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白黒つけたい世の中。必要なのは自分らしいグレー/精神科医・星野概念さん【後編】

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題字/オオクボリュウ

ストレスを解消する間もなく、また次のストレス……。ストレスとうまくつきあえるスキルを持てれば、こんなにいいことはありません。

白黒つけることがよしとされがちな社会において、「自分らしいグレーを見つけるのも、人生があまり苦しくならないコツかもしれない」と語る精神科医・星野概念さんに、きつい現実が少しだけ生きやすい現実になりそうなストレスの対処法を訊きました。

星野 概念(ほしの・がいねん)さん
1978年、東京都生まれ。精神科医として総合病院に勤務しながら、雑誌数誌に連載を持つなど執筆活動もおこなう。また、制作ユニット「JOYZ」、コーラスグループ「星野概念実験室」、タマ伸也(ポカスカジャン)とのユニット「THE肯定s」、いとうせいこう氏がメンバーを務める「□□□(クチロロ)」のサポートギターなどの音楽活動にも積極的。

居心地のよくない現代社会をうまく生き抜くには

合理性とスピード感を重視し、白黒を瞬時に振り分けられて、おまけに弁のたつ人材……。もしかしたら多くの人が掲げるビジネスマンの理想像かもしれません。しかし、「僕自身、そういう感覚にあまりなじめない人間なんだと思います。考えをまとめるのが遅い人とか、合理性のない自分は存在価値がないと思うような人に読んでほしい」との思いで出版したのが、患者である作家・いとうせいこうさんとの共著『ラブという薬』(リトルモア)です。

「社会性から逸脱しない範囲なら、自分の心地よいグレーがどこにあるのか考えてもよいのでは」というのが星野さんの持論。「上司が黒という方針だから、社会が白という仕組みだからって、それにあわせてばかりいると人生が苦しくなってしまいますし、人のせいにしてしまい愚痴っぽくなりますよね」とも語ります。自分の心地よさを大切にしながら、現代社会をうまく生き抜く方法はあるのでしょうか。

「たとえば会社の上司が苦手で仕方がないとしても、上司か自分が異動したり退職したりしない限り、その問題を解決することはできません。だったら、そのストレスを発散したり和らげたりする方向で考えてみようというというのが『情動焦点型のストレスコーピング』というもので、ストレス対処法のひとつです。ちなみに、問題解決が可能な場合、それに取り組むのは“問題焦点型のストレスコーピング”ということになります。たとえば僕の友人で多いのは、ストレス発散の場や方法を持ち、“カルタシス”を得るようなことに取り組むことで、これは情動焦点型といえますね。夏フェスやお祭りでもいいですし、ランニングやサウナだって、それにあたると思います」(星野さん)

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大切なのは、「自分はこれがあるとストレスが発散できる」というアイデアを、元気なうちに探しておくこと。ストレスで心が窮屈になると、何も思い浮かばなくなってしまうからです。また、自分の悩みを記録しておくなどして「見える化」することも、流れていく思考のなかで、自分を俯瞰する手がかりになるそうです。

ラブという薬』には、星野さんが実際に認知行動療法のワークショップで使用しているシートが載っていますので、ぜひ参考にしてみてください。

「〇〇したい」が多いほうが、人生は心地いいものになる

もうひとつ、自分でできるストレスコーピング法として教えてくれたのが、「〇〇しなければならない」を、「〇〇したい」に変換するというアプローチ。

「極論を言うと、人の思考は『〇〇したい』と『〇〇しなければならない』の2拓だと思うんです。だったら『〇〇したい』が多いほうが、その人の人生は心地いいものになるはず。だから、日ごろから『〇〇したい』を増やす訓練をするといいと思います」(星野さん)

たとえば「早起きしなければならない」は「朝早いと電車は空いていて座れるし、朝マックを食べられるのもうれしいから早起きしたい」に変換。また、「掃除しなければならない」は「掃除したあとは気持ちがいいから、7分で片づけたい」と目標を決めてゲーム感覚にするのも効果的。

「〇〇しなけばならない」という行動をストレスだと自覚して、対策を立てたり楽しみに変換したりすることも「ストレスコーピング」なのだそうです。

職場にあふれる「〇〇しなければならない」を「〇〇したい」に変換することで、無意識に感じているストレスは軽減するかもしれません。また、「〇〇しなければならない」のあとに「わけではない」をつけることで、物事を少しだけ冷静に考え直す機会になり、「そんなに義務的に考えなくてもいいのかもしれない」という気づきが得られることもあるし、逆に「やっぱり〇〇しなければならないのか」などと、客観的に物事の本質が見極められるようになるとか。

星野さんの場合、「朝9時の診察時間までに出勤しなければならない、わけではない」と言ったところで、行かなくてはいけないことは決まっているので、「いやいや、ダメでしょ」と我に返るのだそうです。

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自分にあった精神科医は、どう見つけ、どうつきあう?

けがをしたら外科、気持ちがつらいなら精神科へ行けばいい。カウンセリングへの垣根を下げたい」という、いとうさんの思いから出版に至った本書。ひと昔前に比べれば、そのハードルはずいぶん下がったものの、「精神科や心療内科を受診してみたいけど、自分の悩みなんてそれほどではないかもしれないし、カウンセリングを受けていることは人には言いにくい……」と、なかなか一歩を踏み出せない、という人も多いようです。

「自分に厳しくてまじめな人ほど、二の足を踏んで無理をしてしまう人が多いと思います。もちろんがんばるのが悪いわけではありません。むしろ素晴らしいです。でも、『なぜか心がモヤモヤする』とか、『ストレスがたまっている感じがする』というだけで受診するのも、僕はアリだと思います」(星野さん)

星野さんのもとを訪れる人たちは、仕事や職場の人間関係から、子どもや夫婦間の問題、そして幻聴などの非日常的な症状まで、さまざまなことを打ち明けているそう。

「はじめて精神科にかかるときは、大きな病院に行ってみると平均的な治療が受けられることが多いです。それで『この先生、いいな』と思ったら少し通ってみるといいですね。『もっとこうしてほしい』と美容師にオーダーするように、精神科でも『もっと話を聞いてほしい』『漢方薬がいい』など、自分の希望を伝えていいんですよ。自分にあう精神科医を見つけるのは、自分にあう美容師を見つけるのに似ているような気がします」(星野さん)

誰にも話せない心の悩みを抱えたら、精神科医や心療内科を頼るのも悪くなさそうです。

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「いとうさんは、カウンセリングは『インスタントな親友をつくるつもりで受ければいい』と言っています。『人に弱音を吐くのが苦手な自分のような人も、対話のプロに話を聞いてもらえる。しかも、守秘義務があるので誰にバラされることもなく、30分なら30分と時間も決まっているから』と。そんな気持ちで患者さんに来てもらえるように、僕たち精神科医も研鑽を重ねないといけませんね」(星野さん)

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ラブという薬
著者:いとうせいこう 星野概念
発行:リトルモア
定価:1500円(税別)

Image via リトルモア

撮影/YUKO CHIBA (DOUBLE ONE)


対話はラブ。人間関係を円滑にする「傾聴力」って? /精神科医・星野概念さん【前編】

上司や部下など人と話をする機会は多いけれど、「ちゃんと聴く」ことはできているだろうか——精神科医が患者と向き合うときに用いる「傾聴」のテクニックは、...

https://www.cafeglobe.com/2018/07/hoshino-gainen-01.html

大森りえ

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