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「人と違う」自分に誇りを。恋する難病乙女のメッセージ

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はじめまして!
弾けるような笑顔とまっすぐな目でこちらを見据える。大橋グレース愛喜恵さん(29)。多発性硬化症と重病筋無力症、シェーグレン症候群という3つの難病を抱える。だがNHK Eテレの福祉バラエティー番組「バリバラ」にレギュラー出演し、講演のため全国を飛び回るその姿からは、24時間体制の介助を必要とする難病患者というのが到底信じられない。

1988年、日本人の父とアメリカ人の母のもと、福島県で生まれた。本やバスケが大好きな活発な少女は、中学3年の秋に始めた柔道にのめり込み、高校生になると渡米。北京オリンピックのアメリカ代表候補に選ばれるまでになる。

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幼少の頃、母の腕に抱かれて

時を同じくして、身体に謎の異変が起きる。渡米前に左目、渡米後に右目の視力が弱まり、腕もしびれて力が入らなくなっていた。「私の身体に何が起きているんだろう」。一時帰国して検査を受けると、神経の機能に異常が出る難病と診断される。短期間の検査入院のはずが、みるみるうちに症状は悪化。ベッドに横たわって天井を眺める日々が続き、ようやく退院できたのは2年後だった。障害者の生活を支える介護事業所やヘルパーの不足も、退院を長引かせた。

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柔道の試合で(写真左がグレースさん)

退院後、就活に苦戦していたグレースさんは、縁あってNHK大阪放送局が制作する福祉系の情報番組「きらっといきる」へのレギュラー出演を依頼される。ところが2011年、大阪に収録に訪れたその日に東日本大震災が発生。実家が被災し、そのまま単身大阪に引っ越しをすることに。現在は、大阪市内のNPO法人「自立生活夢宙センター」で働きつつ、「重度の障害があっても楽しく一人暮らしができることを伝えたい」と自立生活を送る。

アメリカで見たメントリング制度の衝撃

2017年7月。若手障害者向けのプログラム「ADA27 LEAD ON! Youth Project」※でアメリカを3週間訪れたグレースさんは、自分より若い障害者が、生き生きと力強く夢を語る姿に衝撃を受ける。
※アメリカの障害者運動を学ぶために結成されたプロジェクト。ADA(Americans with Disabilities Act of 1990=アメリカ障害者差別禁止法)は1990年にアメリカで制定された法律で、交通機関や公共施設、雇用の場における差別を世界に先駆けて禁止した。

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アメリカ視察中のグレースさん

支えるのは「メントリング制度」だった。若い障害者に、同じような障害をもつ年長者がメンターとしてつき、主に一対一の対話を通して障害への理解をともに深めていく。例えば身体障害を持つメンティーが「キャビンアテンダントになりたいけれど、私は身体がうまく動かないから無理だわ」と言えば、メンターは「本当に無理なのかな? もしあなたがその仕事につけないとしたら、それは、身体が動かないあなたが悪いの? それとも、そういう社会が悪いの?」と返す。

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シカゴの自立生活センター アクセスリビングを訪問したときの様子

コーチングにも似た対話を通して、メンティーは「障害を持っているからといって、人間として何かが欠落しているわけではない」と自分の存在を前向きに捉え直し、夢や目標に積極的に向き合うようになっていく。

「もし自分がメンターを任せられたとしたら」。やり取りを目の当たりにしてグレースさんは考えた。「今の私ではきっと一言もしゃべれない、出る幕がない。そう思った時に、猛烈な悔しさを感じたんです

彼らと自分の違いは一体何なのだろう——。その悔しさが、グレースさんに再度のアメリカ行きを決意させた。

人と違う自分に誇りを持つ

メントリング・プログラムの目的は「ステレオタイプからプライドへ」という言葉に集約される。「かわいそう」「不便だろうな」「したいことができないはず」……障害者に対して持たれがちなステレオタイプから自らを解き放し、自分の存在に「プライド=誇り」を持とう、というアプローチだ。

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グレースさんの周囲はいつも笑いであふれている

「身体が動かないから、誰かの手を煩わせないといけない、という発想ではネガティブになってしまう。でも、アメリカでは障害は人間の側でなく、社会の側にあると考えるんです。身体が動かない私が外に出ていくことで、社会にある障害を取り除き、誰にとっても生きやすい世の中に変えることができる。そう思うと、他と違う私って最強やん!って」

「障害」か「障がい」か——。日本ではたびたび議論の対象になるが、表記の違いで議論していること自体が、まだまだステレオタイプにとらわれている証拠とグレースさんは言う。

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神戸の市民フォーラムで講演。スクリーンには「弱さは強さになりうる!」の文字

私、若手障害者のリーダーになる!

こうと決めたら突き進む性格は子どもの頃からだ。日本に帰国したグレースさんは、「ダスキン障害者リーダー育成海外派遣事業」の奨学金制度に応募し、米・シカゴ大学への一年間の留学を勝ち取る。専攻するのは「障害と人間の発展学」。シカゴにある自立生活センターでの週2日のインターンも決まった。事務や運営などを手伝いつつ、メントリング・プログラムを間近で学ぶつもりだ

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講演先の旅で介助者との一コマ

帰国後は、アメリカでの学びを広く日本で還元していきたいという。教育や就労、自立生活の場において、若手の障害者と学校、企業、地域の間のパイプ役になれたら、と意気込む。例えば、一人暮らし。これまで障害者の自立生活は「親亡き後」と言われ、世話をする親族がいなくなった後に初めて向き合う問題とされていた

「でも、単に親元を離れて一人暮らししてみたいからという理由で、若いうちから一人暮らしをしたっていい。障害者だからこういう生活を強いられないといけない、という枠を変えていきたいんです

笑って恋する難病乙女

出演するテレビ番組で恋愛トークが話題になり、「恋する難病乙女」のニックネームがついたことも。今、恋愛は? 「実は、数か月前にボーイフレンドと破局しまして……。アメリカでいい人見つけられたらな、と思っています」

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NHKの福祉バラエティー番組「バリバラ」での一コマ。収録は月に一度だ

8月からのアメリカ滞在中はブログfacebookを通して、日々の生活や感じたことを発信していくつもりだ。「こういう人もいるんだ、こんな世界もあるんだと、一緒に色々なことに気づいてくれたら嬉しいな

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「恋愛もします。失恋もします。(中略)その日のファッションでも悩みます。今悩んでいることはみなさんと似たようなものかもしれません」(Ready forのサイトより)

インタビューの最後。何か言い忘れたことはないですか?との問いに、ひときわ大きな声で返ってきた。「帰ってくるときは、イケメンの彼氏を連れて帰ってきますから!

彼女の持ち前のバイタリティは、こちらのバイアスを軽やかに吹き飛ばし、やすやすと様々なボーダーを超える。成長した彼女がアメリカから戻ってきたあとには、きっとこの社会は今よりちょっと温かなものになっているに違いない

グレースさんを応援しよう

グレースさんは2018年8月に渡米予定です。学費や旅費、滞在費などはダスキンの制度で支払われますが、国外では保険の対象外となる人工呼吸器は自費で購入しなければなりません。現在、クラウドファンディングで資金を募っています。
詳細は[Ready for](6月14日まで)。

写真/グレースさん提供、取材・文/中村茉莉花(cafeglobe編集部)

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