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ベルリン・クラブカルチャーは彼女たちの手中に

The New York Times

日曜の午前4時過ぎ。テクノシーンにその名をとどろかせるドイツ・ベルリンの伝説的なクラブ、ベルグハイン。上階のパノラマバーでは、レジデントDJのタマ・スモことケルスティン・エゲルトが混み合うフロアを盛り上げていた。

この時間になると、外ではいつものように入場待ちの列がますます長くなっていた。オランダ生まれのプロデューサー・ステフィ、ミュンヘン育ちのDJヴァージニア、今世界で最も注目されているDJの一人、アメリカ人テクノプロデューサーのアヴァロン・エマーソンの登場を心待ちにしている客たちだ。

ベルグハインだけではない。ベルリンでは市内各地で女性DJが活躍していた。アバウト・ブランクでクロージングセットを担当していたのはイタリア人のマダルバ。老舗テクノクラブ、トレゾアではレジデントDJのバーバラ・プライジンガーが自身のマンスリーイベントのヘッドライナーを務めていた。

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テクノミュージックの聖地ベルリンでかつて行われていた大規模な音楽イベントLOVE PARADE (Photo by Sean Gallup/Getty Images)

「出演者が全員男性」は過去のもの

世界中のアンダーグラウンドなエレクトロニカシーンの中心地との呼び声も高いベルリンでは、女性DJの活躍は今に始まったことではないが、特にここ数年は目覚ましい。女性アーティストが脚光を浴び、男子専用クラブといった昔の雰囲気が一掃されるようになった背景には、女性が運営するブッキングエージェンシーやコミュニティグループのネットワークの発達がある。

出演者が全員男性といった風潮は大部分のクラブで過去のものとなり、「Pitchfork」「Mixmag」「Fader」といった音楽メディアも、ベルリンを拠点とする女性アーティストを評価するレビューを数多く掲載。一方で、こうした女性DJたちが他国に遠征し、世界中の音楽フェスティバルのラインナップやクラブシーンも多様化してきている。

最も注目を集めるロシア人DJ、ニーナ・クラヴィッツ

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DJのニーナ・クラヴィッツ。2017年9月8日、ニューヨーク・ファッションウィークのカルヴァン・クラインのパーティーで。(Deidre Schoo/The New York Times)

「今ではメインステージを女性が務めるのも普通のことに。私がDJになったときは誰もいなかった」。こう話すのは、ロシア人のテクノプロデューサー、ニーナ・クラヴィッツだ。ベルリンのクラブシーンにおける女性DJの地位向上を具体的に示す存在としては、おそらく彼女を置いて他にいない。

クラヴィッツは、ここ最近ではアメリカ人アーティストのセイント・ヴィンセントとリミックスアルバムを作るなどのプロジェクトを手掛け、さらに2つのレーベルを立ち上げるなど多忙を極めている。ロシア東部シベリアのイルクーツクで育ったクラヴィッツは、モスクワに移ってから歯科医として働いていた時期もある。ダンスミュージックシーンに参入したのは2000年代半ば。2011年には自身でボーカルを吹き込んだ官能的なエレクトロニカ「Ghetto Kraviz」をリリースし、アンダーグラウンドのクラブには欠かせないアーティストとなった。

セクシュアリティ議論の矢面にも

キャリアが花開いたのはベルリンに拠点を移してから。だが多くの女性アーティストと同じく、クラヴィッツが女性であること、そしてそのルックスはメディアでたびたび話題の中心になるようになった。時には、素晴らしい作品を生み出したことよりそうした面が注目され、性差別やセクシュアリティをめぐって議論の矢面に立たされることもあった

2013年のドキュメンタリーにはホテルのバスタブの中で泡で全身を隠した姿で登場し、ネット上では激しい批判の声も上がった。その中の一人、アメリカ人の音楽プロデューサー、メイシオ・プレックスことエリック・エストーネルは、「セクシュアリティと外見」が、努力して作ったものより重要視される風潮は嘆かわしいと批判した(これに対してクラヴィッツはフェイスブックに500ワードの反論のメッセージを投稿し、エストーネルは最終的に謝罪した)。

その後、クラヴィッツは2つのレーベルを立ち上げ、批評家からも絶賛される曲を数曲発表。イビサの有名クラブに招聘され、フェスのヘッドライナーにも起用されながら、2018年5月には中国の万里の長城でDJセットもこなして話題になり、2017年末には「Mixmag」のDJオブ・ザ・イヤーにも選出された。

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2018年ベルリンのファッションイベントでプレイするDJカーネル・シュナイダー (Photo by Andreas Rentz/Getty Images for Telekom Fashion Fusion)

私たちにもできる

エレクトロニックミュージック界の多くの女性有名アーティストのPRを担当する会社テイラード・コミュニケーションを2006年に設立したメリッサ・テイラーは、「女性の変化に一目置く動きが起きている」と話す。ベルリンでは「独自に活動している女性たちももっとたくさんいる」

この数年では、自分でレーベルを立ち上げるDJも何人か出てきた。イギリス生まれのテクノアーティスト、ポーラ・テンプルのレーベル、ノイズマニフェストは、女性やクィアのアーティストたちによるプロジェクトを扱っている。

一方ベルリンでは、所属しているのも運営している側も若い女性というポリー・アーティスツやフューチュラ、オッド・ファンタスティックなどのエージェンシーも生まれている。

「数年前にはなかった動き」と話すのは、ポリー・アーティスツの設立者の一人、キーラ・シンクレアだ。同エージェンシーは、多様性のあるラインナップだけに参加する男性DJたちとも提携している。

「女性がDJをやっているのを目にすると、自分自身の感じ方が違う」とシンクレアは話す。「うわあ、私にもこういうことができるかもしれないんだ。そういう特別な感慨を覚える」

昔から女性DJはいた、メディアに無視されていただけ

世の中からのニーズが高まるにつれ、レーベルのクリームケーキのように、DJのワークショップや多様性をテーマにしたパネルディスカッションも行うプロジェクトが増えてきた。パーティーコレクティブのルーム4レジスタンスも、下積みを積んだ女性DJやアーティストたちに活躍の場を提供している。

「音楽シーンに女性がいなかったわけじゃない。女性はメディアに無視されていただけ」とテイラーが名前を挙げたのは、1990年代の女性DJのパイオニア、エレン・エイリアングートルン・グートだ。グートは西ドイツのエレクトロニックミュージックのアーティストで、インダストリアルミュージックの実験的バンドの代表格アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンに参加。その後、モニカ・エンタープライズというレーベルを立ち上げた。

だが、インターネットやソーシャルメディアの影響力が高まるにつれ、「多くの女性たちが自分でイメージコントロールを行い、認知度を自ら高められるようになった。そうして、メディアで情報を管理する立場にいる男性に頼ることを、必要としなくなってきた」とテイラーは指摘した。

「昔とは違って、みんな認められるようになり、チャンスを得られるようになってきた」とクラヴィッツは言う。「それはすごいことだと思う。一方で、今のアーティスティックな流れに融合するのではなく、私たちが『女性アーティスト』というくくりで話題を提供するリスクもあると思う」

「女性たちには、ただのアーティストであってほしい」

© 2018 New York Times News Service[In the Capital of Electronic Music, Women Rule the Scene/執筆:Charly Wilder](抄訳:Misako N)

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