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グッバイ水着審査。ミス・アメリカの新時代

The New York Times

50年前、米ニュージャージー州アトランティック・シティのボードウォークで、あるパフォーマンスが行われた。女性たちが水着姿で美しさを競うミス・アメリカへの抗議行動として、100人のフェミニストたちがブラジャー、ガードル、ヘアカーラー、つけまつげ等々の「女性への拷問具」を巨大なゴミ箱に投げ入れたのだ。そこには「自由」という文字が書かれていた。

抗議行動の参加者たちにとってミス・アメリカはその当時でさえ、時代遅れなものと映っていた。ほぼ男性ばかりで構成された審査員が女性の体型を品定めし、ある時期までは有色人種の出場が禁止されていた。にもかかわらず、コンテストはアメリカの全世帯の4分の3がテレビ放映を見るほどの人気だった。

1968年の抗議イベントの主催者の一人、作家のアリックス・シュルマン(85)さんはこう振り返る。「その頃はみんながミス・アメリカを見ていて、アカデミー賞と同じくらい注目されていました」。

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最後の水着審査になるか? 2017年秋に開催された2018年大会の1シーン。 (Photo by Donald Kravitz/Getty Images for Dick Clark Productions)

しかし、ついに水着審査が廃止に

当時の活動家たちが果たせなかったことが50年後、#MeToo運動のおかげで実現した。コンテストの中で最も批判が集中していた水着審査が廃止になったのだ。

廃止は今年、2018年3月に運営団体であるミス・アメリカ機構の委員会で全会一致で決定された。変更は9月にアトランティック・シティで行われる全国大会決勝戦からで、州や地域レベルの大会での変更時期は未定だという。

背後には、女性幹部の就任が

ミス・アメリカ機構は昨年、スキャンダルでメディアを賑わせたばかり。サム・ハスケル前CEOが別の幹部との間でやりとりしていたメールに出場経験者への性差別的な言及が度々あったことが発覚し、12月にハスケル氏ら幹部が辞任した。新しいCEOは女性で、刷新された理事会メンバーも9人中7人は女性だ。

6月5日、水着とイブニングドレスでの審査を今後は行わないと発表したグレッチェン・カールソン理事長はFOXニュースの元キャスターで、FOXニュース元CEOをセクシャルハラスメントで訴えたことでも知られる。

「奨学金は魅力だけど、水着はイヤ」

自らも1989年度のミス・アメリカであるカールソン氏は、イベントをもっとインクルーシブなものにしていきたいと述べ、あくまでも「コンペティション」であり、「美人コンテスト」ではないとした。機構のウェブサイトには「ミス・アメリカ2.0 ウェブサイトもショーも生まれ変わります」とあり、イメージを変えようとしていることが伝わる。

カールソン氏は次のように語っている。「奨学金プログラムには惹かれるけど水着で歩き回るのは嫌。多くの若い人からそう言われてきました。その気持ちはよく分かります。私も30年前に出場した時はそうでした」。

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2018年大会でミス・アメリカに輝いた女性。(Photo by Donald Kravitz/Getty Images for Dick Clark Productions)

ミス・アメリカ機構はずっと以前から、このイベントを美人コンテスト以上のものだとうたってきた。出場者は社会貢献活動に携わることが求められるし、奨学金制度もあるというのがその理由だ。

とはいえ長い間、水着審査はコンテストを象徴するものだった。

そもそも、いつから続いているの?

最初のミス・アメリカ・コンテストがアトランティック・シティで開催されたのは1921年。米国で女性が投票できるようになった次の年にあたる。9月第1月曜日の「労働者の日」を過ぎると観光客が減るリゾート地を活気づけようと持ち上がった企画だった。

「その始まりから、女性の身体を利用して商品を売り込む手法そのものでした」。ニューヨーク・タイムズの記事のなかで作家のジェニファー・ワイナーはそう書いている。

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1981年9月のミス・アメリカの水着審査。 (Sara Krulwich/The New York Times)

当時、公共の場に水着姿の女性が現れることはまずなかった。というのも、それは違法だったからだ。イベント開催にあたり、期間中は特例として認められるよう処置が取られた。

容姿を競うだけだったコンテストに、特技を披露するタレント審査が加えられたのが1936年。出場条件は18歳から28歳までの未婚女性。1940年までは「健康であること、白人であること」が条件として明記されていた。アフリカ系の女性が優勝したのはようやく1984年になってのことで、バネッサ・ウィリアムズが王冠を勝ち取った。

中には、水着着用を拒んだ人も

フェミニズム運動の先駆者、グロリア・スタイネム氏は5日の発表を受けて次のように述べた。「ミス・アメリカは、女性限定の奨学金制度では米国で最大規模のものです。にもかかわらず、選考基準として重視されるのは知性よりも容姿です。もし男性にこの基準が適用されたら『だから中国に負けるんだ』と批判されるに違いありません」。

運営団体の意向に始めて逆らった女性の一人が1950年度の優勝者、ヨランド・ベットビーズだった。ミス・アメリカ任期中のプロモーション活動に義務付けられていた水着着用を拒み、騒動となった

1995年には水着審査廃止の是非を問う視聴者の電話投票が行われたが、3分の2がノーと答える結果となった。

今後は「容姿で選ばない」と言うものの……

ABCテレビで水着審査廃止を発表したとき、カールソン氏は「これからは容姿で選ばない」と語っていたが、型にはまった美の基準を捨てられたとして、今後どこへ向かうのだろうか。

2017年の審査員マニュアルには優勝者のあるべき姿が次のような順番で列記されている。「美しく、弁舌巧みで、優れた知性を持ち、特技があり、若い世代に共感でき、年相応で、カリスマ性があり、溌剌としていて、言葉では言い表せない特別な魅力があり、責任をもって社会貢献活動に取り組むことができ、自分自身でいることを恐れず、協調性があり、時間を守り、臨機応変であること」。

続けてこうも書かれている。「アメリカ国民はミス・アメリカが美しく、健康な身体の持ち主であることを期待している。これは音楽や映画、スポーツなどのセレブリティに対する期待と同じである」。

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ミス・アメリカ・コンテストのタレント審査。 (Photo by Donald Kravitz/Getty Images for Dick Clark Productions)

本音は隠せないのでは?

ミス・アメリカについての本を執筆しているマーゴ・ミィフリン教授は、ワシントンポスト紙への寄稿文で次のように書いている。「女性の立場向上を尻目に、ミス・アメリカは現状維持にこだわってきた。奨学金制度を導入したり、社会貢献活動を条件に入れたりして建前上は変化しているように見せてきたが、本音は隠せない。いくら頭が良くて才能に溢れていても、女性は美しくない限り負け犬だという考え方がそこにある」。

女性の身体への眼差しを問い直すきっかけに

#MeTooがきっかけでハリウッドや、政界、そして世界中の職場が変わり始めている。ミス・アメリカの変化もその流れのなかで訪れた。セクシャルハラスメントを巡る議論が広がるにつれ、この社会のなかで女性の身体がどう見られ、消費されているのかということを考える機運が生まれたのだ。

だが、まだ変化は序の口だという声もある。

作家のジル・フィリポビックはツイッターに次のように書いている。「ミス・アメリカが完全に性差別と決別したいなら、おそらくミス・アメリカをやめないといけないでしょう」。

© 2018 The New York Times News Service[原文:Goodbye, Swimsuit Competition. Hello, ‘Miss America 2.0.’/執筆:Jessica Bennett](抄訳:Tom N.)

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