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ミシュラン初の女性調査員エマ。男優位なガストロノミー界で描いた夢

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左:«Le Goût d’Emma», Les Arènes/右:エマニュエル・メゾンヌーヴ ©Pierre Hybre

Les Arènes(レ・ザレヌ)社から出版された漫画『Le Goût d’Emma(エマの味)』が、いまフランスで話題になっています。作画は日本の高浜寛(たかはま かん)。原作はEmmanuelle Maisonneuve(エマニュエル・メゾンヌーヴ)とJulia Pavlowitch(ジュリア・パヴロヴィッチ)の共著によるものです。

日本では、本国フランスでの出版に先立ち、2017年に『エマは星の夢を見る』(講談社)という題で刊行され、すでに1万5000冊の売れ行きを出しています。

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高浜寛©Pierre Hybre

その内容は、権威あるミシュラン赤ガイドブックの初の女性調査員に採用された、主人公エマの物語。

これは原作者の一人エマニュエル・メゾンヌーヴについての実話です。現在41歳のエマニュエルは、30歳そこそこの頃、経験も後ろ盾もないままミシュラン社の門を叩き、子どもの頃の夢をかなえる職につきました。女性シェフも珍しくなくなってきた昨今とはいえ、いまだに男性優位が目立つフレンチ・ガストロノミー界。そこに足を踏み入れ、奮闘しながらも、多くを学び、自分なりの哲学を拓いていく様子が描かれます。

ミシュラン調査員という仕事

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«Le Goût d’Emma», Les Arènes

ミシュランの調査員ときくと、おいしい料理を食べて、ホテルに泊まるのが仕事なんて最高!と思うむきもあるかもしれませんが、実際は良いところばかりではありません。まず、移動だらけの毎日。自宅で寛げることはほぼ皆無。そういう意味では、家庭を築くのも難しい職業です。

また、鋭い観察眼と味覚を要求されるのはもちろん、それを言葉にする表現力も必要となります。メモを取ることは許されていませんから、味はもとより、内装から、雰囲気、値段まですべてを記憶する必要があり、当然ストレスも少なくありません。ChEEk誌のインタビューを受けて、エマは料理を評価するこつと難しさについて、次のように説明しています。

味覚は、多くの味を口にし、食べるのを喜びとすることで学ぶことができます。訓練で磨くことができるものです。料理を分析し、味や焼き加減を別々に評価できなくてはなりません。(中略)そうして、特に大切なのは、美味しいものと、自分が好きなものとを区別することです。フォアグラが嫌いだとしても、ちゃんと味わい、どう調理されているか、スパイスの量はふさわしいか、アルコールが使われすぎていないか、焼き加減はどうか、などを判断できなければなりません。

ChEEk MAGAZINE」より翻訳引用

また、エマによれば、調査員の仕事の醍醐味が味わえるのは、ここぞと思う施設に星を付与するとき

評価する側も、レストラン側も、お互いにプロフェッショナリスムを認め合い、非常な喜びを感じる経験です。

ChEEk MAGAZINE」より翻訳引用

男優位なガストロノミー界での奮闘

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«Le Goût d’Emma», Les Arènes

典型的な調査員のイメージとは到底重ならないエマでしたが、ミシュランの調査員チームは、暖かく迎えたといいます。難しかったのは、むしろ調査に出向いた先の、レストランやホテル側だったそうです。

若い女性に自分の仕事を評価されることを、受け入れがたいとする人もいました。ミシュランに抗議の電話をかけた人もいたくらいです。

ChEEk MAGAZINE」より翻訳引用

それでも上に書いたように、女性のシェフは少数派とはいえ増えてきましたし、小さなレストランを経営する女性も増えてきたとエマはいいます。

次なる課題は、女性が上のポストに就くことでしょう。まだまだ階級的には男性優位ですから。

ChEEk MAGAZINE」より翻訳引用

日本料理に対するエマの評価

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«Le Goût d’Emma», Les Arènes

私は日本語版を未見ですが、フランス語版の漫画を読んでいると、レストランのインテリアや雰囲気、料理の描写、味の表現の的確さと幅の広さに感心せずにはいられません。

エマが初めて日本を訪れた場面では、精進料理の繊細な味と香りをくまなく感じとっているエマの感想が読めます。ChEEk誌のインタビューでも、エマは日本文化への賛辞を惜しみません。

(日本では)材料は、変化させるはなく、純化させるものなのです。(食材を)選ぶ、下ごしらえをする、切る、火を通す、そうしてふさわしいだけ味付けをする、という一連のノウハウなのです。余分なものは何もない。調和の問題なのです。私は、どんな料理も好きですが、日本料理には、とりわけ惹きつけられます。というのも、日本料理は、物事の神髄に向かうものだからです。

ChEEk MAGAZINE」より翻訳引用

最初は小説の形で本の出版を考えていたエマと共著者のジュリアが、最終的には漫画の形式を選択したのも、日本文化をエマが高く評価していることと無関係ではないようです。

エマのオリーブオイル

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«Le Goût d’Emma», Les Arènes

ミシュラン調査員の仕事を辞した現在、エマは、自分の名前を付けたオリーブオイルの製造販売に乗り出しています。

フランス南西部のロット県の朝市でポルトガルの製造業者に知り合ったんです。彼の土地に招かれて味わったオイルは、信じられないものでした。オイルというより、オリーブ・ジュース。熟しきってから収穫されているので、しっかりした味なのに苦くないんです。

ChEEk MAGAZINE」より翻訳引用

素材にこだわり、完璧さを求めるエマの姿勢は、ミシュラン調査員としてフランス全国を駆け巡る間に、熟成されたもののように思えます。

特異な仕事を通して、自己の価値観を確立していったエマの物語。漫画を読んで追体験する価値、大いにあり、というのが私の感想です。

Les Arènes, Le Goût d’Emma , ChEEk MAGAZINE

冠ゆき

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