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チョコにのこした植民地支配の記憶。ビターなメッセージをアートに込めて [The New York Times]

The New York Times

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スカルプチャーセンターで開催された「コンゴ人プランテーションワーカー・アートリーグ(CPWAL)展」の展示作品。2017年1月28日ニューヨークで撮影。(Joshua Bright/The New York Times)

バレンタインデーが近づいて、デパートやショッピングモールの店頭には色とりどりのパッケージのチョコレートが溢れんばかりに並べられ、甘い香りをふりまいている。バレンタインデーにチョコレートを贈るというのは、じつは日本独自の習慣だが、昨今ではベルギーやフランスの老舗ショコラティエまでが便乗し、期間限定バレンタインデー・セットなるものを販売するブランドも。

ただし、このチョコレート文化、19世紀にスイーツの世界を変える一大産業として花開き、現在のような隆盛に至る背景には、ヨーロッパ列強による苛烈な植民地支配があったことを忘れてはならない。ニューヨーク・タイムズに掲載された、チョコレートの歴史に影をおとす苦い過去を見つめなおし、搾取された人々に還元していこうとする試みを紹介したい。(以下、2017年2月2日付ニューヨーク・タイムズ記事の抄訳)

コンゴの労働者によるチョコレート製彫刻

2017年1月末、コンゴ民主共和国の貧しい地方都市ルサンガで、木に登りパームナッツを採取するのを生業とするマチュー・キラピィ・カシアマは、生まれて初めて飛行機に乗り、ニューヨークに降りたった。スカルプチャーセンターで開催の「コンゴ人プランテーションワーカー・アートリーグ(CPWAL)展」に主催者から招待されたのだ。この展覧会には、カシアマを含むルサンガの農民や職人たちが制作した、机上に飾るギフトサイズからギャラリー向けの大作まで、大小さまざまなチョコレート製の彫像作品が展示されている。

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マチュー・キラピィ・カシアマと彼の作品『Man Is What the Head Is』(Joshua Bright/The New York Times)

CPWALはすでにヨーロッパ各地で同様のアート展を開いており、これまでに作品を販売して得られた約10万ドル(約1100万円)の収益は、外国企業資本ではなく地元の人々が所有する農園や果樹園を開発するなど、ルサンガの地域振興のために使われている。しかし、CPWALを発案し組織したオランダ人アーティストのレンゾ・マーテンスは、新たな収入の道を確保することはあくまで目標のひとつにすぎず、アフリカと西洋の複雑に入り組んだ関係性と、社会的政治的な力のせめぎ合いを浮き彫りにし、ポスト植民地主義のあり方そのものを問いただす意味を持つと語る。

チョコレートの原材料カカオを素材に選んだ理由

マーテンスはまず、ルサンガで彫刻ワークショップをおこなうことを告知、集まった人々のなかからCPWALのメンバーを選びだした。選考基準は、世の中や身の回りの状況に対して、自分なりの意見や見方を持ち、何かを伝えたい強い思いがあるかという点。木工の経験者もいたが、作品制作はあくまで作者の創造性にゆだね、技術的なサポート以外に口出しは一切しなかった。

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作品『The Art Collector』(Joshua Bright/The New York Times)

メンバーと話し合い、彫像の素材はチョコレートに決定した。地元でカカオが栽培されていたのもあるが、何よりも、宗主国の植民地政府が主導したプランテーション経営による圧政と搾取という忌まわしい歴史を、チョコレートはまざまざと象徴するものだったからだ。

3Dスキャナーで型作り

実際の作品の制作は郊外に設けられた集会場でおこなった。メンバーがコンゴ川の支流の川底からすくった泥でもとになる彫像を作り、それを3Dでスキャンしたデータをアムステルダムに送って鋳型にする。仏系ベルギーの会社がアフリカ産カカオから製造した、溶けないように砂糖を入れていないチョコレートを流し込んで彫像が完成する。

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作品を鑑賞する来場者 (Joshua Bright/The New York Times)

このため、チョコレートでできたCPWALの作品がギャラリーに一堂に会する様子を見ることができたのは、ニューヨークを訪れたカシアマがメンバーのなかで初めてだった。やはりパームナッツ農園で働いていた父親を、幼いときにヘルニアで亡くして以来、学校に行けないまま、便利屋や農園での労働など雑多な仕事をして家計を助けてきた。木彫りや編み草で工芸品や雑貨を作るのもそのひとつだったが、「そういうのがアートだなんて思いもしなかった。でも今わかった。アートは立派な仕事だよ。僕はものを創り出す。そして、報酬を受け取るんだ」 とカシアマは笑顔をみせた。

©2017 The New York Times News Service[原文:Chocolate Sculpture, With a Bitter Taste of Colonialism/執筆: Randy Kennedy](抄訳:十河亜矢子)

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