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なぜ「シンプソンズ」は未来を知っているのか? [The New York Times]

The New York Times

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「ザ・シンプソンズ」の脚本家チームは未来が見える水晶玉を持っているわけではない。しかし、多くの人々が不思議に思うのも仕方がないだろう。

世界でもっとも有名な架空の家族を描いた「ザ・シンプソンズ」は、約30年間もの放送期間を誇るご長寿アニメ。これまで何度も実際に起こった出来事を予言してきた。たとえば、トランプ政権、ヒッグス粒子の発見、9・11同時多発テロなど。直近では、ディズニーによるフォックス買収の事例もある。その数、なんと20以上。

「未来は簡単に予言できる」と脚本家

未来は、人々が考えているよりも簡単に予言できるものだと語るのは、アル・ジーン氏だ。ジーン氏は、「ザ・シンプソンズ」放送開始当初から脚本家として参加しており、1998年からはショーランナー(製作総指揮)としても製作に携わっている。通常、「ザ・シンプソンズ」のエピソードは製作から1年後に放送されることになっている。「だから、1年後のことを考えながら製作する、という心構えでいるだけなんだけどね」とジーン氏は説明し、「みんなが『ザ・シンプソンズ』の偉大なる予言を買い被りすぎている、という未来が見える」とジョークを飛ばした。

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シンプソンズのキャラクターに囲まれたエグゼクティブ・プロデューサーのマット・グレイニング(左)およびアル・ジーン(右)。(Photo by Frederick M. Brown/Getty Images)

製作チームはエリート揃い

「The Simpsons and Philosophy(シンプソンズと哲学)」の著者で哲学者のウィリアム・アーウィン氏によると、「シンプソンズ」は極めて聡明で才気溢れる人々によって製作された作品だという。実際、製作チームの多くはハーバード大学を卒業している。「ザ・シンプソンズ」の主導権を握っているのは、演者ではなく脚本家チームだとアーウィン氏は指摘する。実際、このアニメには、芸術、文学、ポップカルチャーから政治、科学まで多種多様な分野についての教養が存分に活かされている。

「このような知性の高い人々がテレビ番組を製作する時には、番組の中で驚くべき予言がされることがしばしばある」

もうひとつ考えられる要因としては、「大数の法則」がある。これは、ハーバード大学の数学者フレデリック・モステラーとパーシ・ダイアコニスが1989年に発表した法則で、「充分に多いサンプルを集めて調査すれば、一見極めて稀な出来事であってもある程度発生を予測できる」というものだ。

ありきたりなロジック以外に答えを求めるファンのために、バーナード・ベイットマン博士の提唱する説もご紹介する。精神医学者のベイットマン博士は「Connecting With Coincidence(偶然を論理的に説明する)」の著者で、サイコスフィアというものの存在を挙げて偶然の一致について説明している。サイコスフィアとは、我々人間の精神圏のことで、“行動する際の集合精神”だ。

ベイットマン氏によると、「適切な条件のもとでは、私たちは“自分が知っていると知らないこと”を知ることができる。だから、出来事を予言したり、我々が考えていることを引き寄せるといったことが時々できるようになる」のだそうだ。

ここで、もっとも有名な「ザ・シンプソンズ」の予言をいつかご紹介したい。まずは、もっとも不気味な予言から。

9・11同時多発テロ……予言した年: 1997/発生した年: 2001

「The City of New York vs. Homer Simpson(ホーマーのニューヨーク物語)」のエピソードでは、世界貿易センタービルが攻撃を受けた9・11同時多発テロを彷彿させるシーンがあった。これについては、ジーン氏ですら説明できないという。「ニューヨークに9ドルで行けると書かれたパンフレットが出てくるシーンがあって、9の文字の横にツインタワーが描かれていた。このツインタワーが数字の11のように見えるので、まるで9・11のようだ、ということだ。本当に不気味で奇妙だと思う。

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「The City of New York vs. Homer Simpson(ホーマーのニューヨーク物語)」のエピソード(画面キャプチャ)

「ザ・シンプソンズ」のエグゼクティブ・プロデューサーであるビル・オークレー氏は、2010年の「ザ・ニューヨーク・オブザーバー」のインタビューの中で「この9ドルという料金は、笑えるくらい安い金額ということで採用されたんだ。世界貿易センターを扱ったジョークは、番組が始まって以来このエピソードのみだった。だから、不気味だと言わざるをえない」と語っている。

9・11テロを予言していたテレビ番組は、「ザ・シンプソンズ」だけではない。テロの半年前に放送された「ザ・ローン・ガンメン」(「X-ファイル」のスピンオフ)には、世界貿易センターを狙って飛行機がハイジャックされるシーンがある。もっとも、このドラマの中では、ビルにぶつかる前にパイロットがコントロールを取り戻すことができたが。

スーパーボウル(第26〜28回)……予言した年: 1992-1994/発生した年: 1992-1994

「Lisa the Greek(ホーマーとリサの絆)」では、NFLチャンピオンも3年連続で予言していた。ジーン氏によると、これもたまたま運良く当たっただけだという。

以下は、グレーゾーンだ。

ディズニーによる21世紀フォックス買収 ……予言した年:1998/発生した年: 2017

「ザ・シンプソンズ」の予言が現実になった一番新しい例は、2017年12月にディズニーが520億ドルで21世紀フォックスを買収したことだ。エピソード「When You Dish Upon a Star(スターどっきり秘生活)」には、「20th Century Fox, a division of Walt Disney Co.(20世紀フォックス、ウォルト・ディズニー社傘下)」と書かれた看板が登場する。ジーン氏によると、今回のケースは脚本家チームの先見の明によるものだそうだ。企業の買収自体は、「よくあることだ」とジーン氏は言う。「世の中は、常に買収だらけだ。だから、論理的に考えて充分起こりうると思わないか?」


ヒッグス粒子……予言した年: 1998/発生した年: 2012

エピソード「The Wizard of Evergreen Terrace(発明は反省のパパ)」の台本は、「ザ・シンプソンズ」の予言の中でも一番ぞっとするものかもしれない。偉大な発明家になりたくてたまらないホーマー(シンプソンズ・ファミリーの父)が黒板に難解な方程式を書き殴っているシーンだ。ホーマーが書いているのは、“神の粒子”と呼ばれるヒッグス粒子の方程式のちょうど2分の1まで。ヒッグス粒子は、その存在が初めて推定されてから数十年後の2012年に、ようやく発見された。

「ホーマーが書いた方程式は、ヒッグス粒子の計算を予見していた」。2013年に出版された「The Simpsons and Their Mathematical Secrets(邦題『数学者たちの楽園:「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』)」の著者サイモン・シン氏は、2015年の英インデペンデント紙の取材に対しこう述べていた。「この計算式から導き出されるヒッグス粒子の質量は、実際のナノレベルの質量よりもほんのわずかに大きいだけで、ほとんど変わらない。驚くべきことに、ホーマーはヒッグス粒子が発見される14年も前に予言していたんだ

しかし、この予言もある程度根拠があるものだった。ジーン氏によると、「ヒッグス粒子の話を脚本に入れたのは、数学を学んでいたディヴィッド・コーエンという人物だ。コーエン以外にも、数学のバックグラウンドを持つ製作メンバーが『ザ・シンプソンズ』には複数いる」のだそうだ。

最後に、充分説明がつくケースを紹介する。

トランプ大統領……予言した年: 2000/発生した年: 2016

これも、かなり驚いた人が多いだろう。しかし、ジーン氏によればトランプ大統領誕生は最も合理的根拠のある予言のひとつだという。 「みんなかなり忘れているけど、当時トランプは大統領選への出馬の意向について話していたんだ。だから、まったく根拠のない、突拍子もない設定という訳ではない

脚本家のひとりダン・グレーニー氏は、「ザ・ハリウッド・レポーター」から2016年に受けたインタビューの中で、このジョークを通じて警鐘を鳴らす意図があったと語っている。「これままるで、最悪な事態に陥る前の論理上の最後の歯止めのようだ。正気でないアメリカの状態をよく表しているシーンとして、登場させた」

ポップカルチャーの中には、他にもトランプ大統領を予言していた作品がある。たとえば、マイケル・J・フォックス主演の「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」。外見がドナルド・トランプそっくりの悪漢ビフ・タネンが権力の座に就く、というストーリーだ。もうひとつは、米国のロックバンド「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン」が1999年にリリースした曲「Sleep Now in the Fire(スリープ・ナウ・イン・ザ・ファイヤー)」のミュージックビデオ。マイケル・ムーアが監督を務め、ウォール街で撮影された。

© 2018 The New York Times News Service[原文:‘The Simpsons’ Has Predicted a Lot. Most of It Can Be Explained /執筆:Maya Salam](抄訳:吉野潤子)

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