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今なぜ金正恩氏がK-POPを歓迎するのか。NYTimesが分析 [The New York Times]

The New York Times

北朝鮮の最高指導者・金正恩氏が、妻の李雪主氏とともにK-POPに酔いしれた——。2018年4月1日、北朝鮮・平壌で韓国芸術団の公演が開かれたのは記憶に新しい。なぜ今、南北の融和ムードが高まっているのか。金正恩氏の狙いは何か。(以下、2018年3月30日付ニューヨーク・タイムズ記事の抄訳。時制は記事掲載時のもの)

* * *

韓国の人気グループ「Red Velvet」が出演

キラキラしたミニスカートに、へそ出しトップス——きらびやかな衣装に身を包んでステージの上を元気に跳ねまわる韓国の人気5人組グループ「Red Velvet(レッド・ベルベット)」が、ヒット曲「Red Flavor」を熱唱した。

2018年3月29日木曜の夜に東京のアリーナで行われたコンサートには、10,000名のファンが集まった。ロングヘアをかきあげながら、日本語の歌を優しく歌うメンバーたち。観客は、ヒップホップのリズムに合わせて鮮やかなピンクのペンライトを振っていた。しかし、平壌でも同じようなコンサートが実現するのだろうか?

閉鎖的な北朝鮮がK-POPを受け入れた

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訪朝コンサートでパフォーマンスをする「Red Velvet」のメンバーたち (Photo by Korea Pool/Getty Images)

3月31日の土曜日、「Red Velvet」のメンバーは、他の10名の韓国人アーティストらとともに訪朝する。文化外交キャンペーンの一環として、K-POPのコンサートを行うためだ。

北朝鮮は、世界で稀に見る閉鎖的な国だ。その北朝鮮が、世界に向けて戦略的に門戸を開こうとしているということは、非核化にも前向きであることを示唆すると考えられており、今回の文化外交もその新たな兆候だといえる。

金正恩は3月下旬、中国の指導者習近平に会うため電撃訪中したことで国際社会を驚かせた。また、3月初めにもドナルド・トランプ米大統領に対し、会談を要請する大胆不敵な申し出をしていた。さらに、4月27日には文在寅大統領と南北首脳会談を行うことも正式に決定した。

これらのイベントを前にして、北朝鮮はK-POPスターを迎えることになる。韓国のアーティストが訪朝するのは、じつに10年以上ぶりだ。

非武装地帯でK-POPを大音量で流していた韓国軍

今回のK-POPスターの訪朝は、衝撃的な出来事だ。なぜなら、これまで韓国軍は、K-POPを心理戦にも用いてきたからだ。南北を分断する非武装地帯(DMZ)では、拡声器からK-POPが大音量で流された。脱北者が韓国に逃げようと決意したきっかけがK-POPだったことでも知られている。

それにしても、これは奇妙だ。閉鎖的な北朝鮮政府は、これまで自国民を“堕落した資本主義”から何とかして遠ざけようとしてきたのに、今やK-POPスターを大歓迎している。

"Red Flavor" by Red Velvet. Video by SMTOWN

観客のほとんどを10代の女の子が占めていた「Red Velvet」の東京コンサートは、あからさまに消費主義を連想させる演出のオンパレードだった。パジャマ・パーティ中のメンバーが、部屋中にポップコーンを散らかしたり、風車模様のロリポップ・キャンディを舐めたりしていた。また別のシーンでは、キャンディ・カラーのガウンに身を包んだメンバーが、ネイルサロンのようなデザインの椅子の上でくるくると回っていた。

「微笑み外交の一環」という専門家の指摘

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訪朝のために韓国を出発する「Red Velvet」のメンバーたち (Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images)

『North Korea’s Hidden Revolution(北朝鮮の隠された革命)』の著者で、オックスフォード大学公共政策学の博士課程在籍中のジウン・ベック氏は、北朝鮮政府の今回の対応について「微笑み外交の一環。北朝鮮が実際は普通の国であるように見せるため」と解説した。

2000年代初めにも、K-POPスターが平壌を訪れたことは何度かあった。東亜大学校で北朝鮮文化・政治学を教えるカン・ドン・ワン教授は、当時の北朝鮮の観客の反応について「顔をしかめるか、無表情だった。おそらくネガティブな反応をするように指示されていたのではないか」と振り返った。

核開発成功のプロパガンダ?

しかし、今や北朝鮮の核開発技術は著しく進歩した。今回のK-POPスターの訪朝についても、おそらく北朝鮮政府は“核開発の成果”として宣伝するのではないだろうか。

かつて心理戦に携わっていた元韓国軍のシム・ジン・スプ氏は「プロパガンダでは、“我々が核兵器の開発に成功したので、K-POPスターがお祝いにやってきた”と説明するのでは」と予想した。

アナリストの予想では、アーティストたちはいつもとは違う、入念に吟味されたパフォーマンスを行う可能性が高いという。戦略国際問題研究所パシフィック・フォーラムの朝鮮研究を行うダルシー・ドラウト氏は「衣装から振り付けまで、全ての要素が文化外交の一部になるだろう」と語った。

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2018年4月1、3日の北朝鮮公演に向けて韓国を出発する韓国芸術団。(Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images)

3月30日金曜日、芸能事務所ミスティック・エンターテイメントでは、今回の訪朝ツアーに参加したR&B歌手チョイ・ジュン・インのインタビューが行われた。チョイは、5年前のヒット曲「Uphill Road」を歌うよう、韓国政府高官から頼まれていたことを明かした。「観客を慰め、心を打つ曲だから」というのがその理由だったという。

しかし、チョイは北朝鮮の観客の反応についてはそこまで深く考えていないと話す。「プロパガンダのための音楽と、純粋に楽しむための音楽との間に違いなんてない」

今回の訪朝にプロパガンダがかなり絡んでくることは、間違いない。韓国ニュースメディアによると、北朝鮮のバラード曲や南北の平和と統一を願う歌詞の曲を演奏する予定のK-POPスターもいるという。

観客として集められるのは、おそらく北朝鮮のエリートや忠誠心の強い幹部などだろう。このような人々が、たった10数名のK-POPスターの影響で急にイデオロギーを変更する可能性は低いと考えられる。

© 2018 The New York Times News Service[原文:Can North Korea Handle a K-Pop Invasion? /執筆:Motoko Rich and Su-Hyun Lee](抄訳:吉野潤子)

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