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化学療法じゃなくていい。早期乳がん治療に明るい選択肢

The New York Times

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Image via Getty Images

初期ステージの乳がん患者の多くは、現在の治療基準のもとでは化学療法を受けている。だが、先ごろ米国で発表された最新のがん研究によると、大部分の患者にその必要がないことがわかった。医療の現場を大きく転換させる遺伝子検査の詳細に迫る。

早期乳がん患者の約7割は化学療法いらない

「何千人もの女性を必要のない化学療法から解放できます」と、乳がんと化学療法の関係についての研究報告書を執筆した、ヴァンダービルト大学メディカルセンターのイングリッド・A・メイヤー博士は語る。

メイヤー博士らの研究によると、患者から摘出したがん腫瘍サンプルの遺伝子検査をすることにより、女性ホルモン・エストロゲンの分泌を止める投薬だけの内分泌療法(ホルモン療法)で十分で、化学療法を受ける必要がない患者がわかるという。

米国だけでも1年間に6万人の患者が、この発見による恩恵が受けられると、同研究のリーダーであるモンテフィオーレ・メディカルセンターのジョセフ・A・スパラノ博士も見積もっており、「現在、化学療法の対象になっている患者のおよそ70%が、“不必要”に当てはまるだろう」とする。

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メイヤー博士の患者で、内分泌療法と化学療法のどちらも受けることを選んだバリ・ブルックスさん。2018年5月26日、テネシー州ホワイトハウスで撮影(William DeShazer/The New York Times)

ただし50歳以下の患者は要注意

だが、メイヤー博士もスパラノ博士も慎重な姿勢を崩さない。臨床データからみるに、50歳以下の患者では、遺伝子検査の判定にかかわらず、化学療法が有効なケースがあるからだ。こうした事態が起こる理由はまだ明らかではないが、注意深い診断が求められるのは間違いない(乳がんは高齢女性が発症する場合が大多数を占め、米国においては、乳がんと診断された時点での患者の平均年齢は62歳である)。

TAILORxと称されるこの研究プロジェクトは、6月初旬、シカゴのアメリカ臨床腫瘍学会の会合で発表されたもので、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに論文の掲載が決まっている。研究の始まりは2006年にさかのぼり、米国およびカナダ政府と慈善団体グループの支援を受け、2016年からは遺伝子検査企業のジェノミック・ヘルスが協賛している。

乳がん患者のQOLの向上に期待

1年間で、新たに乳がんにかかる女性の数は全世界で170万人ともいわれ、乳がんで亡くなる患者数も50万人以上を数える。化学療法はこうした命を救う可能性を持っている。しかし、危険なリスクも伴っており、もし必要がないのであれば、避けるに越したことはないだろう。抜け毛や激しい嘔吐が患者の心と身体を苦しめるのはもとより、化学療法は心臓や神経のダメージを与えかねず、感染症への抵抗力を弱め、さらには、後年、白血病になる率も高まるのだ。

内分泌療法もまた、のぼせなど更年期障害の症状や体重の増加、関節や筋肉の痛み、子宮ガンの危険性といった副作用と無縁ではない以上、がん患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大切にし、なるべく痛みやつらさを和らげる治療法の一環として、TAILORxの意義は大きい。

医療現場のためらいがあった

TAILORxにおいて、化学療法を必要としない患者とは、乳がん腫瘍の大きさが1〜5cmの初期ステージで、リンパに転移しておらず、タンパク質HER2検査が陰性で、再発にかかわるがん関連遺伝子パネルを用いた解析の結果、11〜25ポイントにマークされた人々を指す。

この研究の肝である遺伝子検査の技法そのものは、すでに2004年から広く利用されており、患者から切除したがん腫瘍の遺伝子を調べることで、化学療法が効力を発揮するかどうかを判定し、0〜100のポイントに数値化して表示する。これまでの研究では10以下は化学療法が不必要、25以上は必要とされてきた。TAILORxは、この11〜25ポイントの中間層に目を向けた点が新しい。

「この中間層の患者をどうすべきか、私たちはわからなかったのです。医師は再発という不幸な結果になるよりはと、患者に化学療法を受けさせていました」とメイヤー博士は語る。2006年から蓄積されてきた臨床データが膨大になるにつれ、11〜25ポイントの層の人々に対して、化学療法はどうやら意味がないらしいとわかってきたが、医療現場にはまだためらいがあった。医師たちは確たる裏付けを求めていたのだ。

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自宅の馬場で乗馬を楽しむバリ・ブルックスさん。2018年5月26日、テネシー州ホワイトハウスで撮影(William DeShazer/The New York Times)

手術後の生存率に化学療法の有無は影響しない

最終的には、18〜75歳の1万253人の乳がん患者が被験者として参画し、そのうち、平均7年にわたる術後の経過観察を終了した9,719人の70%が11〜25ポイント層だった。彼女たちは手術と放射線療法を受けたのち、本人の意思にもとづき、内分泌療法のみ、または、内分泌療法と化学療法の2つを受けるグループに分かれた。

時間の流れとともに明らかになったのは、どちらのグループもおおむね良好ということだった。9年後、内分泌療法のみのグループの生存率は93.9%に対し、化学療法も受けたグループは93.8%と、化学療法をおこなったかどうかは影響しなかったのだ。悪性の細菌が体内に侵入して起きる侵襲性疾患を発症しなかった率も、内分泌療法のみが83.3%、両方受けた場合が84.3%と、大きな違いはみられなかった。

しかしながら、データを精査した研究者は、16〜25ポイントのスコアで、かつ50歳以下の患者に関しては化学療法の効果が明白であることも併記している。

こうした研究結果をもとに、化学療法を受けるかどうかを決めるのは、あくまで患者自身である。必要がないのなら少しでも楽な処置を選ぶ人もいるし、命は何ものにも変えられないと、念には念をいれるつもりで、無駄かもしれない治療を受けることを選択する人もいる。ただ、研究プロジェクトに関わったいずれの患者も、自分のデータが乳がんについての知見を高め、ほかの女性の役にたつことを喜んでいたとメイヤー博士はつけ加えた。

©2018 The New York Times News Service[原文:Good News for Women With Breast Cancer: Many Don’t Need Chemo/執筆:Denise Grady](翻訳:十河亜矢子)

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