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体は女、心は男。誰にも言えなかった人気者の苦悩/芸人・万次郎さん(前編)

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「体は女、心は男、万次郎です!」

トランスジェンダーであることを明かして活動するお笑い芸人がいる。万次郎さん(41)。女性の身体で生まれ、現在は男性として生きるFtM(Female to Male)だ。

「男子便所に入ったら怒られる」「女子便所に入っても怒られる」「妹に無理やりお兄ちゃんと呼ばせる」……自らのセクシュアリティを「トランスジェンダーあるある」などのネタにして笑いを取る。戸籍も身体も生まれた時から変えていないが、パートナーの女性と、今年成人を迎える息子と3人で大阪に暮らし、男性の名前で生活する。

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ライブ中の一コマ

コンソメをこっそり股間にふりかけた

1976年、オホーツク海沿岸の北海道・枝幸町で生まれ、中学卒業までを過ごした。日本一の毛ガニ水揚げ量を誇る、人口8000人ほどの港町だ。

物心ついたときから「大きくなれば自然とおちんちんが生えてくる」と思っていた。男友達と肩を並べて少年野球や柔道に打ち込み、いつかは自分もメンバーに、とジャニーズに憧れた。

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1〜2歳ごろ。ナポリタンを食べているところ

だが肝心の「おちんちん」が、小学校高学年になっても生えてこない。

股間の皮膚を伸ばしてみたり、『魔法の粉よ』と母親が料理に使っていたコンソメをこっそり股間にふりかけたり、色々試してみたんですけどね」

中学に入学すると、スポーツや授業で男女ごとに振り分けられる機会が増えた。中学1年で初潮を迎えると、「もうダメだ。女の道で生きるしかないのか」と絶望する。当時はLGBTという言葉もすぐに情報を得られるインターネットもなく、同じような人間も周囲にいない。問題があればすぐに詮索されるような閉鎖的な田舎町では、「本当の自分」を知られれば孤立すると本能的に感じていた。

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小学校時代、放課後にいつも遊ぶメンバーと

「死にたい」とギターをかき鳴らす

親にも友達にも悩みを相談できなかった中学前半を「地獄の日々だった」と振り返る。学校では周囲を笑わせ、お調子者を演じていたが、自殺願望がずっと消えなかった。男友達といれば「男子ばかりと仲良くして」と女子のグループから疎まれ、「好きになった女の子が、僕と仲の良い男友達に思いを寄せて、嫉妬の目を向けられたこともありました」

死にたくてどうしようもなく、ギターに感電して夭折した詩人の山田かまちを真似て、親のエレキギターをかき鳴らしたこともある。だが北の町では、感電しようにもろくに汗もかかない。ふと、「こんなに一生懸命エネルギーを使って死のうとしているなんてアホだな」と思えた。自分の中で、スイッチが切り替わった瞬間だった。

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高校2年次、柔道で全国大会出場を決めベスト12入り

女に生まれたのなら、もう女として生きるしかないじゃないか。そこから、どこか他人事のように生きるようになったんです」。中2の夏だった。

手当たり次第に男子と交際

地元を離れて旭川の高校に進むと、寮に入り柔道にのめり込む。全国大会に出場するほどの「柔道少女」は男子からも女子からも「とにかくモテた」。「男と付き合ったら女になれるだろう」と、手当たり次第に男子生徒と交際し、気持ちが高まらないのを相手のせいにして、別れて次へ、を繰り返す。

好きな女子生徒を目で追っては「やっぱり女にはなれねぇな」と思い、その思いにふたをするように、勉強や部活に打ち込んだ。「人気者になって女の子からもキャーキャー言われることで、自己肯定感を保ってたんでしょうね」

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男子生徒からも女子生徒からも、他校の生徒からも「モテモテだった」高校時代

高3の春、最後の国体予選での敗退を機に、柔道をきっぱりと辞めた。性の対象である女性を相手に戦わなければいけないことに限界も感じていた。

元来、人を笑わせることや表現することが好き。それならば芸人を目指そうと思い立つ。吉本興業の養成所に入るため「笑いの本場」大阪へ向かった。(続く)

※次回、芸人を目指し、大阪へ向かった万次郎を待っていたのは?後編はこちら

8月26日、トークライブ「朝までセクシャルマイノリティー」開催!

万次郎が主催するトークイベント「朝までセクシャルマイノリティー~テレビがやらねぇからオレがやる~」。全国から駆けつけるセクシュアル・マイノリティ11人をゲストに迎え、恋愛やセックス、人生について、とことん語り尽くします。万次郎の新ネタも披露。当日は、YouTubeで生配信も(視聴はこちらから)。

8月26日(日)22:30〜翌5:00 @アワーズルーム(大阪・肥後橋)
問い合わせ・お申し込み/ 06-6940-7469(アワーズルーム
告知動画はこちら

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万次郎(まんじろう)
本名・高木憲子。N-weed所属。1993年、吉本総合芸能学院大阪校入所。2013年と2016年「SHOW-1グランプリ」優勝。2016年「ヒューマンライツ・フェスタ東京」登壇。2018年、NHK総合「テンゴちゃん」出演。現在、NHK Eテレ「バリバラ」のほか、関西演芸協会の寄席や自主ライブなどで活躍。特技は柔道と立ちション。座右の銘は「世界に、不要のものなし」。twitter:@manjiro_vs


写真/万次郎さん提供、取材・文/中村茉莉花(Cafeglobe編集部)

*後編はこちら

お笑い界に革命を起こす異端児でありたい/芸人・万次郎さん(後編)

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