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廃棄食品ビジネスを立ち上げたこの女性。すごすぎて魔法使いに見えてきた

The New York Times

ビールは仕事の1日を終えるのにパーフェクトな飲み物だが、ベルタ・ヒメネスにとっては廃棄食品を減らす新しい方法へのきっかけだった。

博士号取得して製粉ビジネスを立ち上げた移民女性

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2018年4月9日撮影。ニューヨークのライズプロダクツの仮設キッチンで製粉するベルタ・ヒメネス。(George Etheredge/The New York Times)

ビール製造では、毎日何百万ポンド(何百トン)もの穀物が使われて捨てられている。使われた穀物は、動物の飼料やコンポスト可能な製品や燃料になってはいるが、食品としての価値はこれまでほとんど検討されることはなかった

だが、35歳のヒメネスの立ち上げた小さなスタートアップ「Rise Products(ライズプロダクツ)」は、使用済みの穀物を粉にしている。その穀粉は、ニューヨークや遠く離れたイタリアのサステイナブルなベーカリーやキッチンで使われるようになっている。

エクアドルから移住してきたヒメネスがビールの製造工程で出る廃棄食品のリサイクルを思いついたのは、2015年、ニューヨーク大学のタンドン・スクール・オブ・エンジニアリングで博士号の勉強をしていたときだった。

ビール醸造所で廃棄される穀物をどう再利用する?

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2018年4月9日撮影。ニューヨークのライズプロダクツで、クラフトビール醸造所からの使用済み穀物が乾燥過程にかけられるところ。(George Etheredge/The New York Times)

産業廃棄物を削減する手段を見つけようと、考えを同じくする仲間とサイドプロジェクトを始めた。仲間には彼女と同じような移民が多かった。

そしてすぐに思いついたのがクラフトビールだった。みんなが大好きなクラフトビールには問題点があったからだ。

ヒメネスが住むブルックリンで穀物を破棄していたビール醸造所は、最近数えたところでも20か所はあった。ヒメネスと、大学院のクラスメートでライズ社をともに設立したアシュウィン・ゴピは穀物のサンプルを分けてもらい、それをどう再利用できるかを考え始めた

ゴピは、当時「Greenpoint Beer & Ale Co.(グリーンポイント・ビール&エール)」社にいたジェフ・リオンズに連絡を取った。「食品ロスを減らそうとしていると言うじゃないか」とリオンズ。さっそくゴピたちが運べるだけの量、タッパーに3個分の穀物を提供した。「穀物にはまだ栄養的な価値はあったのに、醸造所ではただ捨てているだけだったしね

試行錯誤の末、オオムギの「穀粉」を作ることに

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2018年4月9日撮影。ニューヨークのスタートアップ、ライズプロダクツではオオムギを製粉して、食品ロスを減らそうとしている。ビール醸造には穀物、通常はオオムギが欠かせないため、ライズ社ではその使用済みオオムギを粉にしている。(George Etheredge/The New York Times)

醸造には穀物が欠かせない。通常使われるのはオオムギだ。湯につけておくとアルコールの製造に欠かせない糖分が溶け出す。液体に糖分が溶け出したら、穀物は捨てられる。

オオムギはヘルシーな食材だと知ったゴピとヒメネスと、3人目の設立者であるジェシカ・アギレはそのまま食べてみた。穀物カスは玄米のような見た目だったが、味も玄米のようだった

まずそれをポリッジ(おかゆ)にしてみた。クッキーやケーキにも混ぜてみた。乾燥させた穀物をベーカリーにも持っていってみたが、いい手応えは返ってこなかった。

結局、ブルックリンのベーカリー「Runner & Stone(ランナー&ストーン)」のオーナーのひとりであるピーター・エンドリスから穀粉にしてみることが提案された。「ビールの使用済み原料の穀物を粉にすることは理にかなっていると思えたから」と彼は言う。

クッキーにパウンドケーキ、パスタまで

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(George Etheredge/The New York Times)

いまでは、ライズプロダクツはクイーンズ区ロング・アイランド・シティの商業キッチンで穀粉を作っている。穀物はオーブンでまず乾燥されてから砕かれ轢かれて、きめの細かい粉になる。

それはすべて手作業なので、卸値で1ポンド(約450グラム)あたり8ドル(約880円)という値段になってしまうのだ。小売では16ドル(約1770円)。同社は、資金調達を増やし、もっと大きな施設へ移り製造過程を自動化できれば、小売価格は下がると言っている。

食品ロスを減らすことへ関心が高まっているがゆえに、多くのシェフやベーカリーは、同社が「スーパーフラワー(粉)」と呼ぶこの穀粉を使用したがっている

ランナー&ストーンのエンドリスは、ライズ社の穀粉とふつうの小麦粉を半々にしてショートブレッドクッキーを作っている。

ブルックリンにある「Bien Cuit(ビアン・キュイット)」では、ライズ社の穀粉で作ったシュトロイゼルを使って、チョコレートとオオムギとドゥルセ・デ・レチェのパウンドケーキを作っている。

ブルックリンでパスタを製造している「Sfoglini(スフォグリーニ)」では、デュラムセモリナとライムギとライズ社の粉を混ぜてパスタを生産している。

大企業やイタリアのトップシェフも注目

食物ロスをなくそうと闘う人がもうひとり、イタリアにいる。シェフのマッシモ・ボットゥーラだ。2017年にヒメネスは思い立って、サンプルを提供する旨のメールを彼に送った。ボットゥーラはサンプルを希望した。そのあと彼のスタッフから15ポンド追加の連絡が来た。

穀粉をどう使うのかはいまのところ不明だが、いつかイタリアのモデナにある、彼のレストラン「Osteria Francescana(オステリア・フランチェスカーナ)」にライズ社の穀粉を使った料理が登場するかもしれない。ちなみにこのレストランは、最近世界のベスト50レストランにランク入りしている。

ライズ社のパートナーらによると、ケロッグやホールフーズマーケット、ネッスルの契約製造者、アメリカの冷凍ピザのブランドのディジョルノ・ピザの子会社などの大企業からもサンプル提供の依頼が来ているそうだ。

(イタリアンパスタのバリラ社は、サンフランシスコ地区の小さなスタートアップ「ReGained(リゲインド)」に投資している。リゲインドは、醸造所の使用済原料や自社の穀物カスからの穀粉を使ってグラノラバーを製造している。)

どんなレシピよりも400倍すばらしい出来栄え

高級キッチングッズを扱うチェーン店の「Sur La Table(スーラ・ターブル)」のナショナルシェフ、ジョエル・ガモランは、昨年夏にライズ社の穀粉の袋を開けたとき、その香りがとても気に入ったと言う。

ふつうの小麦粉にはない、ナッツのようなすばらしい香りがあるんです」。ガモランは自分の料理教室でライズ穀粉を使いたいと言うものの、価格が下がらないと実行は難しいところだ。

オオムギはコムギよりグルテン含有量が低いので、ビスケットやパンなどそれほど膨らむ必要のない料理に適している。ガモランはライズ穀粉をビスコッティや固めのショートブレッドやウエファースなどに使ってみた

これまでの「ぼくが作ったどんなレシピよりも400倍すばらしい」出来栄えだったと言う。

ふつうの小麦粉よりも高い栄養価

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2018年4月9日撮影。ニューヨークのスタートアップ、ライズプロダクツでの製粉過程。ビール醸造には穀物、通常はオオムギが欠かせないため、同社では地元のビール醸造所から使用済み穀物を受け取り、それを穀粉にしている。製品はサステイナブルなニューヨークや遠くイタリアのキッチンやベーカリーへ送られる。(George Etheredge/The New York Times)

醸造過程で糖分がなくなるため、ライズ社穀粉の炭水化物含有量はふつうの小麦粉の3分の1。そして、オオムギを原料とするのでタンパク質は2倍、食物繊維は12倍も含んでいる。

現在、ライズ社は、ブルックリンにある複数のクラフトビール醸造所から週に1200ポンド(約545キロ)の穀物を受け取っている。完成品の穀粉1ポンド(約450グラム)を作るのに必要な使用済み穀物は4.5ポンド(約2040グラム)。

事業拡大を目指して、資金とメンターシップが提供される複数のビジエスアクセラレーターに応募している。2016年、ヒメネスが博士号を取得したあと、ライズ社はニューヨーク市のアクセラレーターであるFood-Xに参加して、製粉過程の時間短縮 になる機械化プランを完成させた。その過程である弁護士とつながることができ、2017年、同社は製粉過程を特許申請することができた。

© 2018 New York Times News Service[From Brewery to Bakery: A Flour That Fights Waste/執筆:Larissa Zimberoff](翻訳:ぬえよしこ)

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