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机やオフィスに続く、新しいコワーキングの形は「セッション」 [The New York Times]

The New York Times

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心と体の両面から快適な仕事環境を求める女性の声に押され、働く女性をターゲットにしたシェアオフィスや共有ワークスペースが今、活況を呈している。そんな中、半年前にロサンゼルスで誕生したのが、コワーキング・グループ、「キルト(Quilt)」だ。アシュレイ・サマー(29歳)とジャンナ・ヴルツェル(32歳)の二人の女性によって、働く女性が気軽に集まり、おしゃべりしたり、勉強したりできる機会を提供することを目指し、創業された。

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オンライン掲示板I Love Creatives の創業者プノ・ローレン・プノが自宅で主催するコワーキング・セッションに出席するキルトのメンバー。2017年11月7 日ロサンゼルスで撮影。(Emily Berl/The New York Times)

スペースでなく自宅を貸し出す逆転の発想

登録メンバーは現在約1,000名。いわゆるシェアオフィスや共有スペース提供ビジネスのように、部屋やデスクを貸し出すわけではない。メンバーが代わる代わるホストとなり、「自宅」に他のメンバーを招き、コワーキング・セッションを開催する。年会費や月会費は徴収しない。代わりに、セッションに参加した人がその都度参加費を支払う。通常、1セッション当たりの参加費は約20ドル。そのうち8割が自宅を提供するホストに渡される(その一部で、当日のスナックやドリンク代を賄うことが可能)。

キルトは、複数の投資家から100万ドル(約1億円)の資金を調達した。高級路線で知られる、女性専用コワーキングスペース「ザ・ウィング(The Wing)」が最近調達した、3,200万ドル(約32億円)に比べたらわずかな金額である。とはいえ、大都市の一等地に居を構える高級クラブとは異なり、キルトの経費は極めて少額であり、市場参入の障壁は最低限で済んでいる。「自分と共通点がある人たちと空間を共有するために、1日20ドルを支払うことを厭わないような女性たちがスターバックスに大勢いますよね」と、キルトの出資者の1人であるオッターメディアの社長、サラ・ハーデンは、このスタートアップに勝算があると考える。

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コワーキング・グループ、キルトの共同創業者ジャンナ・ヴルツェル(左)とアシュレイ・サマー。2017年11月7 日ロサンゼルスで撮影。(Emily Berl/The New York Times)

コワーキング・セッションをウェブサイトで仲介

キルトのホストになりたい人はまず、民泊仲介サービスAirbnbのように、ウェブサイトに、自宅の提供可能なスペースを掲載したリスティングを作成し、最大収容可能な人数を記載する。また、ペットや男性の同居人の有無などの詳細情報も記入する。とはいえ、夫やボーイフレンドは、キルトのメンバーの在宅中は、外出するか、家の中の別の場所に籠っていることが多いそう。

現在、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコにホストがいるが、米サウス・カロライナ州、オレゴン州、ペルー、トロント、バルセロナのリスティングが作成され、キルトの承認を申請中だ。ホストは、出席を申し込んできた人を事前に調べることもできる。ただ、これまでのところ、全員が、わざわざ調べることなく、出席希望者を受け入れているとのこと。終了後は、参加者とホストはお互いにフィードバックを送信することができる。

メインとなる活動は、4時間のコワーキング・セッションだ。その他に、朝、仕事に出かける前の1時間のコーヒー&チャット、夕方や週末には、長時間の学びのセッション「ラーンショップ」も主催する。ラーンショップでは、各分野のエキスパートの女性が、自宅や友人の家でレクチャーを行う。ベンチャーキャピタルの資金調達からタロットカード術まで多岐にわたるテーマで開催されている。

プライベート空間での人脈作りを好む女性

共同経営者の二人が出会ったのは2年前。当時、アシュレイはハリウッドとニューヨークでシェアオフィスを展開する「ノイエハウス(NeueHouse)」の会員管理に携わっていた。一方、ジャンナは、カリフォルニアのベニス、オーストラリアのメルボルンで女性専用の共有ワークスペースを運営する、「ワンルーフ(One Roof)」に勤務していた。いわゆる同業者、そして、コリアンダーが大の苦手などの共通点がきっかけで意気投合。クリエイティブな女性たちを集めて、結びつける良い方法はないか、一緒にアイデアを練り始めた。

創業にあたって二人には譲れない条件があった。不動産がらみの契約はしない、ということだ。「場所を確保する場合、賃料として多額の経費がかかります。クールなスペースを創り出すためにリスクを負わなければならないのです。このビジネスモデルであれば、一か所に集中させずに、いろいろな場所で展開することが可能です」とアシュレイは言う。女性の場合、仕事に役立つ人脈を広げる際も、クラブやバー、メジャーな共有ワーキングスペースではなく、自宅のようなプライベートな空間を好む傾向がある、と彼女たちは考える。

「かつての、怒れるフェミニストのためのクラブではありません。クールであること、流行の先を行くことは求めていません。私たちが目指すのは、会社の事業であれ、コンサルティングであれ、執筆であれ、自分のプロジェクトに取り組んでいるすべての女性を支援することです」とアシュレイ。ジャンナも続ける。「男性は、ホッケーの試合やゴルフなど、いろいろ集まる機会がありますよね。私たち女性も集まって一緒に別のことを楽しんでいます」

自己紹介のキーワードは「リスク」

取材した日の午前中、ロサンゼルスのダウンタウンのロフトに、ラップトップを持参した12 人の女性が集結した。オンライン掲示板「I Love Creatives」を主宰するプノ・ローレン・プノ(33歳)がホストとなるコワーキング・セッションの参加者である。今日は、彼女にとって初めてのセッション。アシュレイとジャンナも出席し、進行をサポートした。

オリーブ色のフェドラ帽をかぶり、テーブルの上座に座ったジャンナは、自己紹介を兼ねて、最近、仕事で直面したリスクを紹介するよう参加者に促した。「私は、仕事を辞めました!」と言って、自分自身の状況をリスクとして紹介し、皆の称賛を浴びたのは、クロエ・ドリマル(26歳)。一方、ホストのプノは、「大麻産業について調べていますが、まさしく、いろいろなリスクをはらんでいることを把握しました」と社会的リスクについて客観的な意見を述べた。

一方、「これは、本当のリスクとは違いますが」と前置きし、語り始めたのは女性起業家のためのウェブサイト「Yes She Can」を立ち上げた、リディア・マック(32歳)。「それは、いわゆる『ああ、休暇を取っちゃった、ダメな私』というリスクです」。彼女は、両親に会うために休暇を取ってハワイに行ったという。「生産性をあげることに取り憑かれ、無駄な時間を持つことに恐怖感を覚えたの。これ、やばいでしょ」。「リスク」というたった一つのキーワードが、初対面の参加者同士を結びつけていく。

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コワーキング・セッションの一シーン。 (Emily Berl/The New York Times)

女性起業家やクリエーターの背中を後押し

午前のセッションが終了した後、アシュレイとジャンナは、市の中心部にある、クリスティーナ・トパシオ(30 歳)の自宅に向かった。 女性起業家やクリエーターを支援するインキュベーター、Trackを創業したクリスティーナがホストとなり、コワーキング・セッションを主宰した。キルトのメンバーに、クリスティーナの側から声を掛けた多数の女性クリエーターが参加し、立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。すべての参加者は会場の入り口でキルトのスタッフから、現在の自分の状態を、「on the brink(がけっぷち)」「stoked(ワクワク)」「optimistic(楽観的)」「inspired(感化されて)」などの形容詞を使い、ネームタグに記すよう、指示をうけた。「女性同士の集まりが大好きなの」。女性向けウェブサイト、Wife Complexの創業者クリステル・デイビッドは興奮して言う。ネームタグには、「anxious(心配な)」と記されていた。 このセッションのテーマは「投資と脆弱性」。アシュレイとクリスティーナは共同で、リーダーになるために何を学ぶか、投資家にどう資金調達を依頼するか、企業としての規律と自由な思考のバランスをどう取るか、などに関してディスカッションを行った。

女特有の、集まった時に生まれるパワー

ジャンナが朝のセッションで行ったように、アシュレイも、仕事がらみで味わったリスクを説明するよう参加者に促した。キャスリン・マホニー(57 歳)は、29 年前にミュージックフェスティバルを立ち上げるために、恋人と別れて故郷を後にし、大陸を横断したというストーリーを紹介した。「当時は、事業計画なんて何ひとつ理解していませんでした」 今や不動産投資家となった彼女は、ロサンゼルスにコミュニティ・ハブをオープンすることを検討中。視察も兼ねて、キルトに参加してみたと言う。「全然気取らない、子供の頃に見たヒッピーカルチャーのような躍動感がありますね。こういった光景は何年も見ていません。女性が家に集まった時に、内側から有機的に発生する、自然な何かがありますね」

© 2018 The New York Times News Service [原文:Come on Over to My Place, Sister Girlfriend, and We’ll Co-Work/執筆:Sheila Marikar] (翻訳:Ikuko.T)

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