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『LEAN IN』から5年。女性をめぐる職場環境と意識はどう変わったか [The New York Times]

The New York Times

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サニー・ベイツ・アソシエイツのサニー・ベイツCEO。娘のローラ・ベイツ・キャンベルとニューヨークの自宅で。(Jeenah Moon/The New York Times)

フェイスブックの最高執行責任者(COO)のシェリル・サンドバーグが、女性たちが男性優位の職場で成功するには何をする必要があるのかをまとめた書籍『LEAN IN (リーン・イン): 女性、仕事、リーダーへの意欲』を出版して、2018年3月で丸5年。このマニフェストはカルチャー現象にもなり、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに1年以上ランクイン、売り上げは世界中で420万部にも上っている(書籍・電子版などを合わせていまだに1か月に約1万2500部は売れている)。

女性たちが気おくれずに主張できるようになった

サンドバーグはタイム誌とフォーチュン誌の表紙を飾り、テレビ番組「60 Minutes」「Nightline」などにも出演。『Lean In』に関する勉強会も生まれ、女性たちは定期的に集まってこの本に書かれている考え方について議論している。LeanIn.orgの代表を務めるレイチェル・トーマスは、そうした勉強会は「女性たちが気おくれせずに意欲的になれる数少ない場所のひとつなんです」と話す。

読者や勉強会の参加者にとって、『LEAN IN 』は強力なメンターであり続け、そうした女性たちがキャリアを築く一助になってきた。男女を問わず企業の経営陣からも、ここ数年、特に若い従業員の態度の変化に気づいたと指摘する声が上がっている。「5~6年前だったら、若い就職希望者は提示された最初の条件を受け入れていました」と話すのは、ハースト・パブリッシングの人事部タレントアクイジション部門の元副部長、エリオット・カプランだ。「あれから90%の人が交渉を要求するようになりました。給与額、休暇日数、責任の範囲などについて。中には、『シェリル・サンドバーグが、こういうことは自分でやらなくてはいけないと言ってますから』と主張する人もいます」

「経済的に豊かな一部の特権」という声も

一方、同書は前提としている内容もアドバイスも単純すぎる、家族や年老いた親といった現実(実際には家族や親の面倒を見る責任はいまだに女性にのしかかっている)を無視した欠陥だらけのマニフェストだと批判する意見もある。

「企業で働く全女性の代弁は私にはできないけど、著者(サンドバーグ)は経済的に一度も困ったことがないか、自分の仕事や収入について心底不安を抱いた経験がないのだと思う」と主張するのは、経営コンサルタントで、企業文化に関するドラマを描いた最新小説『This Could Hurt』を上梓したジリアン・メドフだ。「秘書、中間管理職、アシスタント、壁に突き当たっている人たちはLean In(一歩踏み出すこと)なんてできない。お金の問題や声を上げることについてものすごく不安があるからです」

この本に大勢の女性読者(そして一人の著者)はどのような影響を受けたのか、また、自分がいる職場の文化をどのように変える試みを行ってきたのか、5年後の今、さまざまな立場の女性たちに話を聞いてみた。

まだまだ課題はたくさん残っている

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フェイスブックのシェリル・サンドバーグCOO。(Todd Heisler/The New York Times)

シェリル・サンドバーグ(48歳)/フェイスブックCOO(最高執行責任者)で、『LEAN IN 』の著者(ネル・スコヴェルとの共著)でLeanIn.orgの創設者

「出版5周年を祝うかどうかですか? まさか(笑)。そんなこと思いもしなかった。私がずっと望んできたのは平等です。男女平等の同一賃金、家庭では同等の責任。現実のものになるには5年間はまだ短い。実現にはとても長い時間がかかることもあるでしょう。でも私は希望を抱いていて、楽観もしています。それにはたくさん理由があります。2018年には、これまで以上に多くの女性たちが公職に就こうと名乗りを挙げています。#MeToo運動も、真の平等に前進するための一助になっていますよね。

一方で、とても懸念していることもあります。情報のアクセスについてたくさん書いてきましたけど、サーベイモンキー(サンドバーグの夫、故デイブ・ゴールドバーグがCEOを務めていた大手インターネットリサーチ企業)の調査によると、今は、男性幹部が下の立場にいる女性と男性社員のどちらをビジネスディナーに誘うかというときに、女性の部下は呼びたくないと答えた割合が男性の部下より3.5倍高く、出張となると5倍という結果が出ています。女性も、男性と同じように情報にアクセスし、メンターを得る資格があります。だから、これは大いに懸念すべきことだと思っています。やらなくてはいけない課題はまだまだたくさんあります」

リーダーシップという問題に悩むのは自分一人ではないとわかった

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米軍艦「マンチェスター」の原子力エンジニア兼艦長のエミリー・バセット。(Meggan Haller/The New York Times)

エミリー・バセット(40歳)/米軍艦「マンチェスター」の原子力エンジニア兼艦長

「この5年間を振り返ると、Lean In運動で自分のキャリアが定まったと思っています。自信の大半は、この運動で身に付けました。5年前、子どもは1歳と3歳。私は別の軍艦の副艦長になり、440人の海軍兵を率いていました。夫と互いのキャリアと子育てをやりくりしながら。私は人脈とキャリアを築きたいと必死でしたけど、問題は、自分がどうやってリーダーになればいいのかわからないことでした。

そんなとき、友人にこの本を読むように勧められたんです。変曲点ってわかります? 曲線が曲がる方向が変わるところのことを言うんですけど、まさにターニングポイント。私にとっては『LEAN IN』がそうでした。

LeanIn.orgのサイトを覗くと、リーダーシップに関してやるべき貴重な情報がたくさん載っています。フィードバックする、交渉する、ボディーランゲージを駆使する、そういったありとあらゆることが。私はプロとしていくつか失敗を犯していましたが、この本を読んでわかったことのひとつは、リーダーシップという問題に関して悩むのは自分一人ではないということです。私たちは自分の頭の中で時々迷ってしまう。でも、同じ問題を抱えている人は常に他にもいることがわかります。

軍の中でも4つのLean Inの勉強会を共同で立ち上げました。そのうちの2つは男女混合。どれも素晴らしい会です。私のグループは艦内にはありません。指揮系統を超えた自由が欲しかったから。皆、自由に参加しては抜けて行きますが、勉強会の長所は、自分の支えとなるものを得られるところです。クッキーのデコレーションコンテストではなく、グループセラピーでもない。専門的な能力を開発することなんです」

自分の人生を生きるための戦略を学んだ

アリックス・ローソン(27歳)/ワシントンにある民間非営利団体フリーダムハウスのシニアプログラムアソシエイト

「2016年に大学院(ジョージタウン大学外交政策大学院)を卒業した直後に母が1冊くれたんですが、そのときは読む気になれなくて。どうせ、どっちつかずな内容で、説教くさくて、特定の読者向けなんでしょう? これ読んで人生がすっかり変わったって、結構なことだよね。でもこういう情報を読んでも、自分にはどうすればいいかわからないなって。よくある話の焼き直しなんだろうと思ったんです。でも違いました。すごく気に入ったのは、サンドバーグが犠牲者ぶらずに女性たちに伝えているところです。強い女性であり続けながらなすべきことを実現する、自分が持っているプロ意識は犠牲にしなくてもいい。そのことについての教訓が書かれていました。

私が得たのは、私生活も含めて自分の人生を生きるための戦略です。例えば、祖母は『本物の男なら割り勘にはしない』って言うんです。私はデートでは割り勘にする方が気が楽。誰かにおごってもらうと常に貸しを作っている気になって、そういうのは好きじゃない。完全にシェアするというサンドバーグのアイデアは気に入りました。自分の感じ方にもしっくりきます。彼女はこう言っています。ジェンダーの歴史をそのまま繰り返して、未来に起きること、自分の未来まで決定させないでと。

それからサンドバーグは、歴史を振り返ってみると、女性が意欲的であること、偉そうな態度を取ることは女性にとってはよくないとされてきたことについても、たくさん話をしています。でも、女性が意欲的であることは全然悪いことではないのだと。私は今、プログラムアソシエイトですが、上を目指して頑張っているところです。10年後にはマネジャーになりたいですが、それだけではなく、自分でNGOを運営したいと思っています」

子どもが議場に入れるように上院の規則を変えた

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ミネソタ州選出のエイミー・クロブチャー上院議員。米議会で。(Erin Schaff /The New York Times)

エイミー・クロブチャー(57歳)/ミネソタ州選出の上院議員

「10年前、女性の上院議員は16人で、彼女たちはスイート16と呼ばれていました。今は22人。すごく増えたようには思えないし、実際多くはありません。でも、この国の歴史全体でみると、上院議員経験がある全女性のほぼ半分。それだけの数が今いるということは、劇的な変化とも言えます。つまり、リーダーシップを取る立場にいる女性が劇的に増えてきているということなのです。この5年間、予算委員会、農業委員会、歳出委員会、保健委員会、環境委員会・・・・・・いずれも女性が委員長を務めてきました(私は議事運営委員会の委員)。男性は退任したり選ばれなかったり。こうした動きは大きな変化です。

さらに私たちは上院規則にも変革を起こしています。例えば、タミー・ダックワース議員は50歳で2人目の子どもを持つことになりますので、採決が深夜に及ぶ場合は赤ちゃんを連れて来てもいいようにいくつか規則を変えようとしています。子どもたちも議場に入れるように。それから、セクハラに関する指針も可決しました。これによって上院議員と職員は皆、研修を受けなくてはならなくなりました。セクハラを受けた場合、報告しやすいように規則も変えました。

下院でも、セクハラで告発された場合は個人的に責任を取らなければいけないというルールが認められました。要するに、#MeToo運動やLean Inによって、実際に大きな変化が生まれてきているわけです。それが、Lean In運動で私が最も評価していることの一つです。目的を達成するかどうかという問題だけではなく、自分も当事者として、実際に影響を与えるかどうなのです」

恋愛・結婚相手には協力的なパートナーを選ぶことの大切さを学んだ

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マネジメントコンサルタント企業サニー・ベイツ・アソシエイツのサニー・ベイツCEO。(Jeenah Moon/The New York Times)

サニー・ベイツ(62歳)/マネジメントコンサルタント企業サニー・ベイツ・アソシエイツのCEO

「5年ほど前、『女性とリーダーシップ』に関する勉強会に参加していたときにブルームバーグのピーター・グラウアー会長に言われたんです。『サニー、これは実に重要なことだよ。だけど今はこの問題に取り組む余裕が自分にはない』って。これはLean In運動の大きな変化のひとつだと思うのですが、今ではその余裕が広がってきていると思います(ブルームバーグの広報担当者は、グラウアー会長はベイツとそんな会話をした覚えはないと述べているが、グラウアーは大手企業が名を連ねるS&P100社の幹部の女性比率を2020年までに最低でも30%に引き上げることを目標に掲げた「30%クラブ」の米国版を2014年に設立している)。

シェリル・サンドバーグがやったと思う重要なことは、まず、女性たちに、会社組織でおかしなところについて疑問を持たせ、自問させたことです。どうして自分を抑えているんだろうかと。職場という組織の変化は重要です。自分を抑えていたら何も変わりません。多くの人は、サンドバーグは女性たちに自分を責めるよう仕向けていると受け取っていましたが、それは全然違います(サンドバーグは男性のLean Inについても取り上げている)。

彼女の書いたことでパワフルなのは、彼女自身が誠実であること。恵まれた立場にいるからと言って彼女をけなすのは簡単です。彼女自身は謙虚で内省型の人。問題が起きたときはどんなことでも、この問題に対する自分の役割は何なのか、彼女は常に自分に問いかけています。それは彼女が私たちに教えてくれたことでもあります。皆が認識しながらどうやって話し合えばいいかわからない職場の問題を言語化してくれました。Lean Inするためのアイデアはとても有用です。

例えば、自分が仕事で排除されている気がする、話し合いやプロジェクトに入れてくれない人がいるというときは居心地の悪い思いをして、深刻にとらえずに放っておこうという気持ちになりがちです。でもそういうときこそ、Lean Inするときなのです。

シェリルは、私たちが皆、どのようにして不安を味わいながら成長してきたかについても明確に示しています。親の立場で考えてみると、私の娘が今より小さい頃は、言い争いになると、全寮制の学校に入れてしまおうかと考えたこともよくありました。あのとき、もしそれぞれが自分の部屋に閉じこもってドアを閉ざしていたら、何も起きなかったはず。そういうときこそ私は争いの状態に入り込んで、もっと話し合うようにしました。それがどんなに大変でも。問題が解決したのはそういうときでした。

それから、彼女が正しかったこと。この部分の主張で彼女は強く批判されたかもしれませんが。それは、パートナー選びについてです。パートナーは協力的で、時間の50%は家庭の問題に参加する人であること。彼女は自分の人生のこの部分については慎重に考えたのだと思います。多くの人がこの問題で彼女を責めたのは、恋愛関係についてそこまで戦略的でいる考えに落ち着かないからでしょう。でも実際は、ひどい結婚生活を送っていると、仕事が絶好の避難所のようになります。私は夫中心に全てが回る生活を送っていて、結婚生活が全然うまくいってませんでした。私のキャリアが軌道に乗ったのは離婚してからです。

面白いことに私が自分の年で満足していること、取締会、経営者、管理職に女性が数人いるという状況は、ミレニアル世代の私の娘たちにとっては不十分なんですよね。この問題について話し合うと、娘たちは『冗談だよね?』って言うんです。役員の少なくとも50%は女性じゃなきゃダメだよって。確かに娘たちは間違ってはいません」

子どもができても従業員が辞めなくなった

アラン・スクラー(51)/弁護士事務所スクラー・ローグループの設立者

「人を雇うようになっておよそ25年になりますが、昔は子どもに関する問題がたくさんありました。子どもができたら辞める、勤務時間をフレキシブルにするなど。それがここ5年でガラッと変わりました。みんながLean inするようになったのです。

完全に退職しないようになりました。私も雇用者としてLean inしています。うちには若い弁護士が1人いますが、週2日は在宅ですし、勤務中は皆、熱心です。子どもが生まれたばかりのオフィスマネジャーは家で過ごす時間を増やしたいと希望し、大半の仕事をリモートで行っています。

お金を払ってヘルプしてくれる人に来てもらったりパートナーがいたりすると、自宅にいるときの方がもっと集中できるみたいですね。私が人を雇うときに求めるのは価値です。何人かの従業員に要求され、いろいろな形態の職場環境ができてくると、従業員もハッピーだし私もハッピーだということに気づきました。私が得ている価値とは、そういうものです」

© 2018 The New York Times News Service[原文:‘Lean In’: Five Years Later / 執筆:Judith Newman](抄訳:M. Nagao)

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