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ネット時代になぜ? 米都市部でミニFMブーム [The New York Times]

The New York Times

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低出力のラジオ局を運営するにあたっては、周りの地理をよく把握している必要がある。電波は坂や高いビルで妨げられるが、逆に潮水の上では飛び石のように増幅される、というように。

2017年11月に開局したばかりのシアトルの極小ラジオ局KBFGは、バラード高校のバスケットボールの試合中継を前にして、電波障害のトラブルに見舞われていた。試合会場でヘッドホンを首にかけノートパソコンに向かう局員のエリック・ムーズさんは、バラード高校で物理と天文学を教える教師でもある。必死で解決に臨むものの、たとえ失敗したとしても大問題ではないことを彼は認めている。「僕たちの放送を知っている人は、ほとんどいないからね」

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KBFGラジオの局員エリック・ムーズさん、ふだんは高校教師だ。(Ruth Fremson/The New York Times)

これまでは地方型や宗教放送が多かった

非営利で運営され、可聴エリアが狭い低出力FM局は、数あるメディアのなかでもマイナーな存在だ。米国で放送が許されるようになった2000年代初頭に第一次ブームがおき、地方のコミュニティ放送や、教会などの宗教団体の放送局が多数開設された。その他にも地下室や屋根裏部屋からの放送や、イベントの生中継を主な活動としている局もある。

2017年に起きた開局ラッシュは、都市部でのものだった。北西部の州ではとくに多く、シアトルで6つ、ポートランドは少なくとも4つの局が開局した。地域の伝言板を目指す局もあれば、カウンターカルチャーや社会運動を軸にしている局もある。共通するのは「オルタナティブ」というキーワードだ

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シアトルの放送局Hollow Earth Radioで番組を担当するシェリー・リーベンズさん(左)は、次の枠のルイーズ・ベンダールさん(右)にマイクを引き継ぐ。2017年12月28日撮影(Ruth Fremson/The New York Times)

一般受けを気にせずヘンな番組を

資金が豊富な大手ラジオ局は転送用の送信機をたくさん設置して遠くまで電波を飛ばすことができるが、聴く人から遠く離れたところで作られた番組は一定のパターンに限定されがちだ。

平均的な低出力FM局の放送電波が届く範囲は5.6キロ。これは大きなラジオ局の電波や障害物が存在しないとしての話だ。風変わりなものが好きな人はダイアルを回すといい。ヘンな番組がいくらでも見つかるはずだ。

ある局では、リスナーが電話で自分が見た夢や妄想について話せるように回線を用意しており、その録音をまとめて放送している。別の局では毎週日曜日、5歳の男の子が寝る前にお父さんと恐竜や音楽の話をする様子を放送している。

そこにリアルにいる、という感覚

都会で運営される低出力局の信奉者たちは、ラジオは電波が届く範囲が狭いからこそ物理的な存在を意識することができるし、それが共同体の感覚を育むと考えている。運営者は、地域の人の家を直接訪れて支援を訴えたり、地元のパブで寄付金集めのイベントを開いたりする。

「どこでもあるけど、どこでもない」ウェブの世界とはそこが大きく違う。少し前までは、予算がなければストリーミングやポッドキャストを選ぶのが当然だと考えられていたが、ラジオという選択肢を選ぶ人々が増えてきた。

「リアル店舗を構えた、という感じです」。ポートランドでKSFLというラジオ局を開局したレベッカ・ウェブさんは言う。スタジオは1915年に映画館として建てられた古い建物の上階にあり、ポートランドを拠点に活動するミュージシャンの曲を15分おきにかけると決めている。

ウェブさんは、これは政治的な意図を持ってのことだという。「吸収合併によるメディア企業の一元化になんとか対抗したくて、手作りのコミュニティ・ラジオを作りました」

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KBFGラジオのローンチパーティーの様子。(Ruth Fremson/The New York Times)

お金には代えられない充実感

シアトルのセントラル・ディストリックでKHUHというラジオ局がオープンしたのは2017年9月。ウェイトレスをしながらコメディアンとして活動しているクララ・プルートンさんは、この局で共演者のバル・ニグロさんと共に「クィア・トーク」という隔週の番組を受け持って2か月目になる。

ギャラも出なければ、聞いている人がいるのかもさだかではない。それでも自分たちの日常や、街で起きていることについて話すことで大きな満足感が得られていると彼女たちは言う。

ときにはCDの音飛びや、放送禁止用語をうっかり口にしてしまうなどのハプニングもある。だが、こうした素人臭さも番組の魅力のひとつとして捉えられている。ボランティアの出演者とリスナーの間で、嘘のない繋がりが生まれるからだ。

© 2018 The New York Times News Service [原文:As Low-Power Local Radio Rises, Tiny Voices Become a Collective Shout/執筆:Kirk Johnson](抄訳:Tom N.)

photo by Gettyimages

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