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20代でガン。守ってくれたのは、希望であり魔法の「ぬいぐるみ」

The New York Times

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ベルベット生地のウサギのぬいぐるみと出会ったのは34年前のこと。たれ耳の間に銀のティアラを冠り、「守り神の妖精ウサギ」というタグが付いていた。

20代で、アソコにガンを患った

私は当時20代の半ばで、ガンを患っていた病院を出たり入ったりしていた5年間、いつもこのウサギと一緒だった。26歳の博士課程提出資格者だったにも関わらず、人にウサギを見せるのを恥ずかしいと思ったことは一度もなかった。

私が睾丸のガンだと診断されてすぐに、友達のシンシアがウサギをプレゼントしてくれた。魔法の力があるのよ、と何度も言いながら。

後から魔力をアップさせるために、ウサギがはいているチュチュと合わせた金ラメの魔法の杖を追加してくれた。私をガンから守ってくれるようにとの心遣いだった。

病気に関する論文を読み漁った

私のような人間は魔法なんて信じないんじゃないか、とあなたは思うかもしれない。「事実とデータこそが絶対だ」という科学の時代に育った私は、マンハッタンの有名な進学校を卒業した。

最新テクノロジーを賛美する1964年のニューヨーク万国博覧会には3回も行った。科学の力でよりよい生活が手に入ると心から信じていた。

診断が下った当初、自分の病気に関連する論文を片っ端から読み漁った。信頼できる情報源を参考に、最良の治療を受けたいと思ったからだ。

受け入れがたい、少しの確率

生き残れる確率はそこそこ高いと分かったが、それでは不十分だった。20代の私は、30歳までに死ぬ確率がわずかでもあるのが受け入れがたかった。科学は100パーセントの保証を与えてくれなかったのだ

そこへウサギが登場する。運を高めるために、医学とは別の方法を必要としていた私のもとへ。

非科学的なのは分かっている

こうした気持ちになるのは、私だけではない。『Believing in Magic: The Psychology of Superstition(魔法を信じるということ:迷信の心理学)』の著書であり心理学者のスチュアート・ヴァイズ博士から聞いたところによると、多くの人は、ギリギリの状態に置かれたとき、非科学的なことを信じるようになるそうだ。

医学では治らないと分かったときに心に隙間が生じ、より優れたものを求めるようになるという。迷信や魔法、超自然的な現象や宗教などに気持ちが向くのだ。

ヴァイズ博士によると、そう言う人は大勢いるそうだ。

私自身も医学的な治療はずっと受け続けた。専門医のもとで手術を3度、化学療法を4回。不安を抱えつつその後、何年も治療を続けた。でも医者だけに運命をゆだねたわけではかった。妖精ウサギがいつも私を守ってくれた。

昔から人々はお守りの力を信じてきた

知識万能主義によって信心が隅に追いやられるまでは、医者も魔除けを持ち歩いていた。中世の記録にもそうした行為が記されている。医学的知見に基づいた治療に代わるものとしてではなく、それを補強する手段として使われていたのだ。

カンザス大学医療センターに所属する小児科医であり生命倫理学者でもあったウィリアム・バルトロミ博士は、ガンにかかった後も多くの文章を書き残した。そのなかには闘病に関するものだけでなく、40匹のカエルのコレクションについての文章もある。

「カエルは幸運を呼ぶお守りだと、彼は信じていました」。バルトロミ博士の友人で、ハーバード大学医学部で生命倫理学の講師を務めるマーサ・モンテロ博士は言う。おかげでバルトロミ博士は当初予想されていたよりずっと長い、「素晴らしい5年間」を過ごしたという。私はこうした魔法を信じている。

あなたは私のことを変人だと思うだろうか? 私はそうは思わないけれど。とはいえ変人はみな、自分がそうだとは認めないものだが。

暗示や儀式、信じる心の効果

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数年前、ハーバード大学医学部のテッド・カプチャック博士は、ニューヨーカー誌の取材に応え、次のように話している。「暗示や儀式、そして信じる心は、医療のひとつの重要な構成要素だと考えています」。そのうえで「こうした考えは科学者たちの不評を買ってしまうのですが」と続けている。

カプチャック博士はハーバード大学医学部で、プラシーボ(偽薬)効果と、交流セラピーの効果を調べる研究チームを率いている。博士たちが目指すのは、身体の健康に心がどういう影響を及ぼすのかを明らかにすることだ。

上記のニューヨーカー誌の記事でカプチャック博士は「何百年も前から医者たちは暗示によって体の状態が変化する人々がいることを認識していた」とも語っている。しかし、その変化がなぜ、どのようにして起こるのかは分かっていない。

カプチャック博士は、偽薬、儀式、信心、お守りの効果について調べる多数の研究に携わり、論文を発表してきた。手術や医薬に比べるとごくわずかではあるが、こうしたものには一定の効果があると博士は見ている。

生きるか死ぬかという時、この「ごくわずか」の差は大きい

美や芸術、言葉が不安を和らげてくれる

ガンと診断されて5年後に私は完治した。科学の力によるところが大きかったと信じる一方で、ウサギに希望を託したことも影響したと思っている。不安を和らげ気持ちよく過ごすことが、よかったのではないかと。

証明はできないけれど、だからといってそれが本当でないとは言えない。カプチャック博士は次のように語っている。「分子生物学的な現象で全てを語れると思うのはそろそろやめにしないといけません。美しいものや芸術に触れること、また医師の言葉などによって患者の状態は変わるのです」。

希望であり、魔法のウサギ

私は今、少しくたびれてきたウサギを妹のジュリーに貸している。彼女は昨年の秋に卵巣ガンと診断された。30年ものあいだ名無しだったウサギに、ようやくラメルという名前がつけられた。今では、ラメルは擦り切れたチュチュの他に、妹の友人がプレゼントしたたくさんのお守りを身につけている。

少し前、妹にとってラメルは何を象徴しているのかを聞いてみた。するとすぐに答えが返ってきた。「美、信じる心、愛、受け入れる気持ち、幸福」。それはまさに、希望であり、魔法だった。

© 2018 The New York Times News Service [原文:Do You Believe in Magic? I Do/執筆:Steven Petrow] (翻訳:Tom N.)

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