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スタイルあるバッグの生みの親、ケイト・スペードさんの生き方

The New York Times

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上品で高級感があり、なおかつ、機能的なデザイン、可愛らしくポップな色使い。ケイト・スペードのハンドバッグは、アメリカの若い女性にとって「いつかは手に入れたい」ステータスシンボルとなり、初めて買って、それを持って出掛ける日には大人の仲間入りをしたことを実感させてくれた。

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ケイト・スペード (Marilynn K. Yee/The New York Times)

デザイナーであり、ブランドの創業者のケイト・スペード(55)が5日、マンハッタンの自宅の寝室で首を吊った状態で死亡しているのが発見された。警察は自殺とみて調べている。自宅には、13歳の一人娘に宛てた自筆のメモがあり、「あなたのせいじゃない」という内容も綴られていたという。

ブランドとともに愛された人柄

1990年代にファッション界を席捲した、米国女性デザイナーの一人として、ケイト・スペードは、女性たちが思わず微笑むような、魅力的な洋服とアクセサリーのブランドを構築した。60年代風の上部を膨らませたレトロなヘアスタイルに、ナードグラス(オタクっぽい黒縁メガネ)という軽妙なスタイルの彼女自身も、ブランド・イメージそのものだった。けれど、その柔らかなイメージの内側に、当時はまだ、言葉として定着していなかった「ライフスタイル・ブランド」を創設するチャンスを抜け目なくとらえることのできた、冷静なビジネスマインドを持っていた。

彼女の名前を冠したキュートで機能的なバッグは、20代、30代の都会のキャリア女性の間でたちまち人気となった。フェンディのクラッチやシャネルといった欧州の高級ブランドと比べて、頑張れば手に届く価格ラインの商品が若い女性の心をつかんだ。彼女自身も、ブランドの顔として一躍有名になり、その後、トリー・バーチやJ.Crewの元クリエーティブディレクターのジェナ・ライオンズなど女性のライフスタイル・デザイナーの活躍する下地を作った。

幼い頃の夢は、テレビのプロデューサー

本名ケイト・ノエル・ブロズナハンは、1962年12月24 日にミズーリ州カンザスシティで生まれた。父は建設業に携わり、母は彼女を含む6人の子供たちを育てあげた。子供の頃は、特におしゃれに関心があるわけではなく、テレビ番組のプロデューサーになりたいと思っていたという。

アリゾナ州立大学ではジャーナリズムを専攻した。メンズのブティックでアルバイトし、そこで、公私ともにパートナーとなるアンディ・スペードと出会った(ちなみに、俳優兼コメディアンのデヴィッド・スペードは彼の弟である)。

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アンディ&ケイト・スペード夫妻 (Photo by Scott Gries/Getty Images)

欲しいのは、機能的で洗練されたバッグ

1985年に大学を卒業後、ニューヨークに移り、ファッション雑誌「マドモワゼル」で編集アシスタントの職に就いた。5年後にアクセサリー担当の編集者に昇格したが、その際、当時流行っていたハンドバッグのデザインにフラストレーションを抱いていたという。既存のバッグのデザインは、派手に飾り過ぎだと感じていた。「機能的で洗練された、スタイルのあるバッグ」を求めていた、と後にニューヨーク・タイムズのインタビューで語っている。

「エル」の元クリエーティブディレクターであり、「Wマガジン」の元ファッションディレクターであるジョー・ズィーは、ブランドを立ち上げる直前の彼女に会った時のことを良く覚えているという。

「『ハンドバッグのブランドを立ち上げようと思っているの』って、いつものくったくのない調子で嬉しそうに教えてくれました」。生き生きとカラフルにアイデアを説明してくれたことを今も覚えているという。「活気に溢れ、笑顔で。ファッションの世界に入ったばかりで、締め切りに追われ、完璧を求めてばかりいた若い自分に彼女は強烈な印象を残しました」。

ズィーは、常に時代の一歩先を進む彼女の才能に憧れていたと語る。「彼女は、ファッションの世界で何が求められているか、考えなくても分かっていました。業界の中で何が言われていようと構わない。ケイトは、自分が正しいと感じたことだけ実行しただけ。それで十分だったのです」。

当初、バッグの内側にあったロゴ

ブランド名は、悩んだ末、自分の名前とパートナーのアンディ・スペードの名前を組み合わせて、「ケイト・スペード・ニューヨーク」にした(2人は、その翌年の1994年に結婚した)。初めてのショーを開催した後、商品を見て何かが足りない気がしたという。バッグの内側のロゴ入りラベルを外し、外側に縫い付けてみた。この時、彼女は、ブランド・アイデンティティを生み、「ケイト・スペード帝国」の種を撒いたのである。

1990年代前半、新進ブランド「ケイト・スペード」にいち早く注目したのは、バーニーズ・ニューヨークのファッションディレクター(当時)、ジュリー・ギルハートだった。結果は大成功だった。「ドンドン伸びたの。右肩上がりに。典型的な成功するビジネスのパターンでした」とギルハートはその勢いを振り返る。

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Photo by Spencer Platt/Getty Images

頑張れば手が届くラグジュアリー

90年代半ばは「ハンドバッグの時代」だったとギルハートは言う。ケイト・スペードは、デザイナーズブランドには手が届かない若い女性たちの気持ちを汲み上げて、買いやすい商品を世に送り出した。「ケイトとアンディはつねにビジネスチャンスを冷静に伺い、チャンスを見逃しませんでした」。

その後の1996年、マンハッタンに1号店を出店し、ケイト・スペードは、数々の業界賞をさらった。1995年には米ファッションデザイナーズ協議会の新人賞を獲得すると、1997年には同協議会の年間最優秀アクセサリー・デザイナー賞を受賞、1999年には、アクセサリー協議会「ACE賞」最優秀アクセサリー・デザイナー賞を受賞した。

「親しみやすさ」をコンセプトに、書籍もベストセラー

「まさしくファッション・アイコンでした」と言うのは、スペード夫妻に書籍の出版を持ちかけた、著作権エージェントのアイラ・シルバーバーグである。「でも、実は付き合いやすい人々たちなんだって、2人を知るにつれ分かってきました」。ギフトにぴったりの美しい装丁のハウツー本シリーズ、『Style』『Manners』『Occasions』(2004年刊行)は、数十万冊を売り上げ、ベストセラーになった。

「ケイトとアンディは、消費者を決して遠ざけることなく、読者の心をつかむ方法を知っていました。“カンザスシティからやってきたケイティ”という親やすいイメージを通じて、いわゆる米国流のスタイルと価値観を伝えたのです」

女子ニーズを読む独自の感性、業界に革命

アメリカ版「ヴォーグ」の編集長であり、「コンデナスト・トラベラー」アートディレクターのアナ・ウィンターは、訃報に際し、「ケイト・スペードは、世界中の女性が何を持ち歩きたいか、何を身に付けたいか的確に把握できる、うらやむほどの才能を持っていました」とコメントした。

「スペードがブランドを立ち上げた頃、バッグといえば老舗の欧州ブランドに支配されていました。何十年も前から変わらない、ステータスと豊かさに基づいた古い基準のデザインでした。そこに、若いアメリカ人女性が現れ、すべてを変えてしまったのです。一時は、マンハッタンのどの区画でも彼女がデザインしたバッグを持った女性を見かけました。ポップな色使いで気取りがないハンドバッグには、まさに彼女の人となりが反映されていました」

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アンディと共にトークイベントに登壇するケイト・スペード(右から2番目)。右はボビー・ブラウン。 (Photo by Matthew Peyton/Getty Images For American Express)

最近、新しいブランドを立ち上げていた

1999年にスペード夫妻は「ケイト・スペード ・ニューヨーク」の会社の株式を百貨店のニーマン・マーカス·グループに売却した。ちなみに、その前年度の売上高は2,800万ドルに達していた。

ニーマン・マーカス·グループは2006年に、同ブランドをリズ・クレイボーンに売却。リズ・クレイボーンは2014年に、社名をKate Spade & Co.に変更したが、同社は2017年、タペストリー(旧「コーチ」)に買収された。

夫妻は既に10年余、ケイト・スペード・ニューヨークの経営には関与していない。ケイトは家族の世話に加え、Kate Spade & Co. Foundationを通じ、女性の経済的な平等を求めた活動に従事していた。また、2016年に、一人娘の名を付けたアクセサリーの新ブランド「フランシス・ヴァレンタイン」を夫と昔の仕事仲間とともに立ち上げた。ケイトは自分の名前にも「ヴァレンタイン」を加えるほど、この事業に打ち込んでいたという。

© 2018 The New York Times News Service[原文:Kate Spade, Whose Handbags Carried Women Into Adulthood, Is Dead at 55/執筆:Jonah Engel Bromwich, Vanessa Friedman and Matthew Schneier](翻訳:Ikuko.T)

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