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フラットシューズで歌い続ける。初代ワンダーウーマンの今 [The New York Times]

The New York Times

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Justin T. Gellerson/The New York Times

メリーランド州ポトマック──2018年3月10日金曜日の夜、10名のスタジオ・ミュージシャンたち(ほとんどがテネシー州ナッシュビルからやってきた)がリビング・ルームに所狭しと集まり、楽器を調整しながらリンダ・カーターの到着を待っていた。カーターは、1970年代のテレビシリーズ『ワンダーウーマン』の初代ワンダーウーマン役で最もよく知られている女優だ。

その数分後、カーターが部屋に入ってきて、遅刻を謝った。つい先ほどまで、民主党所属の下院議長ナンシー・ペロシとその夫ポールと電話していたのだという。「新アルバムのお祝いを言うために、電話をかけてくれたの。ペロシ夫妻は、今回私たちと一緒にいられなくて残念だと言っていたわ」

紺のブレザーに黒いパンツ、スリッポンで登場

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Justin T. Gellerson/The New York Times

66歳になったカーターのファッションは、レオタードに赤いロングブーツ、金色のカフス……ではなく、紺のブレザーに黒いパンツ、スリッポンタイプのスニーカーだった。高い位置で作ったポニーテールというヘアスタイルで、耳元にはダイアモンドが輝いていた。

女優と歌手に転身したかつてのミスコン女王は、ワシントン郊外にある裕福なこの街で30年以上にわたってグラマラスな魅力を振りまいてきた。翌日夜には、カーターと彼女のバンドはケネディセンターでコンサートを行うことになっていた。それを皮切りに、4番目のアルバム『Red Rock n’ Blues』のリリース記念ツアーとして、ロサンゼルス、ニューヨーク、ナッシュビルでもコンサートを行う。

このアルバムのタイトルについては、「ある種愛国的でもあり、そしてある種の……まあ、“私たちは今でもここにいるし、これからもどこにもいかないわよ”みたいな感じかしら」と中指をつき立てながら笑顔で語った。

この“私たち”とは、他でもない女性のことだ。#MeToo運動の高まりとリメイク版『ワンダーウーマン』の大ヒットの時期が重なったことで、カーターもエンターテインメント業界で自身が体験したことを振り返らざるを得なくなった。カーターは1984年にロバート・A・アルトマンと結婚したが、仕事を始めたばかりの事に受けた性的虐待については、最近になって初めて夫に打ち明けたという。加害者の名前については公にしたくないと語るカーター。

「自分だけの事にしたくなかったというのが、大きな理由ね。それよりも、“他の女性たちを助けるためには何と言えばいいだろう?”と思ったの」

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Justin T. Gellerson/The New York Times

新アルバムには、家族への感謝の気持ちが込められている。夫のアルトマンのために書いたカントリー調のラブソングもある。アルトマンは元弁護士で、現在はゼニマックスというゲーム会社の会長兼CEOだ。

「Change Just a Little」というバラードは、息子のジェームズ・アルトマン(30歳)に捧げた曲。娘のジェシカ・アルトマン(27歳)とは「Everly Brothers」の2曲をデュエット。ケネディ・センターのコンサート「Somethin’ Bad」を2人で熱唱した。ちなみに、子どもたちは2人とも弁護士だという。

「母からアルバムに参加してほしいと頼まれた時は、即答したわ」と語るジェシカは、リハーサル中、床に座りながら『ワンダーウーマン』のマグカップに入ったお茶を飲んでいた。

歌手を目指して10代で家を飛び出したカーター

『ワンダーウーマン』のダイアナ・プリンスのイメージが強いためか、多くのファンは、カーターが女優のオーディションを受けるはるか昔から歌手だったことを知らない。彼女は14歳の頃、アリゾナ州ウィンズローで叔父が経営しているレストランに行き、夜にバンドボーカルの仕事をすれば50ドル稼げると知った。優等生であった彼女は、アリゾナ州立大学の奨学金受給資格を得ていたにもかかわらず、歌手という仕事の魅力に抗うことができなかった。2回に1回は貯金のために給料支払小切手を送ることを父親に約束して、家を飛び出した。

「かつて、夫が私の母親に“いったいなぜ、17歳の女の子をミュージシャン集団のツアーなんかに行かせたんですか?”と聞いたことがあったの。すると母は、“ちょっと待って。あなた、リンダがやろうと思ったことを阻止しようと説得したことがあるの?”と言ったわ」カーターはこう語った。

様々なバンドの全米ツアーに参加しながら、カータージャズ・ミュージシャンたちから音楽論を学んだ。彼女が思い出すのは、中西部のどこかの店で、20代の女性ラウンジ・シンガーがステージに立っていた姿だ。それを見て、彼女は突然ひらめいたという。「翌朝目を覚ました時、涙が止まらなかった。“あれこそが、私の10年後の姿だ”と思ったの」

ミスコンの女王を経て音楽業界に舞い戻り、演技の世界へ

その後カーターは、地元のモデル・エージェンシーと契約した。身長175センチ、ダークカラーのロングヘアに、美しい青い瞳の持ち主。わずか1か月間で、彼女はミス・フェニックス、ミス・アリゾナ、ミス・ワールド・USAの座を獲得した。カーターの母親は誇らしげだったが、彼女はミスコンに関することすべてがくだらないと気づいたのだという。

「当時の世の中を思い浮かべてみて。ウーマン・リブ! ブラを燃やせ! グロリア・ステイネム!(訳注:ラディカル・フェミニズム活動家の名前)そういう時代だったのよ」

その後彼女は音楽業界に戻り、英国のレコード会社EMIで何曲かレコーディングを行った。その後ロサンゼルスに移り、有名指導者チャールズ・コンラッドのもとで演技レッスンを受けた。

ミス・ワールド・USAの王冠のおかげで女優の道への扉が開かれたわけだが、カーターは女優に割り当てられる役の幅が狭いことに失望していた。彼女が掴んだのは、テレビ映画にチョイ役で登場する“かわい子ちゃん”の役だったという。しかし、その役のおかげで全米映画俳優組合に入ることができた。ジャズライブやCMソングの歌手といった副業も並行しつつ、生計を立てていたのだそうだ。

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Justin T. Gellerson/The New York Times

そしてついに1975年、『ワンダーウーマン』の成功で、カーターは一躍有名人に。国際的なセックス・シンボルとしても取り上げられるようになった。同ドラマがシーズン3で終了する頃には、カーターは化粧品ブランドのメイベリンの顔としても活躍するまでになっていた。「『ワンダーウーマン』は、当時の上層部が思っていたよりも成功した。沢山のファンレターをもらっていたわ」

現夫アルトマンとの運命の出会い。すべてを捨ててワシントンへ

タレント・エージェントだった元夫ロン・サミュエルズとの結婚生活を含む時期についてカーターは“人生の不幸な章”と呼んでいるが、その後1982年にアルトマンと出会った。ある日、彼女の功績をたたえるメイベリン主催の夕食会がテネシー州メンフィスで開催された。そして、当時メイベリンの親会社だったシェリング・プラウの契約していた法律事務所で働いていたのが、現夫のアルトマンだった。2人の関係が真剣交際に発展すると、カーターはまったくためらうことなくロサンゼルスを去り、アルトマンが住んでいたワシントンに引っ越したという。

その後、彼女が歌手として再びステージに立ったのは、2005年のことだった。ロンドンのウエスト・エンドで上演されたミュージカル『シカゴ』で、ママ・モートンの役を演じたのだ。「その頃、息子が高校で最上級生になったの。空の巣症候群になるところだった

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Justin T. Gellerson/The New York Times

カーターは、映画版『ワンダーウーマン』のパティ・ジェンキンス監督からカメオ出演を依頼されていたのだが、バンド活動が多忙であるという理由で断ったのだそうだ。2019年11月公開予定の『ワンダーウーマン2』については、「パティがどんな決断をしようが、彼女を応援するわ」と語った。

『ワンダーウーマン』の成功を受けて、先日カーターはハリウッド商工会議所から『ウォーク・オブ・フェーム』の星形プレートを授与された。

彼女はすでにスティレット・ヒールの靴を捨てて、実用的なフラットシューズを履いている。ケネディ・センターのコンサートでは、観客に向かってこう叫んだ。「もうハイヒールなんて履けないわよ! 頑張って履いていたけど、もう疲れたわ。ブラを燃やせ! ヒールを燃やせ!

© 2018 The New York Times News Service[原文:What Is Former Wonder Woman Lynda Carter Doing These Days? /執筆:Rachel Dodes](抄訳:吉野潤子)

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