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サンフランシスコのレストランからウェイターがいなくなった

The New York Times

「Souvla(スーブラ)」は、サンフランシスコにある人気ギリシャレストランだ。直火で焼いた肉がインスタ映えしそうなサンドイッチかサラダになって、ギリシャワインとともに出される。気の利いたつけあわせには、ビーンズリーフやハリッサ入りのヨーグルト、ミチトラチーズがある。

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Jason Henry/The New York Times

オシャレなお店でセルフサービス。どうして?

数は少ないけれど魅力的なメニューとチャーミングな内装のおかげで、スーブラで食事をしたい人はセルフサービスでやらなくてはいけないことがたくさんあるのを忘れかけるだろう。自分でテーブルを見つける。水のコップを取りに行き、自分で運ぶ。おかわりのワインはカウンターへ取りに行くといったことだ。

従業員であるランナーが注文した料理をテーブルに持ってきてはくれるが、ウェイターはいない。サンフランシスコにあるスーブラの他の2店舗でも同様だ。数ブロック離れたところにある、ローストカリフラワーを出す「RT Rotisserie(RTロティサリー)」や、ミッション地区にある手作りパスタのビストロ「Barzotto(バルゾット)」、カスタムメイドのタイルが目を引くキューバサンドイッチの「Media Noche(メディア・ノチェ)」など、この2年ほどでサンフランシスコに開店した人気レストランでも次々同じようなことが起こっている。

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サンフランシスコのレストラン スーブラでは、客がテーブルを探し、セルフサービスで水を用意する。ウェイターを雇えないレストランオーナーたちは、ウェイターなしでどう経営するかを考えている。(Jason Henry/The New York Times)

スタッフが街に住めなくなったのが理由、みたい

これらのレストランを覗いてみれば、アメリカで最も生活費の高い都市のひとつであるサンフランシスコではあらゆるものの経済が微妙に変化しつつあることがわかるだろう。商業施設の賃貸料は跳ね上がり、労働費用も高くなっている。そして、住宅価格の高騰によって、ここに住めなくなったレストラン従業員たちは、サンフランシスコから去っている

ウェイターを雇えないレストランオーナーたちは、ウェイターなしでどうやって経営を続けるのか試行錯誤している。恐ろしいほど豊かなこの街では、金属のフォーク類を使い陶器の皿でグルメフードを食べられる。ただ、最初にフォークを自分で取りにいかなければならないというわけだ。

そんなスーブラを目指すお店、増えてます

ゴールデンゲート・レストラン協会エグゼクティブディレクターのグウェネス・ボーデン氏はこう語っている。「スーブラは、美しいインテリア、すばらしいワインリスト、おいしくて健康的な料理、シェフや素材重視のどこからみてもフルサービスのレストランです。でも、いまでは『番号札を取ってテーブルで待っていてください』タイプのレストランになってしまいました」

ボーデン氏は、このサービス形態を考えているレストランオーナーたちから相談を受けることが多いという。彼らは、メキシカン料理でのスーブラに、イタリアン料理でのスーブラになりたいのだ(スーブラはサンフランシスコ地区のレストランにとって、ギグエコノミーのスタートアップにおけるUberのような存在になっている)。

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Jason Henry/The New York Times

カジュアルだけどファインがウリに

レストラン経営者は、「Sweetgreen(スイートグリーン)」や「Chipotle Mexican Grill(チポトレ・メキシカン・グリル)」のようなタコス屋やカジュアルなレストランで見られるモデルを、高級レストランへ採用している。ファースト・ファイン・レストランまたはファイン・カジュアル・レストランというところだろうか。または、11ドル(約1,200円)のカクテルや22ドル(約2,400円)のサーモン料理を出す「フルサービス環境」におけるカウンターサービスだろうか。

このようなハイブリッド型のレストランは、生活費の高いほかの都市でも広がりつつある。これは、アナリストがいうところのフレキシブルな外食オプションに対して高まりつつある需要を満たしている。しかし、極めて厳しいサンフランシスコの経済状況のせいで、このパターンは急速に当たり前になっている。

そもそも、どうしてこうなったの?

サンフランシスコのIT富裕層が、レストラン需要を支えてきた。彼らの中にはレストランのパートナーとなった人もおり、レストラン業界への投資も増えている。しかし、彼らのような高級取りこそが限られた住宅の需要を押し上げ、サンフランシスコは低所得者が住みにくい街になってしまった

2014年の10ドル74セントから少しずつ上がってきて、2018年7月1日、サンフランシスコの最低時間給は1時間15ドル(約1,660円)になった。また、サンフランシスコ市では、最低20人の従業員を抱える雇用者は、有給病気休暇や育児休暇に加えて、Affordable Care Act (医療費負担適正化法)で決められた以上の健康保険料を負担しなければならなくなる。

これらの給付にもかかわらず、サンフランシスコは高すぎて住めないとかレストラン業界では働き続けられないと言う人が増えている。また、レストラン側でも、これら給付やほかの理由で従業員を雇用し続けられないと言っている。いまでは皿洗い担当でも1時間に18ドルから19ドル(約2,000円)ぐらいは稼ぐことができる。そして、カリフォルニア州の労働法により、チップで稼ぐウェイターたちも最低でも最低時間給を支払われる。他の州ではそういうことはない(訳注:アメリカでは、チップをもらう職種ではその収入を見込んで法定の最低時間給よりも低い時間給で働いているのが普通)。

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Jason Henry/The New York Times

住宅が値上がりすると、ハンバーガーも値上がりする

カリフォルニア大学バークレー校の経済学者、エンリコ・モレッティ氏は、住宅価格が10パーセント上昇するとレストランを含む地元のサービスは6パーセント上がると見積もっている(サンフランシスコの平均住宅価格は、2012年の2倍になっている)。

だから、住宅も値上がりするにつれ、ハンバーガーも値上がりしているというわけだ。いくら金があるとはいえ、IT業界の人たちがハンバーガーひとつに払う金額はしれている。「誰もがサンフランシスコで暮らせるように給料を払うとしたら、10ドルのハンバーガーは20ドルになってしまう。それはもはや理にかなっていない」と語るのは、高級インディアンレストラン「Dosa(ドーサ)」を2店所有するアンジャン・ミトラ氏。「どこかで妥協しなければならないんだ」

高価なハンバーガーが売れないなら、サービスにしわ寄せがいく

もし客が20ドル(約2,200円)のハンバーガーや、25ドル(約2,800円)のドーサ(インドのパンケーキ)を注文しないとしたら、そして調理スタッフは解雇できないとしたら、その「どこか」というのは、サービス面になる。「だから、そうするしかなかったんです。ウェイターをなくしました」とミトラ氏は言う。

2017年12月、ミトラ氏はオークランドにカウンターサービス形式のドーサを開店した。この新しいレストランではカルダモンやフェヌグリークの入ったカクテルを出しているが、水はセルフサービス。食事客がテーブルを拭いて皿などを片付けるようになっている(客がしない場合には従業員が担当する)。

でもね、もっと早くからシフトできたのでは?

チャールズ・ビリリーズ氏は、2014年にスーブラの1号店を開店するまでずっと高級レストランで働いてきた。2014年の時点で、レストラン経営者たちはサンフランシスコ市の雇用者規則と住宅価格にすでに苦しんでいた。

「対策を取らずに文句ばかり言って泣き寝入りしたり、現状をネガティブに捉えることもできましたけど、視点を変えてチャンスにすることだってできたんです」とビリリーズ氏は述べる。

レストラン経営者にとって、カウンターサービスは高級レストランや、またはそれに近い形式のレストランの収益を上げることができるものだ。経済学者はそれが理にかなっていると考えている。

だって、ノルウェーなら当たり前の話だし

カリフォルニア大学アーバイン校のデイビッド・ニューマーク教授は、最低賃金について研究している。彼は妻とノルウェーへ旅したとき、ふたりが行ったレストランは、ほとんどどこもカウンターサービスだったことを思い出した。

ニューマーク氏いわく、「『これって、あったりまえじゃないか』と思いましたよ。ノルウェーでは当然だと思いました」。ノルウェーは世界でも平均賃金が最も高い国に含まれるので、その点は目新しいことではなかった。「経済史には、限られた人数でどう物事を進めるかという事例があふれています。そうやってわれわれは富を得てきたんですから」

たとえば農業機械や電子レンジ食といったイノベーションによって、人びとにはもっと生産的になれる時間が与えられ、賃金も上がった。しかし、サンフランシスコで起こっていることがすべてそれと同じだとは言えない。なぜならレストランは少ない労働力で食事を提供する方法を開発してはいないから。これまで従業員がやっていた仕事を客にやらせているだけだ。

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スーブラにて並ぶ客たち。スーブラのレイアウトでは客の列が外にも出てしまうが、それは待っている客のスペースを節約できるというマーケティング戦略なのである。 (Jason Henry/The New York Times)

旧来の方法で商売する近くのお店は、というと……

スーブラの1号店から数ブロック離れたところに、モダンフランス料理のレストラン「Jardinière(ジャルディニェール)」がある。シェフのトレーシー・デ・ジャルダン氏は、税金や健康保険料などを含めた労働費用は予算の43パーセントも占めていると語る。

1977年の開店時にはその割合は27パーセントだったそうだ(ビリリーズ氏によると、スーブラでは有給休暇や年金を含めても20パーセント代の中ほどだそうだ)。デ・ジャルダン氏は値段を上げてみたりして試してみたが、客のほうでは2杯目のワインをやめたりアントレの代わりにアペタイザーを2つ頼むというような別の方法で、同じ金額を使うだけだった。

サンフランシスコにある彼女の別のレストランの1店では、ランチをカウンターサービスにしている。「この仕事が好きですし、この街のコミュニティの人たちを支援したいと思っています。でも、経済状況はひどいですね」と彼女は言う。

ニューヨークでもスーブラ方式は通用するだろうか?

いっぽう、スーブラはサンフランシスコから市場拡大してニューヨークへ進出する予定だ。ビリリーズ氏は、「ニューヨークのニューヨークらしい地区の、ニョーヨークらしい通りに」開店したいと言っている。

つまり、サンフランシスコと同様にひどい経済状況の場所に進出するという戦略なのだ。

© 2018 New York Times News Service[San Francisco Restaurants Can’t Afford Waiters. So They’re Putting Diners to Work/Emily Badger](翻訳:ぬえよしこ)

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