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ボコ・ハラムから解放された少女たちの今 [The New York Times]

The New York Times

マーサ、グレース、レベッカ、マリー、ルス……。その名簿には200人以上の少女の名前があった。ナイジェリア政府は数週間の苦渋の後、イスラム過激派組織ボコ・ハラムによって集団拉致された女子生徒たちの名前を公表した。

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ナイジェリアのヨラにあるナイジェリア・アメリカン大学で学ぶラキヤ・ガリさん。2018年3月4日撮影 (Adam Ferguson/The New York Times)

私は幸せ。だけど姉妹はまだ捕われている

北東部ボルノ州チボク村の全寮制学校から彼女たちが姿を消したのは、4年前の2014年4月14日。名簿は悲しみに暮れ、娘たちを探していた親たちに最初に公開された。兵士たちはこの名簿を元に森の中をくまなく捜索した。ボコ・ハラムと交渉する者たちも、この名簿を元に少女たちの解放を目指した。

数百キロ離れた首都では少女たちの解放を要求するデモが何日も続いた。抗議の輪は米国、フランス、韓国へも広がり、セレブたちも加わって「私たちの娘を返せ」と叫んだ。

人質を暴行し、レイプし、奴隷扱いすることで知られるボコ・ハラムに連れ去られた少女たちのうち約半数が、この1年半の間に解放された。自力で逃げ出し、森をさまよっていたところを保護された少女もいる。

戻ってきた少女100人以上は今、自宅から4時間ほど離れたヨラにある新しい大学で学んでいる。数学や英語の授業を受け、カラオケやセルフィーを楽しみ、夜は友達とポップコーンをつつきながら映画を観ている。

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ヌタカイさん(Adam Ferguson/The New York Times)

「幸せです」と言うのは、ヌタカイさん。名簿では169番目に名前があった。20歳になった彼女は夜明けとともに起きて土曜のヨガクラスに参加し、大学で行われた夜のディベート大会ではソーシャルメディアの恩恵と危険性について議論した。「でも、まだ捕われたままの姉妹たちのことを考えています」。今もまだ100人以上の少女たちは行方不明のままだ。

「世界の娘たち」としての重圧

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(Adam Ferguson/The New York Times)

ボコ・ハラムに殺害されたり拉致されたりした人々の大半は、氏名が分からないままで、家族でさえ消息を知らない。だが、チボクの女子生徒たちは名前が分かっていた。そして誘拐されて数週間後には、頭からつま先まで暗い色のガウンで覆われ、悲痛に満ちた表情をした彼女たちの画像をボコ・ハラムが公開した。

チボクの生徒たちは突然、他の多くの犠牲者を代表する存在となり、ナイジェリア全体、そして世界全体の「娘たち」となった。だが、それだけに解放された後にもまた注目を集め、その重荷に耐えている。

彼女たちは幸運なことに、ナイジェリアの政治家や実業家といったエリート層の子どもたちが通う私立大学で教育を受けている。しかし、チボクで拉致された彼女たちの暮らしは、特に厳しい警備で制限されている。護衛なしで大学のキャンパスから出ることはできず、許可なしに外部の人間を招くこともできない。拉致されている間に出産した生徒もいるが、勉学に集中できないとして子どもは引き離されている。

解放以来、家族さえまともに一緒に過ごしたことがなく、最も長く再会できたのは2017年のクリスマス、実家へ帰った数週間だけだった。それ以外は常に当局や学校の教師たちが、彼女たちを監視している。

解放直後、政府の聞き取りのために数週間、首都アブジャにとどめられた少女たちは、まだ人質になっている生徒たちを危険にさらすからという理由で、拉致されていた間のことは語ってはいけないと言い聞かせられた。過去を忘れて、先へ進めと。

トラウマを集団で癒す

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(Adam Ferguson/The New York Times)

北東部アダマワ州の州都ヨラで少女たちが学んでいるのは、拉致直後に逃げ出した約20人を受け入れたナイジェリア・アメリカン大学だ。以降、チボクの学校で一緒だった彼女たちをまとめて受け入れている。ナイジェリアの女性支援団体「WRAPA」の事務局長、サウダトゥ・マハディさんは「彼女たちは拉致される前のような普通の生徒ではない。生活は色々制限される」と言う。

同大のドーン・デックル学長は「彼女たちは集団でトラウマを抱えていた。それを癒す過程も、集団で行う必要がある」と語る。初期に脱出した少女たちのカウンセリングを行った米国のセラピストは、精神科医として大学に招かれている。イスラム教徒の生徒、キリスト教徒の生徒、それぞれのために礼拝の環境も整えた。さっぱりと刈り込まれた生垣と3階建ての図書館がある大学に2017年の秋、100人以上の少女たちが到着した。

イスラム過激派と数年間を過ごした少女たちを誰もが歓迎するわけではなかった。キャンパスに着いた最初の日、大学のカフェテリアに案内された彼女たちには、他の学生たちの視線が集まった。学校側は学生たちを無理に一緒にせず、チボクの少女たちには自室で食事をとらせることにした。

チボクの少女たちは全員20代になったが、彼女たちが学んでいるプログラムは、ときに小学生のためのような内容だ。教室にはイラストや「トイレの後は手を洗いましょう」といった言葉の他、「あきらめないで、自分を信じて」「星のように輝きましょう」といったポジティブな標語があちこちに貼られている。

「準備ができたときに自分のストーリーを語れるようになれば」

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(Adam Ferguson/The New York Times)

大学は土曜にも講義をするなど、とにかく色々なスケジュールを入れて彼女たちを忙しくさせている。過去を振り返らせないためだ。

米海軍の元指導教官で、チボクの少女たちのプログラムに関わっているレジナルド・ブラッグス氏は、半数以上の少女たちが「レッドゾーン」といわれる危険な状態にあると言う。「彼女たちは悲しんでいるし、落ち込んでいる──身体的には大人だが、社会性の発達という面でいえば今も非常に傷つきやすくもろいのです」。

ブラッグス氏によると、大学では英語だけを使うよう少女たちは指導されている。だが、英語を上手く話せる少女はわずかだ。カウンセリングも英語で行われており、セラピーでどれほどの効果が得られるのか疑問視する声もある。

それでも、カウンセリングやヨガクラスを行い、礼拝にも一緒に出席している精神科医のソミアリ・デムさんは、治療を通して少女たちをエンパワーし、それぞれの少女が自分の準備ができたときに自分のストーリーを語れるようになればと願っている。「彼女たちは自由の身になりましたが、本当の意味での自由ではない」。だから解放された生活に適応するのが難しいのだと語る。

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グローリー・ダマさん(左)、ローダ・ピーターさん(右)。(Adam Ferguson/The New York Times)

エアコンが効き、Wi-Fi環境も整った教室で毎日を過ごす女子学生たちは、ボコ・ハラムから逃れたほとんどの人たちよりも自分たちの環境が良いことを分かっている。学生の1人、グローリー・ダマさんは大学を卒業したらチボクへ帰って、地域を助けるために看護師になりたいと思っている。

別の学生、ローダ・ピーターさん(22)は弁護士になりたいと言う。「今いるところでは誰も追ってこないし、私たちに何か悪いことをする人もいない。今は私たちを助けてくれる人たちと一緒にいます

© 2018 The New York Times News Service[原文:Kidnapped as Schoolgirls by Boko Haram: Here They Are Now/執筆:Dionne Searcey](抄訳:Tomoko.A)

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