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キャリアウーマンの大先輩、80代のプログラマーが伝えたいこと [MASHING UP]

MASHING UP/マッシングアップ

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2018年2月22〜23日にトランクホテルで開催されたビジネスカンファレンス「MASHING UP」。Unleash Yourself (自分自身を解き放とう)のテーマの下、多彩なセッションやワークショップが繰り広げられました。カフェグローブはイベントに密着取材、パワフルな現場の様子をレポートします!

「世界最高齢の」と聞けば、誰もがその名を思い浮かべるほど、活躍ぶりに注目が集まるプログラマーの若宮正子さん。2日に渡る今回のイベントで、これほど熱く、これほど敬愛に満ちたセッションはなかったのではないでしょうか。「82歳の日本人プログラマーの次なる挑戦」と題されたセッションを聴きに、会場には入りきれないほどの多くの人が集まりました。

世界一有名な80代。マーチャンの人生とは

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私は“プロ”じゃないからと、プログラマーならぬ「アマグラマー」を自称する若宮さん。正子さんのお名前から「マーチャン」と呼んでほしいとのことで、パナソニック株式会社のエンタープライズマーケティング本部 本部長・山口有希子さんを聞き役に、トークが繰り広げられていきました。

1935年東京生まれの「マーチャン」はこの4月で83歳。「口が達者で意思が強固、育てにくい子どもだったはず」と、自身の幼少期を振り返ります。戦時下、小学校3年生で学童疎開を経験。疎開先の長野から、お父様の転勤先であった兵庫県へ移り、4年生のときに終戦して帰京。中学・高校を経て、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に就職して定年まで勤めあげ、現在まで独身を貫いています。

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若宮正子さん(マーチャン)

定年退職後は、お母様が100歳で亡くなるまで介護を続けました。「不良介護人でしたけどね」と笑う若宮さんですが、お母様の認知症が進んで会話もままならず、壁を相手に話すわけにもいかない……と始めたのがパソコンを使ったチャットでした。

「当時、“パソコン”はまだ高かったですけど、いずれ退職金がもらえるならと思い切って買っていたんです。そのたったひとつの買い物が、私の人生を変えちゃったの。ネット上のシニアグループに入っておしゃべりに夢中になりました。まだインターネットがない時代で、チャットも文字だけのものでしたけど、それまで銀行という狭い世界しか知らなかったから、全国にいろんな意見を持つ方がいて楽しかったんです」

ティム・クック氏に直談判。日本語でまくしたてた!

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パナソニック株式会社 エンタープライズマーケティング本部 本部長・山口有希子さん

好奇心旺盛な若宮さんの興味がチャットにとどまるわけはなく、その楽しみをハイシニアへ広めるための活動もおこなうことに。そんななか、若いプログラマーにシニア向けのゲーム開発を依頼したときに「僕ではシニアが好きなことがわからないから、自分で作ってみたらどうですか?」と言われたのがコトのはじまり。2017年にシニア向けゲームアプリ「hinadan」をリリースします。

「『若宮さん、よくプログラミングなんてやる勇気がありますね』って言われるんですけど、興味があるのにやらないほうが不思議なの。81歳でスキューバダイビングでもやろうっていうなら決死の覚悟をしないとできないけど、パソコンはうちにあるし、開発ソフトは無料でダウンロードできるし、誰にも怒られないしね」

簡単に言ってのける若宮さんでも、実際は苦労の連続でした。それでも「大変だったということを知ることも、経験であり、冒険」だと語ります。

「はじめは本で勉強しましたが、内容はわかっても自分の思い通りにつくるのは大変。英語で『Nice to meet you.』は言えるけど、その先の会話が続かない感じ。それにプログラミングはすべて英語でしょ。エラーメッセージもアップル社への問い合わせも英語。戦時中、カタカナ言葉を口にするだけで憲兵さんが飛んでくる時代に育った私たち世代は、英語ってだけでアレルギー反応ですよ(笑)」

Google翻訳を駆使してなんとかアップル社とやりとりを交わし、公認のアプリとしてリリースされることが決定。CNNが「81歳の日本人女性がゲームアプリを開発した」と報じたことで、情報は世界中に拡散。当然、アップル社のCEOティム・クック氏の耳にも入り……

「旅行の予定があったんですけど、変更してアメリカまで会いに行きましたよ。だってどうしても会いたいっていうんだもん。一番えらい人に言わないで誰に言うのよって、通訳を呼んで日本語でまくしたてました。『年をとると目も見えないし耳も聞こえないし、指だって動かないのよ』ってね(笑)」

「やってみて、ダメだったらやめればいい。それだけ」

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国内外でその名を知らしめた若宮さんには、書籍執筆や取材の依頼が絶えません。しかしひとつ困ったことが。それは若宮さんの活動を「涙の苦労話」にされてしまうこと。

「新聞や雑誌の見出しには『つらい介護をなぐさめてくれたパソコン』とか『プログラマーを目指して汗と涙の物語』っていうインパクトがないとダメみたい。パソコンに夢中になって母におやつをあげるのを忘れるぐらいの不良介護人だったし、自由な“風見鶏”みたいな生き方なんだけど、それじゃ記事にならないみたいね(笑)」

テクノロジーにまつわる講演会で話をしても、最後の質疑応答では、食べているものや1日の過ごし方といった健康の質問ばかりになって、「ガクッときちゃう」のだそうです。このセッションの最後に「これから挑戦したいこと」を問われると、「何か思いついたらすぐ行動に起こすので、『挑戦』なんて、今は手持ちがない」とのこと。

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「みなさんにひとこと言わせていただけるなら、もしも頭に鉄の輪っかがハマっていたら、ときどき外してみてください。そして思いついたことはやってみて、ダメだったらやめればいい。それだけです」

自分にはできない、向いていないと思い込まず、興味を持ったことには手を出さなければもったいない。そして、目標のために必死になって自分を社会にチューニングし続けるだけでなく、今の瞬間を充実させることにも目を向けるべきというメッセージをもらったような気がしました。

セッションが終わり、階段を降りて退場する若宮さんの手をとろうと会場スタッフが駆け寄ると、その手を大きくはねのけるように拒否。「年寄り扱いするな」と言わんばかりのマーチャンに、より一層の拍手が向けられたのでした。

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82歳の日本人プログラマーの次なる挑戦

MASHING UP 2018年2月23日 16:55〜17:40 @トランクホテル 2F /若宮正子、山口有希子(パナソニック株式会社

撮影/YUKO CHIBA、取材・文/大森りえ

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