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私はニセモノ? いいえ「インポスター症候群」かも

The New York Times

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Agnes Lee/The New York Times

5月、わたしはロサンゼルスで、あるメディアイベントに出席した。よれよれのカーディガンを急いで引っかけ、ボサボサの髪をなでつけながら、完璧にドレスアップしたジャーナリストたちがいる部屋へ入った。

薄切りキュウリとプロシュットのトレイを持ったウェイターが「クルディテ(サラダ)はいかがですか?」と話しかけてきた。わたしはそれを3つまとめて口に放り込みたい衝動を抑えて、「けっこうです」と答えた。目の前のある仕事に集中あるのみ。その仕事とは、このプロの集まりのなかに混じって、自分がニセモノだと見抜かれないことだった

だから、インポスター症候群についてインタビューをするために、このイベントに参加したのは皮肉だったと言える。

「自分はニセモノ」と落ち込むインポスター症候群

インポスター症候群は、心理学者ポーリン・R・クランスとスザンヌ・A・アイムスによって、1978年に命名された。それは、「高い達成能力を持つという証拠があるにもかかわらず、自分には知性や実行力や創造的な能力が欠けていると信じ、知性面でうそをついているような感覚を感じること」と定義されている。インポスターとは「詐欺師」のこと。つまり、信頼度や権威や実力にかかわらず、業界や役目、立場において自分はニセモノであると落ち込む感覚のことである。

マイノリティに多いのはなぜ?

このような感覚は特別なものではなく、時として多くの人が感じるものだ。しかし、とくにマイノリティの人びとは感じることが多いという。彼らはさまざまな場面で取り上げられることが少なく、自分たちが部外者だと感じやすいからだと考える研究者もいる。インポスター症候群と人種差別が結びつくと、ストレスや不安が増大すると語るのは、テキサス大学オースティン校の教育心理学とアフリカ人離散研究の教授、ケビン・コウクリー氏である。

コウクリー教授は「マイノリティにとっては、人種差別よりもインポスター症候群のほうがメンタルヘルスに悪影響を与える判断材料ではないのだろうかと関心を寄せていました。調査をしてみたところ、まさしくその通りでした」と述べる。自信喪失ゆえに自分をまがいもののように感じたことのある人は大勢いた。コウクリー教授は、マイノリティだからといって同じ経験があるとひとくくりにはしないようにと言うが、この問題は職場でニセモノ扱いされるかもしれないマイノリティにとってはもっと複雑なのである。

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Image via Shutterstock

白人以外の「girl」は、ニッチ

脚本家で女優のイッサ・レイさんはHBOのテレビシリーズ『Insecure(インセキュア)』の共作者で主演も務めている。彼女は「いろいろな人が自分たちの物語は取るに足りないんだとわたしに話してくれます。それってイヤよね」と、前述のロサンゼルスのイベントで語ってくれた。ハリウッドは(さまざまな人を受け入れる)インクルージョンについてとくに声をあげている業界だ。セレブたちはさらなる多様性を要求しているけれど、UCLAの報告によると、女性やマイノリティはまだまだ映画やテレビの世界で描かれることが少ない。イッサさんは描写が欠けていることによって、自分自身のインポスター症候群との闘いが強調されていると言う。

「いろいろなストーリーを語る語り手として、自分には充分な価値があると言い聞かせてきました」とイッサさん。彼女は著書『The Misadventures of Awkward Black Girl』でこう言っている。「(TV番組の)『Girls/ガールズ』『New Girl/ダサかわ女子と三銃士』『NYボンビー・ガール』の共通点は? 万国共通のカテゴリー「girl」っていうのは白人。(中略)それが普通で、それが人々に受け入れられるもの。それ以外はすべてニッチ

インポスター症候群はストレスの一大原因

コウクリー教授がインポスター症候群を研究するきっかけは、彼は自分の分野では民族的マイノリティであり、インポスター症候群を感じる経験が多かったからという。

「ニセモノのように感じていました。自分はここにいるべきではない人間なのだと他人に見透かされているような気がしていました。だから、この問題に興味を持つようになったんです」

コウクリー教授は研究をとおして、インポスター症候群はマイノリティがすでに感じている差別を増大させることもあり、それによってストレスが高まることを発見した。その結果はアメリカ心理学会の「The Journal of Counseling Psychology」誌に発表された。

マイノリティは違う視点を提供できる

LinkedIn(リンクトイン)のグローバルダイバーシティ・インクルージョン・ビロンギングの担当主任ロザンナ・ドュルシー氏は、マイノリティの人には自分の視点や信頼性や権威を否定しだす可能性があるという。

「ひとりきりでいると、自分に疑問を持ち始めるだけではなく他人から同意を求めるようにもなります」と彼女は言う。

彼女はまた、マイノリティの社員はユニークな視点を持っていること、そしてそれは価値ある財産だということを忘れないようにと付け加える。

「マイノリティの意見は周囲の環境に必要なものです。もし声を上げなければ、機会が失われることになります。会議で意見や見解を述べるのはリーダーたちだけというときでも、(マイノリティの人は)自分自身の視点について自信を持たなければいけません」と言う。

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インポスター症候群への対処法

意見をはっきりと言えるようになること、それは言うは易く行うは難し。とくに本人が部外者のように感じているときには。ドュルシー氏はこれは組織的な問題であり、企業が取り組むべきだと言う。ドュルシー氏やコウクリー教授は、個人レベルでは次のような「インポスター退治」テクニックを提案している。

仲間とのグループに参加する

自分と似たような生い立ちとや経験を持った仲間を見つけること。「インポスター症候群の傾向が高い人は、誰にも言わずひとりで苦しんでいるのがふつうなんです」とコウクリー教授。「もしそう感じているなら、あなたはひとりではありません」。彼は同じような人たちのグループに参加するか、そういうグループを立ち上げることを薦めている。「性別や民族など自分と同じような人たちとの集まりなら、おたがいの弱さや不安を語り合えます

メンターを持つ

メンターを持つことは、インポスター症候群に悩む人にはとくに有益だ。なぜなら、メンターは仕事の上で支えになってくれるから、とドュルシー氏は言う。理想なのは、ある状況にどう対応するかについてアドバイスをしてもらえる、メンティと同じような経験があるメンターだ。

自分が成し遂げたことを書きとめる

日記を毎日つけて、他人から受けたポジティブなフィードバックをすべてを書きとめると良いとコウクリー教授は言う。

1週間または1か月間日記を続けてみて、良いフィードバックをもらえたこと、いい仕事をしたと評価されたことや達成できたことを振り返ってみるといい。

ニセモノのように感じることがあったら、この日記を読み返せば、自分の力で今の立場を勝ち取ったことを思い出せるはずだ。

© 2018 New York Times News Service[Dealing With Impostor Syndrome When You’re Treated as an Impostor/執筆:Kristin Wong](翻訳:ぬえよしこ)

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