:30)/入館料:一般1,500円、大高生900円、中学生600円 小学生以下無料 65歳以上1,400円(要証明書、美術館券売所でのみ対応)/TEL:045-221-0300(代表 10時~18時、木曜日は休館)

公式HP



Tomoko Kuroiwa

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