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心配性なイケメン王子『デッドプール2』ライアン・レイノルズの素顔

The New York Times

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ライアン・レイノルズ。2018年4月11日、ビバリーヒルズフォーシーズンズホテルにて (Magdalena Wosinska/The New York Times)

話し上手で外交的、雑誌の表紙で見るディズニー映画の王子様のようなイケメンぶりからは想像できないのだが、ライアン・レイノルズは神経質になることが多い。

「心配性なんだ、いつも心配ばかりしている」

トークショー出演前には不安と吐き気に押しつぶされ、死にそうだと思うほどのこともあるという。ABCのシットコム時代には、観客とやりとりしてウォームアップすることにしていた。聴衆に気に入られたいということもあったが、むしろ自分のパニック、本人の言葉でいうと「吐きそうになるエネルギー」を別の方向へ向けるためにそうしていた。4月のある午後、このインタビューのためにビバリーヒルズのフォーシーズンズホテルで会ったが、ライアンは朝からほとんど何も食べていなかった。人物紹介のインタビューはものすごく緊張するからだった。

「心配性なんだ、いつも心配ばかりしている」と、黄金色に灼けた彼の肌と完璧にマッチするロサンゼルスの陽光がたっぷり注ぎ込むスイートルームでライアンは語る。「“こりゃちょっと心配”っていう軽いレベルから、心の底まで不安にさいなまれるレベルまで全範囲経験しているけど、まったく楽しくはないね」

セレブライフに隠されたブラックユーモア

外野から見ると、2010年にはピープル誌の「最もセクシーな男性」に選ばれ、妻ブレイク・ライブリーとの憧れの的のセレブライフをエンジョイしている男性なのに、驚くべき告白だ。とはいえ、2016年の超大作『デッドプール』では、マーベルの、心は歪み口は悪いという冷笑的なアンチヒーローの主人公をほぼ完璧に演じたライアンだから、驚くべきことでもないのかもしれない。苦悩をコメディへと変えてきた半生を送ってきた彼だからこそ、あんなにひと味もふた味も違ったユーモアが生まれたのかもしれない。

41歳のライアンには、シリーズ映画に出演する人なら誰もが憧れる「続編」が控えている。今作のほうがリスクはずっと高い。製作に11年かかった前作の『デッドプール』は、ライアンが情熱を傾けた企画だったが、もともとはそれほど知られていなかった。製作費はわずか5800万ドル——これはスーパーヒーロー映画としてはかなり少額だ。口コミ動画やジョークのビルボード広告や、ライアン自身のプロモツイート(「流血あり。銃あり。罵しり言葉あり。照明がすばらしい、フランスのユニコーンのあからさまなセックスあり。」)などの草の根キャンペーンによって宣伝された。映画は予想を超えてヒットし、全世界で7億8300万ドルを稼ぎ、ゴールデングローブ賞のノミネートも2つ受けた。そして、ライアンは『GQ』誌の「2016年に活躍した男性」のひとりに選ばれた。

期待の話題作『デッドプール2』

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Magdalena Wosinska/The New York Times

『デッドプール』はまた、ライアンを灰の中から再生する火の鳥のごとく蘇らせた。それまでは、2011年のスーパーヒーロー失敗作『グリーン・ランタン』など上がり下がりの激しいキャリアよりも、歌手のアラニス・モリセットとの婚約、スカーレット・ヨハンソンとの3年間の結婚といったプライベートの話題で注目されがちだった。『グリーン・ランタン』は、本人の言葉によると「一生ぬぐえない汚点」なのだそうだ。

『デッドプール』には期待がかかっていなかったが、そのヒットにより『デッドプール2』は、すでにR指定映画の前売り記録を更新しており、大期待の中公開されることになる。なによりも期待がかかるのは、ライアンがまた奇跡を起こせるかどうかということだ。

「すでに期待があると、いつも脳はそれを危険だと感じるんだ」とライアンは言う。

続編は前作からのおおまかな続きのストーリーで、主人公が抱える自分の存在についての苦悩や、とても個人的な行動理由を描いている点は前作と同じだ。このアプローチは第1作目がヒットした理由でもあった。「ストーリーを個人的に描くほうが観客にずっと強く訴えるんだ。他の作品が描いているような地球規模の危機よりもね」と『デッドプール2』のデヴィッド・リーチ監督は語っている。

素顔は意外と普通の人

このインタビューの日、ライアンは日の出に起床して『デッドプール2』の最終編集に携わっていた。すごく疲れていたのかもしれないが、それは見た目ではわからなかった。さっぱりした青いTシャツの上にスエードの上着、茶色の髪はボーイッシュな顔の上にまとめられている。ラルフ・ローレンがタンタン(エルジェによるマンガの主人公)を手がけたらこんな風なのだろう。共演女優のレスリー・アガムズが言うように「いい体をしているし、ハンサムだし、健康管理もばっちり」そのものだ。

ライアン自身は、誇張して演じているデッドプールよりもずっと落ち着いていて控えめだ。その差ゆえにライアン本人に会った人たちから驚かれることが多いという。2002年『National Lampoon’s Van Wilder』で大学7年生の主人公を演じたあとでは、やたらに元気な若者たちからバーでイエーガーマイスター(ハーブベースのリキュール)をおごられたが、ライアンの言葉によると「彼らのヒーローを演じたヤツがあまりにつまらなかった」ので、若者たちががっかりしたことが何度もあったという。

ミスター・ハリウッドでない理由

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Magdalena Wosinska/The New York Times

レスリー・アガムズいわく、「スクリーンの外ではライアンは普通の人。ザ・ロック(ドウェイン・ジョンソン)のようじゃないのよ。ザ・ロックが部屋に入ってきたら『うわっ、すごいザ・ロックだ』と誰もが思うでしょうけど、ライアンはそんな俳優じゃない。ミスター・ハリウッドじゃないのよ

ライアンがミスター・ハリウッドではない理由には、デッドプールと同様、まずカナダ人であることが挙げられる。彼は母国を愛していて、ハリウッドを外側からの視点で見られることを自分のプラスになるように利用しているという。「(映画界に対して)これが自分の世界だとしっくり感じたことはないんだ」。最近、アメリカ国籍も取得し二重国籍となり、パスポートを2つ持つようになった。

「選挙に参加しなくてはと思ってね(*1)」とライアンは言い、すこし間をおいてから陰謀めいて声をひそめ、「とくに今はね」とつけ加える。

SNSでは辛辣ユーモアが爆発

ライアンのユーモアはかなり辛辣だ。インターネットには選りすぐりの彼のツイートがあふれている。ツイッターのフォロワーは1060万人。ブレイク・ライブリーとの間に恵まれた幼い娘たちについてのツイートが多い。

その中からいくつか見てみよう。

「フライト中に泣き叫んでいる娘にどんな絵本を読んであげても、物語の教訓はいつも男性の避妊手術についてのことだ」(*2)

「朝6時、散歩のときに朝になったら月はどこへ行くのかと娘に聞かれた。月は天国にいて、ダディの自由を訪ねているんだよと教えたよ」(*3)

いつか娘が応答するようになったらどうするのかとツイートで質問されたとき、ライアンはこう答えた。「君の負けさ。だってうちでは娘に読み方を教えないんだから」

『デッドプール2』でも恋人を演じたモリーナ・バッカリンは「ライアンはすごくシャープで、一瞬一瞬をどうしたらもっと良くすることができるかわかっているの。頭の回転がすごく速い人」と言う。

ユーモアの原点

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Magdalena Wosinska/The New York Times

ライアンが始めて大人を笑わせたのは、彼の初のTV出演だったカナダのティーンドラマ『Hillside』のセットだった。製作陣は、バンクーバー地区の高校へ案内を送り、オーディションには演技部の選り抜きの生徒たちが参加した。ライアンは学校から選ばれなかったのだがオーディションへ行き、役を獲得した。ある日、製作スタッフが照明を角の部分に曲げるのに苦労していた。ちょうど、オリバー・ストーン監督の『JFK』が封切られたばかりで、(弾道が曲がるという)魔法の銃弾理論が話題になっていた。ライアンは「JFK銃弾照明を持っているかい?」とジョークを飛ばした。そのスタッフから笑いをとった彼は大喜びだった。

これに触発され、ライアンは高校でコメディグループを立ち上げた。Yellow Snowと名づけられたそのグループは長続きしなかったが、ライアンは演技を続けた。なかなか仕事は見つからず、あきらめかけたこともあった。バンクーバーから南下してロサンゼルスへ行き、ロサンゼルスのコメディ一座Groundlings(グラウンドリングス)に加わり、1998年から2001年まで続いたシチュエーションコメディ『ひとりの男とふたりの女』の主演に抜擢された。うぬぼれの強い研修医のバーグ役だった。このシリーズはとりたてて言うこともない平均的なものだったが、ライアンの持ち前のコメディのタイミングとおどける才能を世間に知らしめることになった。

典型的なヒーローは自分には向いていない

こうして、もっと大きな役が来て、小さな役、また大きな役と仕事が舞い込むようになった。わたしがRotten Tomatoes(映画批評サイト)で出演作をチェックしたと言ったとき、ライアンは何も言わず両手を組んで前かがみになり、心配ごとがあるようにわたしの目をじっと見つめた。

「それは申し訳なかった。大丈夫かい? ミニボトルの酒でも持ってこようか? 」と低い声で言った。あら、ヒットよりも失敗作が多いのが気になる?

「『ヒット』という言葉を口にするには酒が要るな。でも、ヒット作のなかには批評的にはよくなかったものもある。ヒットして、かつ、批評もよかったら、それは儲けものだね

『デッドプール』以前批評的に成功した作品には2010年の『[リミット]』や2015年の『ワイルド・ギャンブル』があるが、興行的にはヒットしなかった。駄作中の駄作は『グリーン・ランタン』。2億ドルの製作費をかけ、ライアンを完璧な映画スターの座へ押し上げるはずだった。彼はこの作品に出演したのは楽しかったというが、興行的に成功しなかったことには驚かなかったという。それは、キャラクターではなくアクションや特撮に重きが置かれていたからだった。

しかし、この経験から得るところがあった。典型的なヒーロー役は自分に向いていないということに気づいたのだ。ヒーローをいじるほうが向いている。『デッドプール2』のエンドクレジットではその風刺ぶりを披露している。

極度な不安は「おふざけキャラ」が払拭してくれる

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Magdalena Wosinska/The New York Times

インタビューを終える前に、まだこれから続く宣伝のインタビューやトークショー出演への不安にはどう対処するのかと聞いてみた。まず、彼はデッドプールのキャラになってプロモをするのだという。また、Headspace(ヘッドスペース)という瞑想のアプリを使ってもいる。そして、ステージに登場する瞬間に不安は取り除かれ、神聖な救済の時が訪れるのだとわかっている。

「(トークショーで)登場するとき、おふざけ男キャラをオンにする。するとそいつがトークをしてくれて、出番が終わるといなくなるんだ」

「これこそすばらしい自衛メカニズムなのさ。どうぜ崖から落ちるんだったら、そのまま落ちてしまうんじゃなく、空を飛んで楽しんだっていいじゃないか」

訳注*1:永住者でもアメリカ国籍がなければアメリカの選挙権はない
*2:避妊手術をしていれば子どもは生まれず、こんな苦悩は避けられたの意味
*3:子どもが生まれたことでもはや自分の自由は地球上にはないという意味

© 2018 New York Times News Service [This Story Has Already Stressed Ryan Reynolds Out/執筆:Cara Buckley ](翻訳:ぬえよしこ)

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