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男性優位のバレエ界を変えたい。ベテランダンサーの勇気

The New York Times

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スタジオで新しいソロ作品を練習するアシュリー・ボーダー。2018年6月14日撮影(Andrea Mohin/The New York Times)

ニューヨーク・シティ・バレエ団のプリンシパル・ダンサー、アシュリー・ボーダー(34)とローレン・ラベット(26)はオフシーズン中も休む間がない。この夏ジョイス・シアターで開催されるバレエ・フェスティバルで上演予定のソロ作品を作っているのだ。

バレエ・カンパニーに所属するダンサーが、オフシーズン中に独自のプロジェクトに取り組むのは珍しいことではない。伝統ある組織では実現しづらい、より自由度の高い表現にチャレンジするためだ。

女の世界だと思っていたけど、実際は……

だが、「アシュリー・ボーダー・プロジェクト」を率いるボーダーには、他のダンサーとは違うミッションがある。それはクラシック・バレエの世界では圧倒的に少ない女性やマイノリティによる作品を観客に届けるというものだ。振付家としても活動するラベットなど複数の女性たちに製作を依頼し、作品を世に送りだしている。

昔も今も、トップダンサーの地位を占めるのは女性たちだが、振付に関してはほとんど男性が担ってきた。芸術監督も然りで、少なくとも米国では大多数が男性だ。先日パワー・ハラスメントとセクシャル・ハラスメントの疑惑が持ち上がり、ニューヨーク・シティ・バレエ団を辞任したピーター・マーティンスもその1人だった。

声を上げるのはとても怖いこと

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ニューヨーク・シティ・バレエ団のプリンシパル・ダンサー、アシュリー・ボーダー。2018年6月15日撮影(Nathan Bajar/The New York Times)

性差による機会の不平等は、長い間評論家や関連団体などから指摘されてきた問題だが、バレリーナが意見を公にするのは珍しい。それゆえ、この春ダンスマガジン誌にボーダーが書いたコラムは、注目に値するものだった。#MeTooやTime’s Up運動の盛り上りを受けて掲載された記事のタイトルは、ずばり「バレエ界にもフェミニズムの波を」というものだ。

リンカーン・センターで行われたインタビューでボーダーは次のように語っている。「みんな復讐を恐れて意見を言えずにいます。運営側は男性がほとんどで、反抗的と見なされると機会を失う可能性があるからです。私にもそういう経験があります」。

彼女はもう、がまんするのはうんざりだと感じている。「今こそ声を上げる時です」

若手からも信頼されている

ボーダーは自分の声を受け止めてくれる人が大勢いることを知っている。18年前にニューヨーク・シティ・バレエに入団した彼女は今や、このバレエ団で最も地位の高いダンサーの一人だ。彼女はバレエ団の後輩だけでなく、世界中のバレエ・ダンサーの卵たちから尊敬されている。

ニューヨーク・シティ・バレエ団のダンサーで、ボーダーのプロジェクトにも参加しているデビン・アルベルダは、ボーダーのことを「自信に満ち、聡明で、自分の持つ力を自覚している」と評している。

他の誰よりも転ぶバレリーナ

ボーダーの力強さは、彼女の踊りからも感じ取ることができる。キビキビとした動きと、瞬発力を活かしたダンス・スタイルを持つ彼女は、よく転ぶことでも知られている。後輩ダンサーで、一緒に作品製作に取り組む振付家でもあるラベットは、次のように語っている。

「彼女は力をセーブしないんです。他の誰よりも転んでるかもしれないけれど、その分、抜きん出たパフォーマンスを見せてくれます

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振付家のローレン・ラベット(右)と共に新作を製作するアシュリー・ボーダー(左)。2018年6月14日撮影(Andrea Mohin/The New York Times)

バレリーナは黙って踊っていればいいの?

ダンサーたちが表立って意見を言わない理由は、仕返しが怖いからだけではない。バレエ特有の背景がそこにはある。非言語的な芸術で、個人が組織に従うことを求められる世界だからだ。

ボーダーは語る。「つべこべ言わず1列に並び、正確にステップを踏んでターンする。私たちは言われた通りに行動することに慣れきっているのです」。人数が多く、代わりがいくらでもいる女性ダンサーの方が、男性よりも規範から外れるプレッシャーは大きいという。

声をあげられる強さはどこから?

これまで以上にはっきりと、公の場で意見を述べるようになったのには、2つの理由があるとボーダーは言う。2014年に立ち上げたプロジェクトのミッションを、女性活躍にシフトしていったのもこのためだ。

ひとつは、2年前に娘が生まれたこと。娘のためにも、今より女性が生きやすい環境を作りたいと思ったからだ。もうひとつは、仕事の合間を縫って大学で政治学を学び始めたこと。世の中の仕組みを知るにつけ、自分が常に男性のために働いてきたことに気づいたからだ。

変化は始まったばかり

この数年の間に、ニューヨーク・シティ・バレエのレパートリーには、女性振付家による作品が徐々に増えてきた。だが本格的な改革はまだこれからだ。ボーダーによると、彼女の入団以来、バレエ団で仕事をした40数人の振付家のうち女性は7人。作曲に関して言えば、女性が書いた曲で踊ったことはただの一度もないそうだ。

アシュリー・ボーダー・プロジェクトの作品は、7月初旬にニューヨークのジョイス・シアターで上演される。プロジェクトを率いるボーダーは、性別も人種もできる限り多様なメンバー構成を目指したという。

振り付けはラベットのほか、アナベル・ロペス・オチョア、リズ・ゲリング、アブドル・ラティフらが担う。5つの演目のうち4つは女性の作曲家が手がけた曲が使われる。

男性の同僚のなかには、ボーダーのプロジェクトを単なる流行と軽んじる者もいるという。「最近のバレリーナはみんなやってるよね」という輩に対し、彼女はこう言い返すそうだ。「そうよ。私たちはやっと自分たちの力を試そうと立ち上がったの。たくさんの勇気と時間を必要としたわ。それを簡単に否定しないで」。

© 2018 The New York Times News Service[原文:Ashley Bouder, the Feminist Ballerina With a Mission/執筆:Siobhan Burke](抄訳:Tom N.)

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