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ゲド戦記の著者、アーシュラ・K・ル=グィンが描いた「性のない世界」[The New York Times]

The New York Times

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米国の人気作家アーシュラ・K・ル=グィン氏が1月22日、米オレゴン州ポートランドの自宅で死去した。88歳だった。死因は明らかにされていないが、数か月前から健康状態が悪かったという。

ル=グィン氏はSFとファンタジーのジャンルに、硬派な女性ならではの視点と高い文学性を持ち込み、『闇の左手』や『ゲド戦記』シリーズなど多くの作品を生み出した。

魔術や竜、宇宙船や惑星間の対立など、ジャンル特有の設定を用いながらも、ありがちなマッチョな冒険物語は書かなかった。物語世界の中の対立は文化的な背景をもとに描きだされ、それは戦闘シーンの代わりに、和解交渉や自己犠牲などで解決された。

著作は40以上の言語に翻訳され、世界中で広く読まれている。批評家のハロルド・ブルーム氏はル=グィン氏を次のように称賛した。「極めて創造的で、独自のスタイルを持ったこの作家は、ファンタジーを文学の高みに引き上げた」

21作の長編小説の他に、12冊の詩集、100作以上の短編小説、エッセイや子供のための本などが出版されている。その他、老子道徳経やチリ人のノーベル賞作家、ガブリエラ・ミストラルの著作の翻訳も手がけた。

両親は人類学者。幼少より神話に思いを巡らす

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2014年にオレゴン大学で講演をするアーシュラ・K・ル=グィン氏(Jack Liu via The New York Times)

1929年にカリフォルニア州バークレーで生まれたル=グィン氏。両親は共に人類学者で、アメリカ先住民を研究していた。父のアルフレッド・クローバーはカリフォルニア州の先住民を専門とし、母のシオドーラも、1960年に出版した『イシ:二つの世界に生きたインディアンの物語』で高い評価を受けた。

ル=グィン氏は幼少の頃より神話についての本を読みふけっていたという。ジェームズ・フレイザーの『金枝篇』も愛読書のひとつ。ファンタジーやSFにも親しんでいたが、十代になる頃には興味を失ってしまう。その理由として「兵士や機械、白人男性が宇宙の果てまで出向いてそこを征服する、という話ばかり」だったからだと後に語っている。

ラドクリフ・カレッジとコロンビア大学で中世及びルネッサンス期のロマンス諸語の文学を学んだ後、フルブライト奨学生としてパリに留学。同じく奨学生だったチャールズ・ル=グィン氏と出会い結婚した。米国に帰国後はポートランドに住み、3人の子供を育てることに専念した。

性別がない世界とは?

1960年代初頭までに5作の長編小説を書いていたが、出版には至っていなかった。オルシニアという架空の国を舞台とした物語もそのひとつ(後にシリーズで出版された)。SFに挑戦したところ見事に成功し、1966年に『ロカノンの世界』を、その2年後に『影との戦い』(ゲド戦記シリーズ1作目)を出版した。

1969年に出版された『闇の左手』はゲセンという惑星を舞台としている。この惑星に住む両性具有の人々は、交配期にだけどちらかの性に変化する。ル=グィン氏はこの作品について、人間社会の本質を知るための「思考実験」だったとしている。英紙ガーディアンのインタビューでは次のように語っている。

「性別を取り去った後に何が残るのかを考えてみたかったのです」

両性具有のゲセン人と地球からやってきた男性との関係性が描かれた『闇の左手』はSF作品を対象とする2大文学賞、ヒューゴー賞とネビュラ賞をダブルで受賞した(1970年)。

著作は、いくつかのテレビ映画として映像化された他、日本のアニメ映画にもなっている(宮崎吾朗監督『ゲド戦記』2006年)

2014年には全米図書賞では米文学功労勲章を授与された。その際のスピーチでル=グィン氏は、長い間文学の世界から無視されてきたSFやファンタジーの作家たちを代表して受け取りたいと語った。

© 2018 The New York Times News Service [原文:Ursula K. Le Guin, Acclaimed for Her Fantasy Fiction, Is Dead at 88/執筆:Gerald Jonas](抄訳:Tom N.)

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