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対話はラブ。人間関係を円滑にする「傾聴力」って? /精神科医・星野概念さん【前編】

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題字/オオクボリュウ

クライアントの要望や、上司の小言、部下の悩み……。人と話をする機会は多いけれど、「ちゃんと聴く」ことはできているだろうか——そんな思いにやさしく寄り添い、自分なりの答えへと導いてくれるのが作家・いとうせいこうさん精神科医・星野概念さんの共著『ラブという薬』(リトルモア)。カウンセリングを受けているいとうさんと主治医の星野さんのやり取りが対談形式でつづられた一冊です。

精神科医が患者と向き合うときに用いるテクニックは、職場はもちろん、家族や仲間、そして自分と対峙するのにも役立つのだそう。今回は星野さんにお会いして、その方法を具体的に教えていただくことにしました。

星野 概念(ほしの・がいねん)さん
1978年、東京都生まれ。精神科医として総合病院に勤務しながら、雑誌数誌に連載を持つなど執筆活動もおこなう。また、制作ユニット「JOYZ」、コーラスグループ「星野概念実験室」、タマ伸也(ポカスカジャン)とのユニット「THE肯定s」、いとうせいこう氏がメンバーを務める「□□□(クチロロ)」のサポートギターなどの音楽活動にも積極的。

診察室で実際に行われていることを、わかってほしかった

物事を突き詰めて考えすぎて、自分の中に抱え込んでしまうタイプだといういとうさん。モノづくりをするなかで精神的な危機を何度も経験し、そのたびに周囲からカウンセリングをすすめられていたそうです。自分がどのように変われるのかには興味があったものの、それでも人に弱音を吐けない性分が勝って精神科医の扉を叩けずにいました。

以前から顔見知りだった星野さんのカウンセリングを受けていると、「自分自身のことも、社会のことも、どんどんクリアになっていく感覚があって、それをみんな(読者)と共有したかった」とのこと。さらに、精神医学やカウンセリング、診察室で実際に行われていることを世間にわかってほしかった、といとうさん。

「カウンセリングを受けている」ということを公言して、「けがをしたら外科、気持ちがつらいなら精神科へ行けばいい」とカウンセリングへの垣根を下げたかったというのが、この本を出版することになった経緯です。

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精神科医が持つ「対話」のスキルに、見習いたいこと

興味深いのは、精神科医が患者と向き合うときに行うことが、ビジネスや家族、友人、そして自分自身と対峙するときにも役立つということ。そのひとつに挙げられるのが「対話」です。星野さんは患者さんに「こうしてみよう」と目からウロコ的なアドバイスを提案することもありますが、だいたいの場合は「傾聴」に徹します。この傾聴こそがいとうさんの言う「愛(ラブ)」。いとうさんが本に「ラブという薬」と名づけたのもそのためです。私たちが身近な人の話を傾聴するにはどのようにすればいいのでしょうか。

「傾聴力と共感力を育てるならば『想像力』が大事。そして想像力を鍛えるには、相手に興味を持つことが大切になってきます」(星野さん)

置かれている立場や感じ方が違っても、何がその人をつらくさせているのか、自分だったらどうだろうかと想像してみることが大切。家族や友達ならまだしも、職場だと仕事内容や部署の方針、取引先との関係、仕事の進捗などが優先されるばかりで、相手の気持ちを想像して対話することは少ないかもしれません。

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相手が話をするときは「心のマイク」を置く

とはいえ、人の話に傾聴することは、なかなか大変。相手の話を聞いているつもりが、つい自分や知人の体験談にすり替わっていたなんてことは、よくあることです。

人の話を聞くのって意外と難しいですし、日常生活で“聴く”ことはあまりない。ということは、話したい人が話せていないという状況だということでもあります。自分の興味と異なる話を聞くのはおもしろくないんですけど、聞き続けるとランナーズハイというか、その人の知らない人間性が垣間見えたり、ぽろっと言ったことが実は共通の趣味だったりして、急に楽しくなる瞬間があります。はじめだけ少しがまんして“聴いて”みてください」(星野さん)

星野さんが最近気づいたのが、自分は人の話を聞くときに無意識に「心のマイク」を置いているということ。あるトークイベントでお互いにマイクを持っているというシチュエーションで、相手が話しているときに星野さんはマイクを下げていたそう。

「マイクを持っていると、つい口をはさみたくなってしまう。だから無意識にマイクを下げていたんだと思いますが、よく考えると診察室でも同じことをしているなって。『心のマイクを置く』って我ながら名言だと思いました(笑)。そういう“聴く構え”をとることで、口をはさみたくなるモードはなくなりますよ」(星野さん)

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ここまでお話をうかがって、つくづく感じるのが「会話」と「対話」は別物であるということ。悩める人と対峙しようと思ったら、その人に興味を持ってどんな気持ちでいるのか想像し、話に耳を傾けながら伴走する。そんなスキルを身につければ、職場のコミュニケーションは円滑になり、仕事にも好影響があるかもしれません。

人の心を軽やかにする精神科医のテクニック。次回【後編】では、星野さんが考える「ストレスの対処法」をご紹介します。

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ラブという薬
著者:いとうせいこう 星野概念
発行:リトルモア
定価:1500円(税別)

Image via リトルモア

撮影/YUKO CHIBA (DOUBLE ONE)

大森りえ

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