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彼らの見つめる先にあるものは。写真家ガウリー・ギルの仕事

世界の実験的で注目すべきアーティストを紹介する、ニューヨーク近代美術館(MoMA)PS1「プロジェクト」シリーズで、インド人の女性写真家ガウリー・ギルGauri Gill)の個展が開催されています。

インド社会のマイノリティにフォーカス

ガウリー・ギルはインドのデリーを拠点に活動し、移民や女性など、社会のマイノリティに光をあてた作品をこれまでに発表してきました。近年はインド国内にすまう先住民族のアーティストとの協働制作をすすめ、「Acts of Appearance」シリーズ(2015-)として、2017年ドイツの国際展「ドクメンタ14」で初披露しました。

行為や演技、舞台の一幕をさすAct出演や容姿、状況のAppearanceなどの単語が含まれるタイトルからさまざまなイメージが広がる本展。一体どのような作品なのでしょうか。

MoMAで紹介するのは先住民とのコラボシリーズ

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Untitled, from Acts of Appearance, (2015-) / Copyright Gauri Gill

作品に登場するのは、西インドのマハーラシュートラ州の村に住む先住民コンカナ族。制作のきっかけは、ギルが以前に、別の州で人々が店で売っている神々のお面をつけて春祭りに興じる光景を目にしたことと、コンカナ族が年に一度、手作りの張り子の面で土着の信仰とヒンドゥー教が融合した神話を演じ楽しむことを知ったことでした。

同村の名工ダルマ・ドゥの息子のスヴァースとバグワン・ダルマ・ドゥと出会ったことで、村人にオリジナルの仮面制作と撮影の協力を申し出ます。ギルは知名度があっても美術教育を受けたアーティストと等しく扱われないかれらの現状と、土産物の面づくりで糊口をしのぐ村の生活と向き合い、新しい表現をともに生みだしていこうと模索します。

神話から日常へ移行する世界観

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Untitled, from Acts of Appearance, (2015-) / Copyright Gauri Gill

コブラの雑貨屋の店主、窓から二匹の魚の頭が覗いたかと思うと、木に登る子供の面をかぶった男の子。身の回りの出来事から湧くイメージをギルから問われた村の人々は、神話から身近な自然、動物、物、病や老い、喜怒哀楽を表す人の感情と、日々の事物へ関心を寄せるようになります。それらは太陽にはじまり、カエルやハエ、飲水ボトルなどユーモラスなものばかり。鮮やかな色彩の仮面と衣装と相まって、モデルはおとぎの国の住人のようにも見えます。そのいっぽうで、写真のなかの日常と地続きの背景やモデルのしぐさからは、村の現実と人々の心の機微が見え隠れします。

大切な場所、それは公共インフラだった

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Untitled, from Acts of Appearance, (2015-) / Copyright Gauri Gill

ギルの提案により、参加者が考える大切な場所で行われた撮影。候補となったのは、病院や学校、バスや停留所、井戸など教育や医療、交通や水源などでした。公共インフラが村のささやかな生活のよりどころであることが浮かび上がります。

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Untitled, from Acts of Appearance, (2015-) / Copyright Gauri Gill

家に飾っていた椅子に初めて腰掛け、ぎこちなくカメラに向かう夫婦、テレビの前で自らもテレビに扮する少年や携帯電話を模した面などは、ヒンドゥー教にはみられないアニミズムが感じられます。八百万の神にも似た崇拝、目新しいものへのあこがれ、村に広がる電化製品の浸透の様子などが、伝統的な家の内装と対比を見せています。

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Untitled, from Acts of Appearance, (2015-) / Copyright Gauri Gill

カード・ゲームやおしゃべりに興じる場面の一方で憂いを感じる一幕なども。鏡の前で立ち尽す姿や、ベッドでぼんやりと物思いにふける様子は、仮面の下で揺れ動く内面をかいまみる気にさせられます。

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Untitled, from Acts of Appearance, (2015-) / Copyright Gauri Gill

新旧響きあう展示をMoMAで体験

作品の合間にところどころに挿入されるモノクロの「壁の痕跡」(1999-)シリーズは、かつてラージャスターン州が教師や生徒、地元アーティストが教室の壁に地図や人体など描くことを推奨した、農村教育プログラムの名残。同州西部の砂漠地帯に住む遊牧民や移民、農民らをとらえた「砂漠からの便り」(1999-)シリーズとともに、時と場所を越えて新作と響き合います。

先住民族固有の文化を従来通りなぞることから一歩踏みだす。ギルと村の人々が紡ぐ新たな物語は、観る側にいろいろな読み解きをさしだし、私たちの想像をかきたてます。見知らぬ土地と人に想いをはせたくなる、魅力的な写真展です。

Project 108: Gauri Gill

会期:2018年4月15日~9月3日/会場:ニューヨーク近代美術館(MoMA)PS 1/住所:22-25 Jackson Ave, Long Island City, NY 11101 /開館時間:12:00〜18:00/閉館日:火・水/入場料(任意): 奨励される金額は大人25米ドル、65歳以上のシニア18.65ドル(要ID)、学生(全日であること、要ID)、16歳以下の子供は無料。 ニューヨーク市民は無料/公式サイト

MoMA

Tomoko Kuroiwa

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