窮屈な空間に押し込まれ、長時間、思うように身動きが取れない空の旅。いかに退屈せずに楽しく、快適に過ごすか? フライトが長距離になればなるほど、充実したエンターテイメント・プログラムは欠かせません。
航空各社は長年、機体の軽量化と座席数の増加を目的に、座席スペースの縮小を進めてきました。しかし、最近、その流れをさらに一歩進め、機内エンターテイメント用のモニター画面を座席に装備しない航空会社が現れています。
モニターを無くせば、ダブルでコストダウン
デルタ航空の座席モニター。アメリカン航空とユナイテッド航空は、短距離用の新しい航空機では座席のモニターを廃止し、搭乗者が自分の持ち込んだデバイスで好きなプログラムを見ることのできるストリーミング・サービスを提供することにした。(デルタ航空提供 /The New York Times)
航空会社にとって機内エンターテインメントの充実の障害となるのはコスト。コンサルティング会社L.E.Kの常務取締役兼、旅行・輸送部門長のダン・マッコーン氏によれば、機内エンターテインメント・システムの設置コストは、1座席あたり1万ドル(約113万円)にも上るとか。
「モニターのせいで座席はかさばって重くなる上に、技術は絶えず進化し、あっという間に時代遅れに。米国の乗客の大半が自分のスマートフォンやタブレット、ノートPCを機内に持ち込んでいる今、廃止を検討するのは当然でしょう」と理解を示すのは、旅行業界アナリストであり、アトモスフィア・リサーチ・グループの共同創業者ヘンリー・ハルテヴェルト氏。
「ハードウエアの廃止によるコスト節減の観点から検討を進めているエアラインもあります。モニターを無くせば、機体の重量を減らせますし、設備のメンテナンス・コストも節減できます」
自分のデバイスで好きなコンテンツを
アメリカン航空とユナイテッド航空は、新しく導入する短距離路線に座席モニターは搭載せず、代わりに、乗客のデバイスで見ることのできるストリーミング・サービスを提供することにしました。
マッコーン氏は、今後、コスト面を理由に、搭乗客が自分のノートPCやスマートフォン、タブレットで見ることができるコンテンツ・ストリーミングの提供に移行する航空会社が増えるだろうと予想しています。
モニターの必要性を疑問視
乗客の中には、座席背面のモニターを余剰なアメニティである、と考える人もいます。例えば、月に1回の頻度で出張のために飛行機を利用する、メイヨー・クリニックの准教授リンゼイ・レンフロ氏は次のように言います。
「世の中、ディスプレイだらけです。座席になくてもいいんじゃない? 飛行機で移動中に周囲を見渡してみると、自分のデバイスを使っている人がいかに多いかが分かります。たとえ、座席モニター付いていてもです」
同じ理由で、ハワイアン航空も、新たに導入するエアバスA321neoに、座席モニターを装備しないことにしました。
「A321の導入にあたり、環境が変化していることを認識し、それを踏まえて決定しました。乗客の過半数は自分のデバイスを持って搭乗し、航空会社が座席に装備したデバイスは使いません」(同社チーフ・コマーシャル・オフィサーのピーター・イングラム氏)
心配なのは、バッテリーの消耗
リンゼイ・レンフロ氏と息子のウィル・マッキーニー君(6歳)。月1回の頻度で飛行機を利用する彼女は、座席モニターが無くなっても一向に困らないと語る。2017年12月23日アトランタ空港にて撮影。(Melissa Golden /The New York Times)
しかし、機内エンターテインメントに自分のデバイスを使用しなければならなくなることを嫌がり、座席のモニターを使いたがる乗客もいます。
航空機の地上オペレーション業務に従事する、自称「飛行機オタク」のパトリック・リゴンド氏は、仕事用のスマートフォンを常に携行しています。それでも、地元フィラデルフィアの空港から飛行機に乗る場合は必ず、座席にモニターが付いていることを確認し、さらに座席配置図で座席を選んでから、予約します。
「座席モニターをなるべく使うようにしています。乗客の立場からいえば、自前のデバイスを使うよりも、座席モニターのほうが簡単です。それに、目的地に着いた時に肝心のデバイスがバッテリー切れじゃあ、元も子もないですよね」
タブレットはどこに置くべきか
アトモスフィア・リサーチ・グループの調査では、出張が多く移動しながら仕事をこなさなければならない人たちも、同じ意見を持つことが明らかになりました。
「ノートパソコンを座席テーブルに置いて仕事する場合、スマートフォンを乗せるスペースはありません。また、タブレットやスマートフォンを仕事に使う場合は、エンターテイメントの視聴には使えません。別のモニター画面があるのはビジネストラベラーにはプラスのポイントです」(ハルテヴェルト氏)
ブランドイメージ作りに大事な役割
座席モニターを求める、リゴンド氏のような乗客にターゲットを定め、機内エンターテイメントを、ブランドの重要な差別化要因と位置付けるエアラインも。
デルタ航空は2017年、iMessage、Facebook Messenger、WhatsApp経由で利用できる無料メッセージ通信サービスの提供を開始し、また、現在、新型モニターの設置、提供コンテンツの充実を進めているところです。
「地上では、ネット配信やケーブルテレビなどメディアの選択肢がどんどん増えていますよね。当社は、それを機上でも再現することを目指しています。座席モニターは快適な空の旅の必需品であると確信しています」と、デルタ航空の製品戦略・顧客エクスペリエンス担当常務取締役アンドリュー・ウィングローブ氏は言います。
LCCでも一人ひとりに画面を
アラスカ航空も2017年、高速Wi-Fiと無料のメッセージング・サービスを導入しました。また、米格安航空会社のジェットブルー航空はLCCながら、業界参入時から機内エンターテイメントをブランドイメージ向上に不可欠な要素と位置づけ、現在、A320、 A321型機に導入するエンターテイメントの新システムの開発に投資を行っています(マリヤ・ストヤノヴァ製品開発ディレクター)。
「当社は、2000年に初就航した際、各座席にライブTVを設置しました。その当時は、画期的な取り組みでした。機内エンターテイメントは、当社ブランドのコミットメント形成には欠かせない要素の一つです」
© 2018 The New York Times News Service [原文:Those Seatback Screens on Planes Are Starting to Disappear/執筆:Martha C. White] (翻訳:Ikuko.T)
Ranking
子どものスマホデビュー前に確認しておきたい注意点とポイント
Sponsored
肌もボロボロになる? 女医に聞いた「花粉症の噂」の本当のところ
Sponsored
女医さんに聞く、 誰にも聞けないデリケートゾーンのトラブル解決法
Sponsored
子どものスマホデビュー前に確認しておきたい注意点とポイント
Sponsored
肌もボロボロになる? 女医に聞いた「花粉症の噂」の本当のところ
Sponsored
女医さんに聞く、 誰にも聞けないデリケートゾーンのトラブル解決法
Sponsored
子どものスマホデビュー前に確認しておきたい注意点とポイント
Sponsored
女医さんに聞く、 誰にも聞けないデリケートゾーンのトラブル解決法
Sponsored
新着記事
おすすめ情報をGET!会員登録はこちら