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ストップ!男性ユートピア。 シリコンバレーの格差に迫る一冊 [The New York Times]

The New York Times

#MeTooムーブメントとそれに続くジェンダー格差議論に世間が大きく揺れた2018年1月頭、シリコンバレーもちょっとした地震に襲われた。雑誌「ヴァニティ・フェア」が、ブルームバーグの記者、エミリー・チャンの新著『Brotopia: Breaking Up the Boys' Club of Silicon Valley(ブロトピア:シリコンバレーの男社会の解体)』の抜粋記事を掲載したのである。シリコンバレーの「閉鎖的な、乱痴気騒ぎのダークサイド」の内部を暴くというセンセーショナルな見出しが付けられたその記事で、チャンは、資産家のテック企業幹部や投資家の自宅で、薬物乱交パーティが密かに、しかし、繰り返し開催されていた様子を描いた

その後、2月6日に上梓された著作で、そういったパーティは、もっと深い闇から発生したひとつの現象に過ぎないことが明らかにされた。女性の処遇に関して、テック産業が抱えた問題ははるかに深刻なのだ。テック業界を長年取材してきたチャンに、最先端の業界のひどく偏った男女バランスの原因や男性優越の実態について聞いてみた。

テック業界の男女間格差、なぜ生まれた?

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ブルームバーグTVのテクノロジー番組のホストでもある『Brotopia』の著者エミリー・チャン(37)。サンフランシスコで2018年2月2日撮影 (Jim Wilson/The New York Times)

Q. シリコンバレーが「男社会」になった経緯を教えてください。

こんな風に男社会になる必然性はなかったし、いつもこうだったわけではありません。テクノロジーが産業として誕生した時から、女性は重要な役割を担ってきました。映画『ドリーム』(訳注: NASAで活躍した、知られざる女性数学者のストーリー)がよい例ですし、他のテクノロジー分野もそうです。

しかし、1960年代、70年代にコンピュータ産業が爆発的に拡大し、優秀な人材を必要としました。コンピュータ業界はとにかく人材不足でした。そこで、ウィリアム・キャノンとダリス・ペリーという2人の心理学者に相談し、有能なプログラマーを選考する性格適性検査を行いました。

約 1,200 人の男性と200人の女性を対象に検査を行った結果、その2人の学者は、優秀なプログラマーは人付き合いが苦手である、つまり、他人には無関心であるという結論を導きだしました。その検査の判断基準は、広い範囲に影響を及ぼし、数十年間にわたりさまざまな企業に活用されました。その結果、女性よりずっと多くの男性が雇用されたのです。人付き合いが苦手な男性は女性よりもコンピュータースキルに優れているという説を裏付ける根拠はありません。それなのに、その固定観念が現在まで続いているのです。

Q. テック業界の男女間格差はどのくらい深刻なのでしょうか?

組織的な問題です。間違った態度があまりにも長い期間、許容され、常態化しています。また、皆が単に、技術職にどんな人材が向くか、狭い考えでしか見ていません。その結果、技術職として働く女性は誰しも、仕事の現場で自分1人以外は皆男性、というシチュエーションを何度も何度も経験しています。

Q. 業界の女性が受けた不当な扱いで一番ひどいと思った例は?

パーティや社交のパターン、方法は本当に衝撃的でした。私は、2年にわたり、乱交パーティの現場に行ったことがある人、それを理由に締め出されたことがある人など、何十人も取材してきました。本当にショックを受けました。話題の中心は、セックスよりむしろ権力に関する内容でした。権力バランスが完全に一方向に偏っています。

業界で働く女性たちは感情を押し殺している

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シリコンバレーの男女間不平等と男性優位の根本原因と実態を解き明かした、エミリー・チャン著『Brotopia: Breaking Up the Boys' Club of Silicon Valley』(Alessandra Montalto/The New York Times)

Q. 業界で働く女性から聞いた中で最も驚いた話は?

一番びっくりしたのは、彼女たちが、スーザン・ファウラー(ウーバーの元エンジニアで、社内のセクハラの告発文書をネットに投稿)が暴露した内容に、驚かなかったことでした。そういったことは彼女たちとって当たり前の日常なのです。こういったエモーショナルレイバー(訳注:感情労働。感情を押し殺して、時には微笑んで行う必要のある業務。接客や看護などが代表的)を女性は四六時中やらなければならないのに、男性は単に、やる必要がない、と女性たちは不平を口にしています。結局、女性たちは、まるで、2つの仕事を兼務しているかのように感じ、疲れ切ってしまうのです。

Q. 「ヴァニティ・フェア」の記事の後、隠されていた乱交パーティの様子を描いたことでテック業界関係者から批判を受けたそうですね。

新たな領域に踏み込んだら、誰かを不快にさせるかもしれないことは認識しています。でも、人に不快感を抱かせることなく、良い変化をもたらすことはできません。こういった話は、誰かが語らなければならないのです。さもなければ、女性蔑視の風潮が永久に続くでしょう。

Q. テック業界の女性の多くと同様に、あなたもツイッターで荒らしを受けましたね。それ以外の被害もありましたか?

確かにジャーナリストとして、自分でも不愉快になるような状況に置かれたことがあります。でも、テック産業の女性たちが、男性よりずっと人数が少ないという理由だけで毎日、1日も欠かさず経験している苦痛の比ではないと思います。ウーバーの女性エンジニアに取材したことがあります。彼女たちは、昼間、ストリップクラブやSMクラブに行こうと誘われたそうです。真っ昼間からですよ! たいてい、皆が行くので、彼女たちも行かざるを得ないそうです。職場に溶け込んで、クールでいるために、そうしなければならなかったのです。

もはやシリコンバレーだけの問題ではない

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Q. シリコンバレーで女性の扱い方が本当に変わる可能性はあると思いますか?

大いに期待を寄せています。なぜなら、私は、素晴らしい事例を知っています。例えば、宇宙探検、海上浮遊コミュニティの建設、セルフドライビングカーなど。世界に変革を起こしたいと願い、それを実際に実現できる人たちです。同じ人たちに別の変革ができないはずはありません。変化はトップから起こす必要があります。CEOたちは「インクルージョン」を重点的に、最優先で取り組むことを明言し、組織全体にその意思を伝え、社員一人ひとりが最優先課題として取り組めるようにすべきです。

Q. この本を、まだ小さな3人の息子さんに捧げていますね。彼らにどんな影響を及ぼすと思いますか?

性差別に関する報道はけっして簡単ではありませんから、物事がうまく進まないことがあります。そんな時は、息子たちの顔を見て、「この仕事は貴方たちの将来のためにやっているの」と考えるようにしています。誰もが平等な世界になれば、息子たちの人生はもっと良くなるはず、と信じています。

さらに重要なことには、シリコンバレーは、私たちが何を見るか、読むか、買い物の仕方、連絡方法、人とのつながり方まで支配しています。だから、これはテック業界だけの問題ではないのです。社会全体の問題です。IT産業には人類全体に対し、おそらくどの産業よりも大きな影響力があります。世界を変えることができたのですから、同様に、この問題に関する態度も変えることができるはずです。

© 2018 The New York Times News Service[原文:How Silicon Valley Came to Be a Land of ‘Bros’/執筆:Pui Wing Tam](翻訳:Ikuko.T)

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