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大統領になって! オプラ・ウィンフリーが熱望される理由

The New York Times

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(Harpo Inc. via The New York Times)

オプラ・ウィンフリーほど、驚きと称賛で両手を上げたキャリアを送ったアメリカ人はいないだろう。もしかしたら、負けてばかりか勝ってばかりのチームの熱狂的ファンは彼女に匹敵する人もいるかもしれないが。

25年間、週5日、1年のうち9か月、昼間のトークショー『オプラ・ウィンフリー・ショー』の司会を務めてきたなかで、メイクオーバーや視聴者へのプレゼント、セレブのサプライズ登場のたびにオプラの両手は振り上げられた。番組が終わりに近づいた2011年、オプラが振り向いたらスティービー・ワンダーがピアノの前に座り、舞台から登場したときも。もっともそのときは片手だったが、手をつき上げた勢いは両手分はあった。オプラの反応たるや(バスケットボールで終了直前に放たれたシュートの)「ブザービーター」でもあり、「ミスコン勝利者」のポーズでもあった。

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2018年6月13日撮影。スミソニアンの国立アフリカン・アメリカン歴史文化博物館で開催中の「Watching Oprah: The Oprah Winfrey Show and American Culture」の展示物。この大規模で興味深い展示のテーマは、オプラ本人と放送時間が何千時間にも及ぶトークショーであり、番組がどんなもので、何を可能にして、どんな意義があったのかがわかる。 (Justin T. Gellerson/The New York Times)

現在スミソニアン国立アフリカン・アメリカン歴史文化博物館では、オプラ本人と、何千時間にも及ぶトークショーの放送をテーマにした展示が開かれている。この展示では、この番組の概要や意義を知ることができる。豪華で興奮満載の一大番組に成長した最後の数年間の放送にフォーカスした短いモンタージュ映像のなかには、前述のスティービー・ワンダーのシーンも含まれている。

番組終了後も進化し続けるオプラ

この「Watching Oprah: The Oprah Winfrey Show and American Culture」展は、アメリカ有数の博物館や教育研究機関を運営するスミソニアンならではのものだ。伝記、人類学、社会学、郷愁、歴史、そして文化や人種、性別、テック、メディア、教育、消費社会、経済、ビューティ、ファッション、法律などに及ぶ奥深い洞察が含まれている。

知的好奇心をそそり、温かく、目からウロコが落ち、(鑑賞して回って)足が痛くなるジオラマ満載のパワフルな展示になっている。来訪者は、多くの人びとに意義があるテーマを取り上げようというオプラの類い稀な決断力と、まだそうであり続ける彼女の姿勢に驚きを感じて博物館を後にすることだろう。

先に述べたスティービー・ワンダーの映像は、わずか15秒であるものの、観る者に強烈な印象を与える。第一の理由として、大好きなスターがサプライズ登場して狂喜するという、女性ファンとして当然の反応が、親近感を誘うのだ。この女性が有名なTV司会者で、ワンダーを舞台下から登場させることなんて、おそらく朝飯前だろうということを差し置いても。

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(Harpo Inc. via The New York Times)

また、第二の理由として観客の女性たち(アフリカ系も白人もいる何千人という観客は女性ばかりで、男性はひとりも見つからなかった)が立ち上がって跳びはね、叫び、「宝くじ当選」ポーズから「キリスト賛美」ポーズまで、さまざまな形でオプラのように両手を上げているという点がある。観客もワンダーの登場に狂喜しているのだ。

しかし、観客はサプライズに喜ぶオプラを見ることで、さらに熱狂したのかもしれない。カルトなどではなく、有機的で共生的なつながりが、オプラと観客のあいだにはある。肯定や意図は「オプラ・ウィンフリー」ビジネスの基盤となった。オプラが「いいね!」ボタンを押せば、莫大な数の支持者も一斉に同じことをした

『オプラ・ウィンフリー・ショー』が終了して7年になるが、彼女はいまだに皆から惜しまれている。この展示の1年以上前には、シカゴのWBEZ局が『Making Oprah』というポッドキャストを公開した。ファンとしての評価と批評家としての鑑定眼を持ちつつ、ジャーナリストのジェン・ホワイトが番組のオイシイ裏話を提供した。番組は終わったけれど、オプラはまだ表舞台に立っている。それどころか、彼女は才能豊かな映画女優へと進化さえした。本も執筆し、インスタグラムでも大活躍。自分のケーブル局とウェルネスのポッドキャストも経営している。5月のハリー王子とメーガン・マークルの結婚式でもめいっぱい楽しんでいた。

アメリカにとってオプラとは

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(Metropolitan Government Archives of Nashville via The New York Times)

それにしても、もしアメリカがオプラ・ウィンフリー本人を惜しむことができないとしても、オプラという人のイメージを惜しんでいるということはあるかもしれない。『オプラ・ウィンフリー・ショー』のオプラとしては、博愛家で尊敬、寛大と喜びのシンボル。ほとんど攻撃的ともいえる限りない気前のよさを持った人として、心からの感謝の気持ちを他人に起こさせる人としてのオプラ。

現在、この国に起こっている究極の混沌のせいで、わたしたちは「オプラ・ウィンフリー」の道徳的なリーダーシップを切望するようになっている。学校での襲撃事件、丸腰のアフリカ系アメリカ人が警察に撃たれる事件、女性を虐待しつづける男性たち、移民の親の元から子どもを引き離す政府。どんなことでもいい、誰かが国レベルの対話を請うとき、その声を訳すと「オプラはいったいどこにいるの?」ということになる。

オプラを2020年大統領選に!

番組で使用されたアルファベットのO(オー)のロゴをかたどった(バットマン出動を要請するときのような)サーチライトのシグナルは、この6年ほどで何度も光った。そして1月、オプラがそれに応答してくれたと誰もが思った瞬間があった。ゴールデングローブ授賞式で、彼女がセシル・B・デミル功労賞を受賞しスピーチしたときの、嵐のような歓声をそう解釈することもできる。

オプラを大統領に!」。雄弁のその瞬間には感電したかのようにピリピリと興奮が走った。オプラは、レーシー・テイラーの話をして、その夜の男女機会均等の議論を支持した。レーシーは1944年、白人男性たちから何度もレイプされたアラバマのアフリカ系女性だ。オプラはニュースメディアを称えることで、アメリカの現状のお粗末さを非難した。彼女の重みのあるスピーチは、政党大会であったなら会場を狂喜の渦に巻き込んだことだろう。スピーチはスピーチだけではすまなかった。オプラに2020年大統領選に出馬してもらおうと人びとは必死になったように見えた。

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画像提供ハーポ社。当時上院議員だったバラク・オバマ(イリノイ州代表、民主党)をインタビューするオプラ。(Harpo Inc. via The New York Times)

「デイタイム(トークショー)の女王」が一種の職種だとしたら、それはオプラがけっして悪用することのなかったものだ。彼女は人びとを愛しているし、他人から向けられる自分への愛の強さも理解している。でも人は権力を望むものだし、ゴールデングローブ授賞式でのオプラの影響力は、(おそらくオプラがリツィートしたNYポスト紙のコラムのように)彼女が政治界へ進出するのかという大混乱を引き起こした。オプラ大統領は、罵詈雑言で気まぐれ大統領への解毒剤として夢想された。幅広いエンジェル投資家のネットワークを持つこの女性が、手強い「ツイッター荒らし」を退治する。メディア操作の天才がもうひとりの天才と互角にやりあうというシナリオだ。

しかし、スミソニアンの展示を見ると、オプラがわたしたちに期待するのは、それよりももっとすばらしいファンタジーなのではないかと思う。現在の政治的状況において、大統領選に出馬する候補者が公約することが何であれ、オプラはそれにはもったいなさすぎるということが、展示を見ればわかるだろう。

アフリカ系として人種問題に取り組む

ほかにもまだ多くのことがある。展示場を後にするとき、来訪者はオプラの成功はアメリカを暴露しているという矛盾に戸惑うはずだ。人種分離された南部の貧困の中で育ったオプラは、ビリオネアになった最初のアフリカ系アメリカ人女性で、その成功は他の人たちの成功へのインスピレーションとなった。

しかし、この展示はスミソニアンの倫理的で学術的な目玉展示と近い距離で開催されている。その「A People’s Journey」という展示は、アメリカという国が、奴隷制度、人種差別、革命、イノベーション、勤労、そして幸運という圧倒的な遍歴をたどり成立したことを語っている。オプラはどうやって自分が成功を収めたのか気づいていないようだ。多くのアメリカ人の成功者と同様に、自分の成功が信じきれないときもあるように見える。

ミルウォーキー、ミシシッピー、テネシーで育ち、働き始め、ボルチモアとシカゴで放送業界に身を置くようになったオプラ。番組の人種差別撤廃主義を訴える哲学はその経歴から生まれたのだろうか。地理的にもオプラは(人種を超えて)連結的だと言える。番組が1987年に、アフリカ系住民をほとんど排除したジョージア州フォーサイス群郡への旅を実行したことにも説明がつく。オプラは、なぜアフリカ系住民が白人住民をそれほど怖がっているのか知りたがった。そして、視聴者の中にいる人種差別者たちに、問いかけている女性自身もアフリカ系であることを忘れさせないようにし続けなければならなかった。

オプラは究極のファシリテーター

仕事がすごくできることの問題点は、辞めさせてもらえないことだ。しかし、この展示にある番組のモンタージュ映像をしっかり見れば、ふたつのことに気づくだろう。1つ目は、この展示には、クリップやセグメントやエピソード映像などでもっとオプラ本人が登場する必要があるということ。2つ目は、オプラはこの仕事を単独でやり遂げたのではないということ。オプラは視聴者が番組作りに参加するようにした。彼女は討論の場だった。彼女はFacebookだった。大統領職は放っておいていい。オプラこそが「facilitator in chief(合衆国最高ファシリテーター)」だったのだから。

オプラがわたしたちに意見を言う力をもっと与えてくれるにつれ、オプラのほうでも、自分の感情アルゴリズムを使って、他人が向上するための本や感情やツールをどう提供できるのかをもっと理解するようになった。そして、オプラはこの国をより良く理解するための真のリスクも負ったのだった。

イベント詳細:

展示名:「Watching Oprah: The Oprah Winfrey Show and American Culture」
期間:2019年6月まで開催中
会場:スミソニアン国立アフリカ歴史・文化博物館
(the National Mall, Washington; 844-750-3012)
公式サイト

© 2018 New York Times News Service[Oprah Earned This Museum Show. And It’s a Potent Spectacle/執筆:Wesley Morris](翻訳:ぬえよしこ)

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