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世界初のプログラマーは女性だった。エイダ・ラブレスの物語

The New York Times

コンピュータ時代の夜が明ける1世紀前、エイダ・ラブレスは現代の汎用コンピュータを心に描いていた。それは、命令通りに動くようプログラムできるものだと、1843年の時点でラブレスは書き記している。そして、計算だけでなくクリエイティブな作業もできるようになるだろうとも予言し、「花や葉の模様を織り込んだジャガードのように、代数パターンを織り込む」と表現していた。

ラブレスの言うコンピュータとは、英国の発明家チャールズ・バベッジの考案した解析機関のことだ。この解析機関は、一度も作られることはなかった。しかし、ラブレスが残したコンピュータに関する文書のおかげで、彼女は世界初のコンピュータ・プログラマーとして知られるようになった。彼女は、1852年に子宮がんが原因で36歳の若さで亡くなった。

デジタル時代の社会を予言

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エイダ・ラブレスの肖像画。ロンドン・ホワイトチャペルギャラリーにて。 (Photo by Peter Macdiarmid/Getty Images)

ラブレスが解析機関のために書いたプログラムは、ベルヌーイ数を求めるためのものだったが、彼女の真の目的はコンピュータの可能性を確かめることだった。数の計算という領域を超えて、記号の識別、さらには音楽やアートなどクリエイティブな作業にも使用できるようになるだろう、と彼女は述べていた。

「彼女の知見が、デジタル時代の中核的なコンセプトになるだろう」作家・ジャーナリストのウォルター・アイザックソンは、著書『The Innovators』の中でこう述べている。「音楽、テキスト、写真、番号、記号、音声、動画などといったコンテンツやデータ、情報のすべての要素はデジタル形式で表現でき、さらに機械で操作できるようになる

数学はクリエイティブなもの

彼女はさらに、コンピュータを使ってできるであろう多種多様な用途についても思いを巡らせ、プログラミング担当者が負うべき責任についても言及していた。そして、いつしかコンピュータ自身も自力で思考・創造できるようになるのではないかとも思いついたが(今日私たちが人工知能と呼んでいるものだ)、これはすぐに打ち消してしまった。

英国の詩人バイロン卿を父に持つ英国社交界の名士だったラブレスは、芸術と科学の才能に恵まれていたと、彼女の伝記作家ベティ・アレクサンドラ・トールは書いている。ラブレスは、数学や論理をクリエイティブで想像的なものだと考えており、“詩的なサイエンス”と呼んでいた。

テック業界で活躍する女性を称えるラブレスの日

彼女の遺業は20世紀半ばに再発見され、米国防省は彼女の名前にちなんだプログラミング言語を開発した。そして毎年10月は、テクノロジー業界で活躍する女性を称える“エイダ・ラブレスの日”も制定された。

ラブレスが生きた時代、女性は科学者に向いていないと考えられていた。彼女の技能も、“男っぽい”と表現されることが多かった。

ラブレスのことを“数字の魔女”と呼んでいたバベッジは、彼女について「科学のもっとも抽象的な部分に魔法の呪文をかけて、ものすごい力強さでそれらを掴んで理解した。彼女に勝てる男性の知識人は(少なくとも我が国には)ほとんどいないのではないか」と書いたこともある。

詩人バイロンの娘

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エイダ・ラブレスの家 (chrisdorney / Shutterstock.com)

エイダ・ラブレスことオーガスタ・エイダ・バイロンは、1815年12月10日ロンドンに生まれた。父親で詩人のバイロン卿と母親アナベラ・ミルバンクは彼女の幼少期に離婚。

夫のバイロン卿から“平行四辺形の姫”、“数学のメデア”などと呼ばれていた母アナベラは、数学に造詣が深い裕福な家庭出身で、社会改革者でもあった。

ラブレスは幼いころから数学と機械学に夢中で、母アナベラも積極的にサポートした。上流階級出身だったアナベラは、娘に家庭教師をつけたり、英国の科学界・文学界の知識人たちと交流することもできたのだ。メアリー・サマヴィルなどの偉大な思想家に囲まれて、幼いラブレスは飽くなき好奇心を満たしていった。

運命を決定づけたバベッジとの出会い

ラブレスが17歳の時、サマヴィルからバベッジを紹介された。ラブレスが社交界にデビューした直後、バベッジが主催したサロンでの出会いだった。バベッジはそこで、高さ2フィートの自作の真鍮製計算機を見せた。イマジネーションが刺激されたラブレスは、バベッジと数学と科学についての往復書簡を交わし始める。この往復書簡は、その後20年間も続いた。

夫ウィリアム・キングとの出会いも、サマヴィルの紹介によるものだった。二人は1835年に結婚。ラブレスが19歳の時だった。キングはその直後に伯爵になったため、彼女もラブレス伯爵夫人となった。1839年までに息子2人と一人娘も誕生した。

仕事と家庭の両立を図る

一方で彼女は、家庭生活が原因で仕事に遅れが出ることのないよう、固く心に誓った。結婚した年、彼女はサマヴィルにこんな手紙を書いていた。「私は今、毎日数学の本を読んでいますし、三角法に取り組んでいるところですし、三次・四次方程式を学ぶ準備もしています。ですから、数学の探究にかける私の情熱と、必ずそれを実行するという決意のいずれも、今回の結婚によって揺らぐことなど決してないのだということがおわかりいただけるでしょう」

1840年、ラブレスはロンドンで数学を教えるオーガスタス・ド・モルガン教授に教えを請うた。ド・モルガンは、往復書簡を通して大学レベルの数学をラブレスに教えた(注:当時は女性が大学に通うことを許されていなかった)。

AIの可能性も示唆

そして1843年、ラブレス27歳の時、コンピュータ科学についての寄稿を行った。それは、彼女が書いた中でもっとも長きにわたって読まれているものだ。

彼女は“バベッジの解析機関”に関する学術論文の翻訳を発行し、本文のおよそ3倍にも及ぶ“注釈”というタイトルの項目を追加した。そして彼女は、この“注釈”の中で、コンピュータがどのように動くのかを解説し、コンピュータの可能性を想像し、世界初のプログラムを書いた

オックスフォード大学のコンピュータ科学者でラブレスの生涯と業績について研究してきたウルスラ・マーティンによると、研究者たちは彼女の残した注釈を“桁外れの文書”として評価するようになった。「彼女は、コンピューテーションの抽象的原則について書いている。プログラムの方法のみならず、スケールの大きな計画についても触れている。たとえば、作曲をしたり、コンピュータ自身が思考することも将来的には可能になるかもしれないのだ、と」

それから10年も経たない1852年11月27日、ラブレスはこの世を去った。

© 2018 The New York Times News Service[原文:Ada Lovelace A gifted mathematician who is now recognized as the first computer programmer/執筆:Claire Cain Miller](抄訳:吉野潤子)

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