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巨星ジョエル・ロブションが手かげたフレンチ大革命

The New York Times

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米ニューヨーク・マンハッタンの「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」でのジョエル・ロブション氏。2017年10月23日撮影。(Sasha Maslov/The New York Times)

生涯にわたって新機軸を打ち出し、高級レストランブック『ミシュランガイド』で史上最多の星を獲得したフランス人シェフ、ジョエル・ロブション氏が8月6日、スイス・ジュネーブで亡くなった。73歳だった。

印象に強く残る味わいと精緻な技が際立つ独自のスタイルで、フランスの古典的な高級料理“オートキュイジーヌ”を一新した。晩年は彼が「アトリエ」と呼んだ小さなレストランを展開する事業に力を注いだ。

オープンわずか3年で最初の3つ星

ロブション氏は1981年、パリに開店した最初のレストラン「ジャマン」でフランス料理界を驚嘆させた。オープンしてから3年という最短期間で、ミシュランの格付けで最高の3つ星を獲得したからだった。

伝統的な調理技術を習得しながらも“ヌーベルキュイジーヌ(新しい料理)”に深く影響を受けたロブション氏は、古典的なフランス料理の技法に遊び心で接し、その素晴らしい味わいと美しい盛り付けで人々を陶酔させるメニューの数々を生み出した。

単なる「マッシュポテト」が……?

しかし、それらの料理は時に、拍子抜けするほどシンプルでもあった。たとえば手軽にできる伝統料理の一つ「じゃがいものピュレ」。彼のレシピの材料は、じゃがいも、バター、牛乳、塩の4つだけだ。しかし、茹でたじゃがいもの水分を飛ばし、冷やしたバターと温めた牛乳を少しずつ入れていき……と手間をかけるロブション氏の技によって、単なるピュレを越えた一品に仕上がる。

この技が、さらに複雑な「キャビア 甲殻類のジュレになめらかなカリフラワーのクレーム」、「ラングスティーヌ ラビオリ仕立て 野菜とフォワグラのブロス トリュフ添え」といった一皿を支えた。

「20世紀最高のフランス料理人」へ

「カリフラワーからマテガイ、フォワグラ、キャビアまで、すべての素材の偉大さを形作り、融合し、風味を引き出し、抽出するのが、ロブションだ」。1994年に料理評論家のパトリシア・ウェルズが、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙の選ぶパリのレストラン・トップ10に、開店したばかりの「ジョエル・ロブション」を挙げたときの言葉だ。彼女はさらにこう書いている。「ロブションは一つの皿を、それが夢見たことさえないような高みに至らせる」

数多くのロブション氏のレストランは合わせて、ついにミシュランの星30個を獲得するに至った。他のシェフが誰も真似のできない偉業だ。1990年には、もう一つの著名レストランガイド『ゴ・エ・ミヨ』で、ポール・ボキューズ氏、フレディ・ジラルデ氏、エッカート・ヴィツヒマン氏と並んで「20世紀における最高のフランス料理人」に挙げられた。

「シェフの時代の完成を人間にしたのが彼だ」。もう1人の三つ星シェフ、ピエール・ガニェール氏は、2002年のニューヨーク・タイムズ紙にこう語った。その後まもなく、一時引退していたロブション氏は、人生の新しい章をスタートさせた。「アトリエ」と名付けた、よりカジュアルなレストラン・チェーンを、ニューヨークから上海まで世界展開した。

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米ニューヨーク・マンハッタンの「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」の店内。2018年2月16日撮影。(Daniel Krieger/The New York Times)

神学校で目覚めた料理の道

ジョエル・ロブション氏は1945年4月7日、フランス西部のポワティエで、石工の父親アンリと、家政婦だった母親ジュリエンヌ・ロブションの間に生まれた。12歳のときに神父を目指して神学校に入学するが、修道女たちが食事の用意をするのを手伝っている間に天職を見出し、15歳のときにホテル「ルレ・ド・ポワティエ」の見習いとなる。

20代初めに参加したプログラムでフランス全土を旅し、地方料理を学ぶとともに伝統的な調理法をマスター。同時期、ヌーベルキュイジーヌとして進化しつつあった新しいフランス料理のあり方、中でも新鮮さと素材の一体感を重視する風潮が彼に深い印象を与えた。

「マッシュルームをできる限り、マッシュルームらしく」

1991年のロブション氏の料理本『シンプリー・フレンチ』を共著したパトリシア・ウェルズ氏は回想する。「彼が好きな言葉の一つはこうだった。『私たちの仕事は、マッシュルームの味をニンジンのように仕立てることではない。マッシュルームの味をできる限り、マッシュルームらしく仕上げることだ』」。

フランス各地のレストランで働いた後の1974年、30歳を待たずしてロブション氏は「コンコルド・ラファイエットホテル」(現ハイアット・リージェンシー・パリ・エトワール)の総料理長に就任。配下のシェフは総勢90人、一度に3000人分の料理を作ることもあるキッチンだった。2年後、彼は熾烈な競争を勝ち抜いたシェフに与えられるフランスの国家最優秀職人章(MOF)の称号を授与された。

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米ラスベガスのMGMグランドカジノホテルでのジョエル・ロブション氏。2005年8月27日撮影。(Jim Wilson/The New York Times)

それからは「ホテル・ニッコー・ド・パリ」総料理長として、ミシュランの2つ星を獲得。冒頭の「ジャマン」オープンとともにフランス料理界の最前線に躍り出た。1994年にパリのレーモン・ポワンカレ通りに移転して開店した「ジョエル・ロブション」によって、彼はさらに高みへと上り詰めていった。

「食べ物とはシンプルなほど格別」

「年齢を重ねれば重ねるほど、真実への気付きが深くなる。つまり、食べ物とはシンプルなほど、いっそう格別なものになり得る」。2014年、ロブション氏がビジネス・インサイダー誌に語った言葉だ。「私は一皿の中に3種類以上の風味を盛り込もうとは決してしない。キッチンの中に足を踏み入れて、一目で分かる料理が好きで、そこに使われている素材が何か、簡単に分かる料理が好きだ」

しかし、ロブション氏はその名声が頂点に達したさなかに突然、現役を引退した。仕事のプレッシャーに押しつぶされ、50代で早世した偉大な2人のシェフ、アラン・シャペル氏、ジャン・トロワグロ氏の影が頭をよぎったのだと言った。その後、転身して出演したテレビの料理番組は、長いもので9年続く長寿番組となった。

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米ニューヨークのフォーシズンズホテル内の「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」で。2007年3月15日撮影。(Tony Cenicola/The New York Times)

復活の小レストラン「ラトリエ」、ヒントはバルと寿司店

コンサルティングを務めたり、世界を旅して回った時期をへて、ロブション氏は新しいコンセプトを思いついた。影響を与えたのは、小皿料理のタパスを提供するスペインのバルと、カウンターで食事をする日本の寿司店だった。2006年の料理本「ジョエル・ロブションのラトリエ」の中で、そのアイデアについてこう書いている。「15~20席くらいの小さなスペース。1人か2人で調理をしていて、シェフが毎日、市場で見つける素材で作る、のびのびとした健康的な料理」。

このコンセプトに基づいて「アトリエ」の意味を込めた「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」がパリにオープンしたのは、2003年。その後、彼のアトリエは世界各地に広がっていった。

日本酒「獺祭」とのプロジェクトも

また今年春には日本酒「獺祭」(だっさい)の蔵元である旭酒造の会長、桜井博志氏とのコラボレーションでパリにレストランとティーサロン、日本酒バーがそろった「ダッサイ・ジョエル・ロブション」をオープンしたばかりだった。

ロブション氏と1966年に結婚したジャニーヌ・パリクスさんの間には2人の子どもがおり、娘のソフィーさんは仏ドルドーニュでレストランを営業、息子のルイさんは最近、日本でワインバーを開業した。

© 2018 The New York Times News Service[原文:Joël Robuchon, 73, French Chef Who Revolutionized Haute Cuisine/執筆:William Grimes](抄訳:Tomoko.A)

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