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長い紙を読むとハッピーになれる、この自販機の正体は…… [The New York Times]

The New York Times

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物語は色々な形で人の元に届く。それが本や雑誌のこともあるし、キャンプファイヤーを前にした読み聞かせだってあるだろう。それから、ディスペンサーから巻物のように吐き出されてくることも。

え? なんのこと?

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サンフランシスコのカフェ・ゾートロープでディスペンサーから出てきた短編小説を読む客。ショート・エディション写真提供(Olivier Alexandre/Short Edition via The New York Times)

フランス発の小説ディスペンサー

スピード重視の報道やスマホ中毒のこの時代に、文学の復活を目指すのは、哲学と文学を愛するフランス人しかない。短編小説を専門とするフランスの地方出版社、ショート・エディション(Short Edition)はこの1年で、米国のレストラン、大学、官庁、交通機関などに合計30台のディスペンサーを設置した。ディスペンサーは、ボタンを押せば小説を吐き出すマシンだ。

コッポラ監督が後押し

この事業に大いに魅せられたフランシス・フォード・コッポラ監督は、同社への投資を決め、さらに自分が経営するサンフランシスコのノースビーチ地区にあるレストラン、カフェ・ゾートロープにディスペンサーを設置した。2018年3月には、米国4都市(フィラデルフィア、アクロン、ウィチタ、コロンビア)の公立図書館も設置を発表した。すでにペンシルバニア州立大学のキャンパスにも1台が設置されており、フロリダ州のウェストパームビーチの中心部にも数台が設置されている。今後、ショート・エディションは、ロスアンジェルス国際空港をはじめとする数か所への設置を発表する予定だ。

1分、3分、5分……読書にかかる時間で選べる

「今、古風なものが新鮮なものとして見直されています」と言うのは、フィラデルフィア自由図書館の教養・市民参加プログラムの副ディレクター、アンドリュー・ナーキンさん。同公共図書館は、ジョン・S・アンド・ジェームズ・L・ナイト財団の寄付を受けて、ディスペンサー設置を予定している図書館の一つ。「一般の人に、文学に触れる機会を提供したい。そして子どもの読む力と創造力を伸ばしたい」

円柱型のディスペンサーには3つボタンが並んでいる。それぞれのボタンには「1分」「3分」「5分」と読書にかかる所要時間が示されている。ボタンを押すと、短編小説がレシートのような紙に印刷され、スルスルと吐き出される。

どんな小説が出るのかはお楽しみ

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Image via Getty Images

小説は無料だ。10万あまりの投稿作品の中からショート・エディションの審査員が選んだコンテンツがコンピュータのデータベースに保存されており、モバイル通信を通じて配信される。コンテンツを希望のジャンルに絞ることもできる。例えば、児童書、ロマンス、季節にちなんだ物語、などだ。

オハイオ州コロンバスシティ教育委員会の戦略的広報部長のスコット・ヴァーナーさんによると、同学区でもディスペンサーの導入が決まっており、5台中2台は12月にも設置されると言う。ディスペンサーで取り扱う物語は、児童向けと一般読者向けの2カテゴリーとのこと。「読書はワクワクするもの、というイメージを特に家庭で定着させたいのです。」とヴァーナーさん。

コンテンツ集めは作品コンテストで

ショート・エディションは作品コンテストを主催してコンテンツを集めている。現在もペンシルバニア州立大学で生徒と教員を対象に「新しい始まり」と言うテーマのコンテストが開催されている。コロンバスシティ教育委員会も、同市をテーマにした地域生徒のコンテストをショート・エディションに打診しており、同社で企画が検討されていると言う。

「高1の生徒が小3の生徒向けに童話を書く。そんなことが実現できたら素敵ですね」と、ヴァーナーさん。

独立系アーティストを後押しするプラットフォームに

フランス南東部の街、グレノーブルに拠点を置くショート・エディションは出版関係者が起業したスタートアップ。2016年にディスペンサーの第1号を設置し、今や世界で150台を運用する。「(独立系映画の制作を後援する非営利組織)サンダンス・インスティテュートのように、独立系アーティストを後押しするプラットフォームの提供を目指しています」と言うのは、同社で輸出ディレクターを務めるクリスタン・ルロイさん。ディスペンサーの単価は9200ドルで、コンテンツとソフトウェアの維持費用は月額190ドル。補充が必要なのは印刷用紙だけだ。ルロイさんによると、印刷された物語は、平均で2.1回読まれるという。 「(物語を届けて)人をハッピーにしたい。今は暗いニュースが多すぎるでしょう」

バスの待ち時間にだって、気軽に読める

アメリカ国内の第1号は、2016年にコッポラ監督のサンフランシスコのカフェに設置された。監督は当時、印刷された物語のことを、昔の原稿のような古風な魅力があると評し、こうコメントした。「市がサンフランシスコ中に(ディスペンサーを)設置してくれればいいと思う。そうすれば、バスの待ち時間や、昼休み、それから役所で結婚許可証の発行を待つ間などにも、無料で芸術に触れ、気晴らしできるようになる」

それはまだ実現されていない。でも、フィラデルフィア自由図書館のナーキンさんは、今後のフィラデルフィアでの展開に大きな期待をかけている。「図書館を訪れる習慣がない人にも利用してもらえる場所を探しています」と言い、家庭裁判所やフィラデルフィア国際空港への設置を検討しているとのこと。

「(ディスペンサーの物語は)開いてみるまで中身がわからない文芸雑誌みたいです。ボタンを押したら、ご近所さんが書いた作品が出てきた、なんてことだってあるかもしれません」

© 2018 New York Times News Service[原文:The Vending Machine That Spits Out Short Stories/執筆:Laura M. Holson](翻訳:Ikuyo W.)

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