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もう地味なんて言わせない。再び光り始めたポルトガル

The New York Times

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2018年5月24日、ポルトガルのポルトにて。(Rodrigo Cardoso/The New York Times)

金融危機がヨーロッパを襲ったとき、ラモン・リベラ氏は、ポルトガル南部のアルガルべ地区でオリーブオイル事業を始めたばかりだった。不況に賃金はカットされ、失業率は2倍になった。政府は、屈辱の国際援助を受け入れなければならなかった。

不況なのに、大胆に投資したポルトガル

厳しくなるいっぽうの状況で、ポルトガルは大胆な賭けにでた。2015年、ヨーロッパの債権者らが課した厳格な緊縮経済対策を拒否し、経済成長への軌道に火をつけた。削減される一方だった賃金や年金や生活保護を増やし、ビジネスへの刺激策をとった。

この政府の方向転換と支出を増やす意欲によって、莫大な効果がもたらされた。債権者側はその動きに反対したが、何年間にもわたる緊縮財政のために国に蔓延していた暗さが次第になくなってきた。ビジネスは自信を取り戻しつつあった。リベラ氏のオリーブ畑も含めて、生産や輸出が増加してきたのだ。

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2018年5月25日、エレイア社のジェネラル・マネージャーのラモン・リベラ氏。同社はポルトガル、フェレイラ・ド・アレンテジョ近郊でオリープオイル事業に莫大な投資をした。(Rodrigo Cardoso/The New York Times)

ポルトガルは世界一の投資場所!

「ポルトガルがこの危機から抜け出せると信じていました」と、エライア社のジェネラルマネージャーであるリベラ氏は言う。同社は収穫テクノロジーに重点を置き、同国でも指折りのオリーブオイル生産者となった。「世界最高の投資場所だと思っていました」

ヨーロッッパでは不確実性が高まるなか、ポルトガルは、金融危機への対策は緊縮財政だと主張する批判者たちに背を向けた。ギリシャからアイルランドまで、そしてポルトガルさえも一時はその対策に足並みを揃えていたが、ポルトガル政府は抵抗することを選んだ。その結果、2017年にはこの10年で最高のレベルまで経済成長が伸びたのだった。

工場跡にスタートアップも

経済回復は国のあらゆるところで見られる。ホテル、レストラン、ショップはつぎつぎオープンしており、観光旅行の増加がそれを後押しして、失業率は半減した。リスボンのベアト地区では、廃墟だった軍工場の瓦礫のなかからスタートアップ企業の一大キャンパスが生まれている。ボッシュ、グーグル、メルセデス・ベンツがオフィスやデジタルリサーチセンターをオープン、まとめて何千人も雇用されている。

航空宇宙産業や建築分野などへの海外からの投資は史上最高になっている。そして、テキスタイルや紙製造業などポルトガルの伝統的な業界もイノベーションへ投資しており、輸出のブームを後押ししている。

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ポルトガル、リスボンのコメルシオ広場 (Rodrigo Cardoso/The New York Times)

コスタ首相が、がんばった!

アントニオ・コスタ首相は、「わが国で起こったことから、切り詰めすぎると不景気になり悪循環を生むのがわかります」とあるインタビューで語っている。「より高い成長、より良い多くの雇用に焦点をあてて、緊縮財政策への代案を考えたのです」

2015年の終わりに有権者は左寄りのリーダーであるコスタを首相に選んだ。彼は有権者の収入減を転換させると公約した。780億ユーロ(900億ドル、10兆円)の国際援助の条件として、ポルトガルの赤字減のために前政権が承認したのが収入減だった。コスタ首相は、1974年ポルトガルの独占政権が終わって以来、権力の座から締め出されていた共和党と極左政党と同盟を結んだ。この同盟は、ユーロ圏の規則に合うように会計収支をにらみつつ緊縮財政を食い止めるという共通のゴールで結ばれた。

なんと。賃金も金融危機以前のレベルに戻ったよ

ドイツや国際通貨基金といった債権者の反対にもかかわらず、政府は、公共部門の給料や最低賃金、年金、有給休暇の日数も国際援助前のレベルに戻すことができた。ビジネスへの刺激策には、開発補助金、税額控除、そして中小企業への資金援助などがあった。

コスタ首相は、インフラストラクチャーや他の支出をカットすることで、これらの還元を可能にした。就任時には国内総生産の4.4パーセントだった年予算の赤字を1パーセントにまでに少しずつ減らしていった。政府はまた2020年までに黒字を達成する軌道にのっており、もともとの予定よりも1年早められている。これによって25年来の赤字に終止符を打とうとしている。

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アントニオ・コスタ首相 (Rodrigo Cardoso/The New York Times)

ヨーロッパでもだんだん地位が向上してます

ヨーロッパの官公庁は、財政危機に対してポルトガルが良い解決策を見つけたのかもしれないといまでは認めつつある。最近、ポルトガルの回復に貢献したマリオ・センテノ財務相が、ユーロ圏の財政担当大臣の集まりで影響力を持つユーログループの会長に起用された。ポルトガル政府が報いられたのだ。

この180度方向転換は、ポルトガルの集団的心理に目をみはる効果をもたらしている。10年来の緊縮財政で落胆しているギリシャと比べ、ポルトガルは自信の回復に焦点を当て、人々やビジネスにふたたび意欲が戻ってきたのだ。

カトリカ・リスボン・スクール・オブ・ビジネス・アンド・エコノミックスの教授、ジョアン・ボルジェス・ジェ・アスンサオ氏は、「経済刺激策に費やした支出はわずかだったんです。でも、国の心の持ちようはまったく変わりました。経済的な視点からも、政策の変化よりもこちらのほうがずっとインパクトがありましたね」と語る。

まだ手放しでは喜べないけれど……

とはいえ、ポルトガルの成功には、まだ不安材料もある。

コスタ首相は赤字削減のために公共投資をこの40年で最低に抑えており、2017年の2.7パーセントから成長率は横ばいである。公共部門の給料は以前のレベルに戻ったものの、経済危機以前と比べるとほとんど変化はない。低賃金のパート契約雇用の拡大によって、社会的な不安もまだ残っている状況だ。また、1か月580ユーロ(76,000円)いう最低賃金も、上がってはいるもののまだユーロ圏では最低のほうである。

現在、ポルトガルの組合は給与アップと格差をなくすために公共支出を増やすよう、ストライキをすると政府に圧力をかけている。

ポルトガルにはまだユーロ圏でも最大レベルの巨額赤字がある。コスタ首相は、その最大の脅威を相殺するために赤字をカットし続けなければならないと言っている。ポルトガルの銀行は過去の金融危機からの不良債権を背負っており、イタリアが抱える諸問題が引き起こすかもしれない経済市場の混乱に対して安定しているとは言えない。

「すべてが順調なわけではありません。やらなければならないことはまだたくさんあります」とはコスタ首相の言葉だ。

「でもこの対策を取り始めたとき、目標達成は無理だと多くの人から言われました。違う選択肢があるんだということをわれわれは示すことができたと思います」

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ポルトガル、ポルトの店頭 (Rodrigo Cardoso/The New York Times)

失業者の職業訓練にも力を入れています

成長周期を固めるために、政府は外国企業のための税制優遇措置や失業者の訓練など、ターゲットを絞った対策に集中して投資している。

リスボンの東へ1時間半ほどいったエヴォラの、コルクの林があるなだらかな平野にそびえ立っているのは、フランスの航空部品メーカー、メカクローム社の広さ5エーカーの工場だ。2016年、政府の刺激策と欧州連合の貸付金に誘われて、同社は3000万ユーロ(約40億円)を航空宇宙産業パークに投資した。ブルドーザーが空き地を耕して、道路やビジネスがつぎつぎに建てられた。

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ポルトガル、エヴォラのメカクローム航空宇宙工場。(Rodrigo Cardoso/The New York Times)

熱狂的なエネルギーを感じて

エアバスやボーイングを始め他の航空業界の大企業へ向けた精密部品をロボットが製造している。150名ほどの技術者の大部分はこの地区の職業安定所を通して雇われた。その職業安定所は、政府と協力して徹底的な再雇用訓練を始めていた。

クリスチアン・サントス氏は、メカクローム社のポルトガルのディレクターだ。彼によると同社は追加で150名を雇用し、これからの3年間で何百万ユーロという追加投資をするそうである。

「ポルトガルではいろいろなことが起こっています。ここには熱狂的なエネルギーがあります」とサントス氏は語っている。

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ポルトガル、エヴォラにて、メカクローム社のジェネラル・マネージャーのクリスチアン・サントス氏。同社3000万ユーロをエヴォラに投資している。(Rodrigo Cardoso/The New York Times)

© 2018 New York Times News Service[Portugal Dared to Cast Aside Austerity. It’s Having a Major Revival/執筆:Liz Alderman](翻訳:ぬえよしこ)

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