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仕事と子育てをどう両立? 働き方先進国デンマーク #1

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デンマークは、世界幸福度ランキングで常にトップクラスの「世界で一番幸せな国」。デンマーク人がもっとも大事にする、自分の好きな人やものに囲まれてゆったりと過ごす時間「ヒュッゲ」は、世界中で憧れのまなざしを向けられている。

もちろん日本で生まれ育った私たちだって、一日に一度はゆっくりとソファに沈み込み、家族や恋人、友人達とおしゃべりしたり、子どもとしっかり向き合ったり、好きな読書や料理にふけったりしたい。でも、いかんせん日本のワーキングウーマンには時間がない。子育てしながら働いていたらなおさら、自分のためのくつろぎ時間なんてとてもとても。デンマークの人はいったい、どうやってヒュッゲの時間を作りだしているのだろう。

いま、何を優先するかを自分で選べる

デンマークでも朝の出社時間は8時か9時で、日本とそう変わらない。しかし仕事を終えるのは、なんと午後3時か4時。特に忙しい時期を除けば残業も休日出勤もない。そして、通勤に1時間以上かかる人はごく稀だ。想像してみてほしい。毎日3時台に帰宅できたら、どれだけ一日がゆったりするだろう。

デンマークを代表する製薬会社のひとつノボ ノルディスク社で、社員の方々にどんな働き方をしているかを聞くことができた。いまはコペンハーゲン勤務だが日本支社でも4年間働いていたヤコブ・ヒュレステッド・ヴィネさんは、日本とデンマークの違いをこう語る。「日本だと常に仕事を最優先するのが当然とみなされ、家族や趣味のための時間を仕事より優先すると白い目で見られることも多いですよね。 でもデンマークでは『どんな時も必ず仕事を優先しなくてはいけない』という考え方はありません」

たしかに、すべき仕事が終わってからでないと自分の時間は作れないとなったら、自分の時間は「仕事の合間に生まれた隙間時間」でしかない。この時間は仕事のために使う、あの時間は自分のために使うと自分で決められてこそ、「自分の時間」だろう

育児のバランスは話し合ってきめる

しかしそれはヤコブさんが男性だからできるのでは? と思う人もいるだろう。日本の女性の多くは仕事に加えて家事と育児の大半を担っている。目の前のタスクをこなしているだけで一週間なんてあっという間に過ぎてしまう、と。

デンマークでも子育て中の夫婦は忙しい。日本と異なるのは、育児や家事は夫婦がともに担うという前提で社会が動いていることだ。そしてこの「社会」には職場も含まれている。

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デンマークの製薬会社ノボ ノルディスクで働くヤコブさん(左上)、トーベンさん(左下)、ミレさん(右上)、マリンさん(右下)。4人とも、小さな子どもを育てながら会社では多くの部下を率いて活躍している。

妻が医師として働いているトーベン・ブーア・ストーゴーさんの家では、最初の一年は自分が育児に専念したいと望んだ妻に合わせ、トーベンさんは父親のための育児休暇(デンマークでは一般的に2週間だがノボ ノルディスク社では3週間)のみ取得した。

そして妻が仕事に復帰してからは、トーベンさんも託児所や学校への送り迎えを担当。そのために、朝6時に出社して午後2時半に退社することもある。「妻と夫のどちらがどのタイミングでどれだけ育児を担うかは、夫婦で話しあって決めるんです。社会がきめつけるのではなく、といって法律で決めるのでもなく」

きれいに等分することを唯一の目的としないのがデンマーク流だ。しかし単に夫婦で話し合うだけなら、いまの日本では結局、妻が大半を担う家ばかりになるだろう。夫婦間の対等な話し合いは、企業を含む社会が夫婦を対等に扱わないと成り立たない。

いつでも自分の手に選択肢がある社会を

日本では、前々から決まっていた重要な会議の日に、自分の子どもが急に発熱したからという理由で会議を延期してほしいと言い出すのは気がひける人が多いはず。それが男性ならなおさら、出席予定だったメンバーからの目が厳しくなることも容易に推測できる。

財務部門で多くの部下をもつマリン・リンドストロム・バレンティンさんは、「私も子どもの急病が理由で会議を延期してもらうことはあります。でもそれは男性社員でもまったく同じ。私の仕事の繁忙期や重要な会議がある時に子どもが病気になったら、夫が家で子どもの看病をしていますし」と言う。 女性だから常に子どもの世話を優先し、職場での活躍は諦めなくてはいけない、ということはない。男性だから常に仕事を優先し、子どもの世話は妻に任せなくてはいけない、ということもない。いつも選択肢は複数あり、状況に応じて自分で選ぶことができる。

しかし、男性であれ女性であれ、子どもの急病で会議を急にキャンセルしたら周囲からのネガティブな評価は避けられないのではないだろうか。

研究開発部門の人事を担当するミレ・ボアコーストさんはこう話してくれた。「上司も部下も同僚も、『この人に休まれたら仕事が回らないから困る』という考え方はしないんです。社員が家族をもち、人間らしい生活を営むのは当たり前のことと考えるのがノボ ノルディスクの、いえ、おそらくはデンマーク全体で共有している価値観だと思います」

女性でも男性でも、子育て中でもそうでなくても、仕事をしながら自分の生活を自分でコントロールでき、自分の大事なものに時間を振り向けられる。デンマークの人々は「いつでも自分の手に選択肢がある社会」を作ってきた。それがデンマークの幸せを支えている。

とはいえ、仕事には必ず期限がある。社員の生活ばかり尊重していたら、仕事はまわっていかないではないか。誰かがしわ寄せをかぶるしかないではないか。管理職の読者はこう思うかもしれない。育児時短中の同僚の仕事をカバーしながら自分の仕事をこなしている人もそう思うかもしれない。

次回はデンマークの管理職の人たちが、この両立しそうもない課題にどのように向き合っているかを見ていこう。

取材・文/江口絵理、取材協力/ノボ ノルディスク、top image by Gettyimages

江口絵理

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